ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和3年10月29日
評価年月日 平成31年4月5日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
1-1 供与国名
東ティモール民主共和国(以下「東ティモール」という。)
1-2 案件名
プレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、東ティモールの首都ディリに位置するプレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港(以下「ディリ空港」という。)において、施設(国際旅客ターミナルビル・管制塔、エプロン、誘導路等)及び関連機材(航空保安機材及び航空管制機材)の整備を行うことにより、利便性・安全性の向上及び将来的な航空需要の増加への対応を図り、東ティモールの経済社会基盤(インフラ)の整備・改善に資することで、同国の持続可能な経済成長に寄与する。
供与限度額は49.01億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリーはBであり、空港セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しない。
- (2)東ティモール政府により、工事作業の妨げとなる施設の取り壊しや移設、高電圧配電施設及びサブステーション等の建設が本計画開始までになされること。
- (3)運用中の空港における工事となるため、関係者(航空会社等)の工事への理解を得ながら、空港運営に支障を来さないような施工スケジュール、方法を採ること。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)東ティモール(一人あたり国民総所得1,790ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- (2)ディリ空港は、東ティモール最大の国際空港であり、インドネシア、オーストラリア、シンガポールとの国際定期便(38便/週程度)が運航されており、国内線は飛び地であるオエクシ及び南部のスアイとの間で定期便(6便/週程度)が運航されており、利用者総数は2008年の約10万人から2017年の約25万人へと着実に伸びている。
- (3)現在のディリ空港は、滑走路末端安全区域や着陸帯等の空港基本施設が国際民間航空機構(ICAO)の基準を満たしていないのに加え、管制塔の高さ不足のために滑走路東端を視認できないなど、安全性向上が喫緊の課題となっている。また、現在の滑走路は全長1,850メートルのため航空機材によっては重量制限が必要な状況であること、照明施設が壊れているために夜間の離着陸ができないなどの制限がある。
インドネシアからの独立以前に地方空港として建設されたため、旅客ターミナルビルは国内線用としての設計であり、建物面積は小さく、その一部に国際線用施設(入出国、税関、検疫検査)を設置していることから、増加する航空需要に対応できておらず、サービス水準も非常に低い状況となっている。また、2026年にはディリ空港の旅客需要は国内・国際線合わせて約40万人に達する見込みであり、更なるサービスレベルの低下が懸念される。 - (4)航空セクターのインフラ開発は、東ティモール政府が2030年までに上位中所得国になることを目標として策定した戦略的国家開発計画(Strategic Development Plan)における重点課題の一つとして位置付けられており、我が国の対東ティモール国別開発協力方針(平成29年5月)の重点分野の一つである「経済社会基盤(インフラ)の整備」とも合致する。また、SDGsゴール8「持続可能な経済成長」及びゴール9「強靱なインフラの構築」にも資することから、無償資金協力として本計画の実施を支援する必要性は高い。
- (5)なお、東ティモール政府は、現在、滑走路延伸(1,850メートルから2,150メートル)や照明施設の改修について取り組んでおり、本計画においては、新ターミナル施設用駐車場の舗装敷設、高圧配電施設及びサブステーションの整備等についても負担する予定。
2-2 効率性
我が国は、JICA開発調査型技術協力「ディリ都市計画策定プロジェクト」(2014年4月~2016年8月)の中で空港開発セクターの現状分析及びディリ空港の拡張についてのアクションプランの提示を行っており、本計画は同都市計画における分析やアクションプランに基づき計画されている。
2-3 有効性
本計画の実施により、以下の成果が期待される。
- (1)定量的効果:2025年(事業完成3年後)に、国際線旅客数(人/年)が216,400人から約330,000人、外国人訪問客数(人/年)が65,642人から約100,000人に増加するほか、航空機1機(150人)当たりの入国審査時間が30分から20分に削減される見込み。
- (2)定性的効果:国際線旅客ターミナル位置を南側に移設し、エプロンを移設することにより、駐機航空機が片側150メートルの着陸帯の制限表面にかかることがなくなり、航空の安全性が向上する。また、空港施設の安全性、処理能力の確保に伴う利便性・快適性の向上により、観光促進に貢献することで経済効果が期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)東ティモール政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)「平和構築のための支援の評価」(2010年度/第3者評価)