ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和4年5月30日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野修一
1 案件名
1-1 供与国名
エチオピア連邦民主共和国(以下「エチオピア」という。)
1-2 案件名
オロミア州における小都市給水施設整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、オロミア州2県の6小都市において、管路系給水施設(深井戸、導水管、配水池、配水管等)を整備することにより、安全な水へのアクセス向上を図り、対象地域での水因性疾患の減少、及び水汲み労働の軽減等の生活基盤改善に寄与するもの。
供与限度額は26.15億円
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)におけるカテゴリはBであり、上水道及び下水・排水処理セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への影響は重大でないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)エチオピア(一人あたり国民総所得(GNI)890ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- (2)エチオピアの安全な水へのアクセス率は76.3%(WHO/UNICEF、2020年)であり、サブサハラアフリカ諸国平均の77.5%(WHO/UNICEF、2020年)と比較して低く、気候変動の影響による干ばつの深刻化が懸念されている。
- (3)こうした中、同国政府では、2021年に策定された10ヶ年国家開発計画(2021-2030)において、2030年までに都市部、村落部の水へのアクセス率を100%に改善することを目標とし、その達成に向けて、水量の年間変動が少なく、水質が比較的良好な地下水の開発が重要と位置付けている。
- (4)同国では、安全な水の安定供給がなされていないため、水因性疾患の患者が多く発生しており、下痢は5歳未満児死亡率の8%を占めている(UNICEF、2017年)。また、水汲み労働者の63%が15歳以上の女性(WHO、UNICEF、2017年)であり、女性が多くの時間を水汲みに費やさざるを得ない状況となっている。
- (5)さらに、オロミア州における安全な飲料水源へのアクセス率は66.1%(World Bank、UNICEF、WHO、2017年)と低く、特にアディスアベバ近郊の小都市では、人口増加に伴い給水需要が高まる一方、給水施設の建設が需要に追い付いていないことが課題となっている。
- (6)我が国の対エチオピア国別開発協力方針においては、経済成長の下支えとなる「インフラ開発」を重点目標の一つに掲げており、安全な水へのアクセスの改善を図る本計画は同方針に合致するものである。また、本計画は、持続可能な開発目標(SDGs)ゴール3(保健)、6(水・衛生)、13(気候変動)にも寄与することが期待され、この観点からも実施の必要性は高い。
- (7)我が国とエチオピアは古くからハイレベルの交流がある友好国であり、AU本部が所在するエチオピアは「アフリカ政治の首都」とも称されるアフリカ外交の中心地である。2021年には我が国企業による通信分野の大型投資案件も成立しており、本年8月に開催されるTICAD8を契機に、今後一層の経済分野での協力も期待される。
本計画の実施は、安全な水の供給を通じて二国間関係の強化に貢献することから、我が国外交政策上も意義が高い。
2-2 効率性
JICAは開発計画調査型技術協力「アワシュ川中流域地下水開発計画プロジェクト」(2013年~2015年)を実施し、オロミア州の小都市を対象とした概略給水計画の策定と優先度の高い小都市の選定を行った。この選定は、水因窮度、裨益効果、他ドナーとの重複などに基づいている。対象地では、所在する14の学校で水道サービスの提供が欠如しているが、本事業の実施によって、これらの学校を含めた公共施設で必要かつ安全な水を確保することが可能となる。優先度の高い地域に支援の重点を置くことで、効率化を図るものである。
また、先行の技術協力プロジェクト「水技術機構(EWTI)研修運営管理能力強化プロジェクト」(2017年~2021年)では、水技術者の育成機関であるEWTIに対して、研修の運営能力強化を支援してきた。本事業のソフトコンポーネントでは、このEWTIの研修コースを活用し、水道公社職員を対象とした研修の実施を通じて、水道公社の運転・保守、修理能力の向上を図る予定であり、先行案件との相乗効果も期待される。
2-3 有効性
本計画の実施により、2022年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。
- (1)新規管路系給水施設により給水を受けることができる人口が、14,800人から約47,300人に増加する。
- (2)1人1日当たり使用できる水量が、7.4リットルから40リットルに増加する。
- (3)水汲み労働の負担軽減、水因性疾患の減少、学校や保健施設における安全な水の確保、下痢症発症の減少による栄養改善に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)エチオピア政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)