ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年2月1日
評価年月日:令和3年11月5日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一
1 案件名
1-1 供与国名
レソト王国(以下「レソト」という。)
1-2 案件名
小水力発電整備計画
1-3 目的・事業内容
レソト国内最大規模のカツェ・ダムにおいて、小水力発電設備を整備することにより、同国の再生可能エネルギーの開発促進及び僻地を含む国内の安定した電力供給を図るもの。
供与限度額は14.15億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月公布)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)レソト(一人当たり国民総所得(GNI)1, 360ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- (2)同国における電力セクターの開発の現状は、同国発電設備容量(合計74.7メガワット)のほぼすべての発電がムエラ水力発電所(72メガワット)によるものであるが、発電量は不足しており、年間を通じ輸入に頼らざるを得ない。2018/19年度における同国の最大電力需要は177メガワットであり、必要電力の約58%を南部アフリカ・パワープール(South Africa Power Pool:SAPP)を通じ輸入している。南部アフリカ全体で見ても電力供給は需要に追い付いておらず、同国自身の発電容量拡大がエネルギー安全保障上、喫緊の課題となっている。
- (3)このような状況下、同国政府はレソト電力政策(Lesotho Energy Policy 2015-2025)にて環境負荷を最小限に抑えた形での再生可能エネルギー電源の確保と有効活用を掲げている。これを受け、レソト高地開発公社(Lesotho Highland Development Authority。以下、「LHDA」という。)は、既存ダムの河川維持放流水を利用した小水力発電を計画している。
- (4)本事業は、同国が南アフリカ共和国と共同で実施する「レソト高地水プロジェクト(LHWP)の中心的役割を担うカツェ・ダムにおいて、洪水による浸水で故障した既存小水力発電設備(発電容量500キロワット)を新しい設備(発電容量500キロワットを2台)に更新し、同設備の故障以来、ただ放流を続けている維持放流水を利用することで、カツェ・ダムでの発電容量を倍増させるものである。本事業はムエラ水力発電所の遠隔監視システムを通じて自動運転による維持管理を行う小水力発電設備となるもので、山奥の小水力発電設備の維持管理を容易にし、未活用の再生可能エネルギーの有効活用とその推進に資する。これにより、同国の発電設備容量の拡大、輸入電力量の削減及び既存ダムでの小水力発電設備の普及促進に貢献するものであり、本事業はレソト電力政策のうち、小水力発電に係る複数の実施計画の中で最も優先度の高い事業の一つとして位置づけられている。
- (5)対レソト王国国別開発協力方針(2014年4月)では「人材育成と社会的基盤の強化」を重点分野としており、本事業は、電力の安定供給を通じた社会的基盤の強化に寄与するものであり、同方針に合致する。また、我が国は第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において、「産業の多角化の基盤となる再生エネルギー開発」の実現への支援を表明しており、JICAの資源・エネルギー分野の事業戦略目標では電力アクセス向上及びエネルギー利用の低・脱炭素化を掲げている。よって、本事業は同国の開発課題・開発政策、我が国の協力方針およびJICAの事業戦略目標に合致する。加えて、小水力発電設備の整備を通じて、再生可能エネルギーの推進に資するものであり、SDGs ゴール7「万人のための利用可能で、安定した、持続可能で近代的なエネルギーへのアクセス」にも貢献するものである。
- (6)また、同国は国際社会において基本的に我が国の立場を支持する友好国であり、2021年は日・レソト外交関係樹立50周年にあたるため、これを機に本計画を実施することは、二国間関係の更なる強化の観点からも重要である。
2-2 効率性
- (1)レソト政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とした。
- (2)2011年度、同国に対して無償資金協力「太陽光を利用したクリーンエネルギー導入計画」を実施しており、当該分野での更なる再生可能エネルギー導入率の促進と電力自給率向上が期待される。
2-3 有効性
本計画の実施により、同国の再生可能エネルギーの開発促進及びエネルギー安全保障の向上に寄与し、2021年基準値と事業完成3年後の2026年の目標値を比べて、主に以下のような効果が期待される。
- (1)定量的効果:発電可能容量がゼロから1,000キロワットに、設備利用率がゼロから40%に、年間発電電力量がゼロから3,504,000キロワットアワー/年に増加する。
- (2)定性的効果:僻地であるカツェ・ダム周辺地域の住民への電力供給力の強化、再生可能エネルギーの促進、エネルギー安全保障の向上。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)レソト政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)