ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和3年10月20日
評価年月日:令和3年9月15日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一
1 案件名
1-1 供与国名
マラウイ共和国(以下「マラウイ」という。)
1-2 案件名
リロングウェ市における変電所改修計画
1-3 目的・事業内容
首都リロングウェ市内に位置するカネンゴ変電所とオールドタウン変電所において、変電設備を改修することにより、産業集積地域及び市内中心部への電力供給力の向上を図り、もって各種産業の活性化や外国企業誘致の促進、市民生活の改善並びに同国の産業育成のための基盤整備に寄与する。
供与限度額は28.91億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本事業は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
- (2)政情、治安等が極度に悪化しないこと。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)マラウイでは、産業発展や人口増加に伴い電力需要が増加傾向にある一方、電化率は11%とサブサハラ・アフリカの平均値35%と比較しても極めて低い。同国政府は、増加する国内の電力需要に対し、他ドナーの支援も得ながら発電容量の増強に取り組んでおり、電源開発の推進、電源の多様化、独立系発電事業者の誘致、域内系統接続等を通じて、2025年には電力供給量を2020年現在の642メガワットから1,254メガワットまで増加させ、供給能力が需要を上回ることを目指している。
- (2)他方、送変電設備に関しては、多くの変電所の処理能力が限界に達しており、将来の電力供給量の増加に送配電設備が対応できないとされている。特に、同国の主要産業が集中し、人口増加が進むリロングウェ市には約230,000世帯が居住しているが、電力を供給しているカネンゴ変電所とオールドタウン変電所は、設備の老朽化によるトラブルが停電回数の増加を引き起こしているため、住民の不満の蓄積、運用・保守費用の急激な増加、産業集積地域に対する電力供給制限に伴う経済的な損失の拡大につながっており、早急な対策が求められている。
- (3)我が国の対マラウイ国別開発協力方針では、「気候変動や都市化を念頭においた成長の基盤整備」を重点分野として掲げており、同国における電力の安定供給に寄与する本事業は、同方針に合致する。また、SDGsゴール7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」にも貢献するものである。
- (4)2019年8月に開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の期間中に実施された、チムリレンジ・マラウイ副大統領と安倍総理大臣の会談において、先方から我が方に対するエネルギー分野における支援要請に対し、安倍総理大臣から電力セクターでの支援を行うことを表明しており、本計画は同表明を実現するものである。
- (5)マラウイは、我が国のこれまでの協力を高く評価しており、また、国際社会においては我が国の立場を一貫して支持してきている友好国でもあることから、二国間関係を維持・強化することは極めて重要である。
2-2 効率性
- (1)マラウイ政府からの要請を踏まえながら、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とした。
- (2)過去に実施した同様の案件との比較を行い、事業費の妥当性を検討し、コスト縮減を図った。
2-3 有効性
本事業の実施により、2019年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2027年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果
- ア カネンゴ変電所及びオールドタウン変電所における変圧器設備容量がそれぞれ83.0メガボルトアンペアから158.0メガボルトアンペア、37.5メガボルトアンペアから50.0メガボルトアンペアに増加する。
- イ カネンゴ変電所及びオールドタウン変電所の変圧器稼働率(注)がそれぞれ101.7%から70.4%、65.4%から60.4%に増加する。
- (2)定性的効果
- ア リロングウェ市の電力供給の信頼性の改善、経済活動の持続性の維持及び市民生活の改善(リロングウェ市には989,318人、230,266世帯が居住している(2018年、マラウイ統計局))が期待される。
- イ 停電の頻度が下がることにより、リロングウェ市に拠点を持つ日系企業に裨益するとともに、電力供給の信頼性の向上により、日本企業によるマラウイ進出の促進が期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)マラウイ政府からの要請書
- (2)「リロングウェ市における変電所改修計画」協力準備調査報告書
- (3)マラウイ国別評価(第三者評価・2012年度)