ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年3月25日
評価年月日:令和4年2月7日
評価責任者:国別開発協力第一課長 竹端 昌宏
1 案件名
1-1 供与国名
ラオス人民民主共和国(以下「ラオス」という。)
1-2 案件名
ラオス国立大学工学部施設及び実験機材整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、首都ビエンチャンのラオス国立大学工学部に対し、教育及び研究活動に必要な基礎的な施設・機材の整備を行うことにより、同大学の教育・研究環境の改善を図り、もって同国における教育環境の整備と産業界のニーズに合った工学人材の育成に寄与するもの。
供与限度額は、21.05億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限と判断される。
留意すべき点としては、ラオス側負担事項である必要経費が同国政府の予算に計上され、遅滞なく実施される点があげられる。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ラオス(一人あたり国民所得2,480ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国(LDC)に分類されている。
- (2)ラオスは、インドシナ半島の中央に位置するメコン地域の要衝である。1991年以降、我が国は、対ラオス支援のトップドナー(OECD/DAC基準)として、同国との間で良好な関係を築いている。近年では、2015年に両国間の関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げとなり、2016年には「ラオスの持続的な発展に向けた日本・ラオス開発協力共同計画」、2021年には、「日本・ラオス戦略的パートナーシップの前進に向けた行動計画」が発表されるなど、両国関係は益々深化している。
- (3)ラオスでは、近代化に伴い経済構造に占める鉱工業・建設業の割合が緩やかに増加している。第9次国家社会経済開発計画(2021-2025年)案(the 9th National Socio-Economic Development Plan:NSEDP9)では、「質が高く、環境に配慮した、持続性ある成長」に向けて、鉱工業・建設業の年平均成長率の目標値を4.1%、経済改革による2025年までのセクター別GDP割合目標を32.3%と定め、鉱工業・建設業を経済成長の牽引役と位置付けている。しかしながら、現状ラオス人エンジニアの専門知識・技術は低く、エンジニアや中間マネジメント層には外国人が雇用されることが多く、質の高い工学系人材の育成が課題となっている。
- (4)ラオス政府は、第8次教育開発5か年計画(2016-2020年)において、労働市場が求める知識・技能を習得した人材を、高等教育セクターが十分に輩出することができていないことを指摘の上、産業界のニーズを踏まえたカリキュラムの開発と研究能力強化を通じた高等教育の質の向上を優先課題と位置づけ、さらに、第9次教育開発5か年計画(2021-2025年)では、大学における自然科学・工学分野の施設設備及び教材の改善を方針として掲げている。具体的には、国内4つの国立大学工学部のうち、最も多くの卒業生を輩出するラオス国立大学(National University of Laos: NUOL)工学部に対して重点的に取り組むとしているが、施設・機材不足により十分な実験・実習の時間が確保できないため、改善が求められている。
- (5)本計画は、NUOL工学部の施設・機材の整備を行うことで、教育・研究環境の改善を通じた質の高い工学系人材の輩出を図るものであり、ラオス政府が目指す工学系人材の育成に不可欠な優先度の高い事業として位置付けられるものである。
- (6)また、本計画は同国の開発課題・開発政策及び我が国の対ラオス国別開発協力方針における重点分野(産業の多角化と競争力強化、そのための産業人材育成)の一つである「教育基盤強化プログラム」に合致するものであるとともに、SDGsのゴール4(教育)にも寄与することから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
- (7)本計画の実施は、インドシナ半島の要衝を占める同国の産業人材育成に資することを通じて我が国との二国間関係発展にも大いに貢献するものであることから、外交上の意義は高い。
2-2 効率性
技術協力「産業発展のための工学人材強化プロジェクト」(2020-2025年)では、本計画で整備する施設・機材を活用し、実験・実習及び産学連携などを取り入れた実践的な教育を行えるようにソフト面の支援を行う予定である。また、本計画で整備する機材の選定に対しては、上記技術協力プロジェクトの専門家が助言を行うとともに、維持管理能力強化を支援することを想定しており、両事業を同時に組み合わせて実施することで相乗効果が期待される。
2-3 有効性
本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2027年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果
- ア NUOL工学部にある対象6学科のコースにおける機材活用をしたコースの数が、現在は存在していないが、16コースとなる。
- イ 本計画において整備した機材を活用し、研究及び実験・実習を行う実験・実習室の数が、現在は存在しないが、26室となる。
- ウ 本計画で供与した対象分野の機材を活用して教育・実験を行った学生数が、現在は存在しないが、1,820人となる。
- (2)定性的効果
施設・機材の整備により、NUOL工学部の教育・研究環境が改善されることが期待され、高等教育の拡充を通じ、産業界のニーズに合った工学人材が育成される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ラオス政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)ラオス国別評価報告書(2013年度・第三者評価)