ODA(政府開発援助)

令和4年3月14日

評価年月日:令和4年2月7日
評価責任者:国別開発協力第一課長 竹端 昌宏

1 案件名

1-1 供与国名

 カンボジア王国(以下「カンボジア」という。)

1-2 案件名

 スバイリエンにおける上水道拡張計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、スバイリエン市において、取水施設、導水施設、浄水施設、送配水施設を建設することにより、安全な水の供給能力の向上を図り、もってスバイリエン市住民の生活環境の改善に寄与するもの。
 供与限度額は、27.86億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
  • (2)同国は不発弾・地雷のリスク地域があるため、先方負担事項として施工開始までに埋設確認調査および埋設が確認された場合の撤去が必要。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)カンボジア(一人当たり国民総所得(GNI)1,500ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
  • (2)メコン地域の中心部に位置するカンボジアは、地域の連結性と域内の格差是正の鍵を握る国として重要。我が国は、カンボジア内戦後の和平・復興・開発への貢献や活発な要人往来、国際場裡での協力等を通じ、同国との関係を強化してきた。1991年のパリ和平合意以降は、我が国初の本格的なPKOを派遣するなど、同国の復興・開発に積極的に関与しており、2013年12月には、両国関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げされるなど良好な二国間関係を築いてきている。
  • (3)カンボジアの首都プノンペンでは、我が国及び他ドナーの支援により、2006年に水道普及率90%、無収水率8%、24時間給水の実現等を達成した。一方で、同時期における地方都市の水道普及率は35%に留まっていたため、我が国の無償資金協力や世界銀行、アジア開発銀行の融資によって、地方主要8都市の水道施設の初期的な整備が進められた。また、当該8都市の公営水道事業体を対象に、JICAは2007年から北九州市等と連携した技術協力を開始し、運転・維持管理技術の強化支援を進めた。
  • (4)その結果、一定レベルの上水道施設の運転は可能となったが、都市部人口の増加に応じた更なる施設拡張が必要となっている。2013年以降、これら8都市の水道普及率の拡大と公営水道事業体の中長期的な経営の安定化を図るため、JICA及び他ドナーの支援を得て上水道の拡張が進められ、スバイリエン市を除く7都市の上水道は拡張済みあるいは拡張実施中となっている。
  • (5)残るスバイリエン市では、既存の浄水施設(最大給水能力6,560立方メートル/日)の運転状況に問題はなく、無収水率も約9%と低い値で維持されているが、人口(給水区域人口約10.6万人、うち都市部人口5.3万人)に対して給水能力が足りておらず、都市部水道普及率は48.9%程度(2019年)に留まっている。同国の「国家戦略開発計画(NSDP)2019-2023」では、都市部の水道普及率を2025年までに100%とする目標を設定しており、同国政府は目標達成のため地方都市の上水道施設整備を進めているが、スバイリエン市における上水道未接続の住民は自家用井戸や雨水から水を得ている状況であり、利便性や水質等の衛生的な見地から上水道への接続が喫緊の課題となっている。
  • (6)本計画は、スバイリエン市において、安全な水の供給能力の向上を図るものであり、同国の開発課題の解決に資するものである。また、我が国の対カンボジア国別開発協力方針(2017年7月)では、重点分野「生活の質向上」において上水道の整備を支援するとしているほか、本計画は「自由で開かれたインド太平洋」の目指す理念である「平和と安定の確保」(「人道支援」)に合致するとともに、SDGsゴール6(万人の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理の確保)及びゴール3(健康な生活の確保、万人の福祉の促進)にも貢献することからも、実施する必要性は高い。
  • (7)また、我が国とカンボジアは、良好な二国間関係を背景に国際場裡においても協力関係にあり、拉致問題を含む北朝鮮問題について、カンボジアは一貫して日本の立場を支持しているほか、我が国が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」についても一早く支持を表明するなど、地域・国際場裡の課題に関して一層緊密に連携・協力してくことで一致している。カンボジアの開発ニーズ及び我が国の支援方針に合致し、メコン地域の連結性向上にも資する本計画を実施することは、更なる二国間関係の強化の観点からも重要。

2-2 効率性

 カンボジア工業科学技術革新省に対して、地方都市水道事業体への支援のための能力強化を含む技術協力「水道行政管理能力向上プロジェクト」(2018年-2022年)を実施中である。本計画による施設拡張と当該技術協力事業による主管官庁から州水道局への能力強化支援との相乗効果により、安定的な水道事業経営が期待される。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2019年の実績値を基準値として、事業完成2年後の2027年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア スバイリエン州水道局による日平均給水量が、4,627立方メートル/日から10,009立方メートル/日に増加する。
    • イ スバイリエン市による給水人口が、23,545人から55,964人に増加する。
    • ウ スバイリエン市都市部水道普及率が48.9%から86.7%に増加する。
    • エ 貧困世帯への給水管接続箇所数が、53箇所から1,254箇所に増加する。
  • (2)定性的効果
     住民の生活環境の改善(これまで雨水等を利用していた住民の公衆衛生環境の改善及び利便性の向上)に寄与する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)カンボジア政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)カンボジア国別評価報告書(2017年度・第三者評価)
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