ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年3月31日
評価年月日:令和4年2月7日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里
1 案件名
1-1 供与国名
ニカラグア共和国(以下「ニカラグア」という。)
1-2 案件名
マナグア市における上水道改善計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、ニカラグアの首都マナグア市において、上水道設備の漏水対策及び送配水効率の向上に必要な資機材等を整備することにより、水の供給の安定化を図り、もって同市の生活・衛生環境の改善を通じたニカラグアの経済開発の促進に向けた基盤づくりに寄与するもの。
供与限度額は14.15億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
- (2)前提条件として、ニカラグア政府負担事項である、組み立て式配水池設置箇所における整地が期限までに実施される必要がある。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ニカラグア(一人あたり国民総所得(GNI)1,850ドル(2020年、世界銀行))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類される。
- (2)ニカラグアの首都マナグア市では、人口増加に伴い、水需要が急増しているが、24時間給水を受けている地区は全体の50%に過ぎず、利用者の約14%は1日の給水時間が8時間以下であり、安定的な水の供給が課題となっている。その原因として、水源及び配水池容量の不足と、施設老朽化や水圧管理能力不足による漏水が挙げられる。
- (3)我が国は、2005年に開発調査「マナグア市中長期上水道施設改善計画調査」を実施し、2015年を目標とした上水道施設改善計画マスタープランの策定を支援した。また、技術協力「マナグア市無収水管理能力強化プロジェクト」(2017-2020年)を実施し、50%を超える無収水率の削減を中心とした計画策定やパイロットエリアにおける無収水削減の実施能力強化を支援した。これらの成果を有効に活用し、上下水道公社(ENACAL)の給水サービスを改善するためには、上水道設備の漏水対策及び送配水効率の向上に必要な資機材整備を行うことにより、運転・維持管理費削減と送配水効率向上を図ることが必要となっている。
- (4)ニカラグアは「国家人間開発計画(2018-2021)」にて、水・衛生サービスの対象エリアの拡大、水質の改善に加えて、既存の関連インフラの維持管理を重要課題と位置付けており、本件支援はその趣旨に合致するものである。我が国の対ニカラグア国別開発協力方針(2017年9月)においても「経済開発の促進に向けた基盤づくり」を重点分野の1つに掲げており、本計画は、同方針にも合致する。また、本計画は、給水サービスの改善及び住民の公衆衛生や生活環境の改善に寄与するものであり、SDGsゴール3「すべての人に健康と福祉を」、ゴール6「安全な水とトイレを世界中に」等の達成に貢献すると考えられる。さらに、同国政府の重要課題である本事業への我が国の協力を通して、我が国とニカラグアの二国間関係を更に強化することが期待できる。
2-2 効率性
- (1)人口や商業施設が密集する市内中心エリアを主な対象とし、特に、給水時間の短い地域を優先する等、対象を絞りこんだ。
- (2)発生している漏水を対症療法で削減するのではなく、インバータ及び配水池等の設置、老朽化したポンプの更新等を実施し、配水圧適正化による漏水削減及びエネルギー効率化によって、効率的に給水状況の改善を行う。
2-3 有効性
- (1)定量的効果
- ア マナグア市の無収水削減量が、事業完了3年後(2027年予定)には5,992千立法メートル/年となる。
- イ 単位生産量当たりの電力使用量が、0.80キロワットアワー/立法メートル(2020年実績)から0.77キロワットアワー/立法メートル(2027年)に削減される。
- ウ 配水池設置系統における平均給水時間が、9時間/日(2020年実績)から17時間/日(2027年)に増加する。
- (2)定性的効果
本計画の実施により、マナグア市の給水状況の改善を通じて、同市の公衆衛生の向上と生活環境改善に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ニカラグア政府からの要請書
- (2)コスタリカ・ニカラグア国別評価報告書(2018年度・第三者評価)
- (3)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)