ODA(政府開発援助)

令和4年3月15日

評価年月日:令和3年10月26日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里

1 案件名

1-1 供与国名

 ネパール連邦民主共和国(以下「ネパール」という。)

1-2 案件名

  ビラトナガルにおける上水道改善計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、ネパール南東部の第1州のビラトナガル市において、上水道施設の更新及び拡張を行うことにより、同市の水質改善及び安定した給水の実現を図り、もって同国の経済成長や国民生活の改善に直結する社会・経済基盤整備に寄与するもの。
 供与限度額は25.41億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる上水道セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への好ましくない影響は重大でないと判断されるため、カテゴリBに該当する。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ネパール(一人あたり国民総所得(GNI)1,090ドル(2019年))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は、インドと中国の間に位置しており、同国における民主主義の定着、安定と繁栄は、我が国にとって、政治的・経済的に重要な南西アジア地域全体の安定を確保する上で重要である。かかる観点から我が国は、長年主要ドナーとして継続的に同国を支援している。
  • (3)同国は、依然として社会経済インフラ不足等の多くの開発課題を抱えており、安全な水の供給は同国が取り組んでいる優先課題の1つである。
  • (4)同国南東部に位置する第1州の州都であるビラトナガル市は人口約30万人(ビラトナガル市、2019年)を抱え、カトマンズ、ポカラに次ぐ第三の規模の都市である。同市はインドとの国境付近に位置し、インドのコルカタ港ともつながる物流拠点として今後更なる発展が見込まれているが、上水道の各戸給水普及率は約30%に留まる(2019年時点)。水道へのアクセスのない多くの市民は浅井戸を利用しているが、浅井戸の水からは鉄・マンガンに加えて大腸菌が検出されており、給水環境の改善が喫緊の課題となっている。
  • (5)同国は、国家開発計画である第15次5か年計画(2019/20-2023/24年度)において、安全で十分な水の供給及び公衆衛生の改善を政策目標の1つとして掲げており、本件支援はその趣旨に合致するものである。また、我が国は、対ネパール国別開発協力方針(2016年9月)において、「経済成長や国民生活の改善に直結する社会・経済基盤整備」を重点分野の1つに掲げており、上水道整備に関する本計画は、同方針にも合致するものである。
  • (6)本計画の実施は、ネパールの生活改善に直結する社会・経済基盤整備であり、開発協力の観点から意義があり、また、同国政府が重視する上水分野の課題解決に貢献するため、二国間関係の更なる強化の観点から外交的意義も大きい。

2-2 効率性

  • (1)当初ビラトナガル市全域を対象としていたが、現地調査等で検討を行った結果、支援対象箇所を市内人口密集地に絞り込み、支援の効率化を図っている。
  • (2)また、調査の結果、取り組むべき課題を絞り込み、最大の課題である水質の改善に係る取組に重点を置くことで、各戸接続(給水管の切り替え)などは先方政府負担と整理し、支援の効率化を図っている。
  • (3)さらに、技術協力(個別専門家)「水衛生プログラムアドバイザー」(2022年~2023年)を派遣予定であり、本計画とも連携しながら活動を行うことで、支援の効率化に貢献することが期待される。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2019年の実績値を基準値として、事業完成から3年後の2027年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。

  • (1)給水に含まれる残留塩素、鉄及びマンガンが、ネパール飲料水質基準に不適合である数値(残留塩素:0.1ミリグラム/リットル以下、鉄:最大 0.53ミリグラム/リットル、マンガン:最大 0.48ミリグラム/リットル)から、同基準を満たす数値(残留塩素:0.1ミリグラム/リットル以上、鉄 :0.3ミリグラム/リットル以下、マンガン:0.2ミリグラム/リットル以下)に改善される。
  • (2)ビラトナガル市内の支援対象地域の1日の平均給水量が、約9,000立方メートル/日から約15,000立方メートル/日に増加し、また、給水人口も約52,000人から約93,000人に増加する。
  • (3)ビラトナガル市の給水状況が改善されることに伴い、同市の公衆衛生の向上と生活環境の改善が図られる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ネパール政府からの要請書
  • (2)ネパール国別評価報告書(平成24年度・第三者評価)
  • (3)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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