ODA(政府開発援助)

令和3年3月24日

評価年月日 令和2年12月11日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里

1 案件名

1-1 供与国名

 パキスタン・イスラム共和国(以下「パキスタン」という。)

1-2 案件名

 ファイサラバードにおける浄水場及び送配水管網改善計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、パキスタンのパンジャブ州ファイサラバード市において、既存浄水場の更新・拡張及び送配水施設の整備等を行うことにより、給水能力の向上を図り、もって住民の生活環境を改善し、人間の安全保障の確保と社会基盤の改善に寄与するもの。
 供与限度額は、40.94億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
  • (2)パキスタンの治安・新型コロナウイルス感染症流行状況が大幅に悪化しないこと。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)パキスタン(一人あたり国民総所得(GNI)1,530ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低・中所得国に分類されている。
  • (2)同国は、飲料水分野の国家開発政策である「国家飲料水政策」(National Drinking Water Policy, 2009)において、2025年までに全ての人に安全な飲料水へのアクセスを提供することを目標に掲げている。また、上水道整備計画を定めた「国家水計画」(National Water Policy 2018)の中でも、安全な飲料水へのアクセスを全国民の基本的人権であるとしている。一方で、同国の水道水へのアクセス率は28%(WHO/UNICEF、2017)に留まっており、国民の多くは井戸から地下水を汲み上げて利用しており、地下水位の低下や水質の悪化といった問題に直面している。また、今後の人口増加に伴い更なる水需要の増加が見込まれることから、計画的な水源開発や安全で安定的な給水システムの整備が急務となっている。
  • (3)同国第三の人口を擁するファイサラバード市では、人口増加に水の供給が追いついておらず、2023年には1日の水需要量(最大値)が施設容量を30%程度上回ることが予想されている。そのような中で、既存浄水場の中には機材の故障や老朽化により設計能力を大きく下回る浄水量となっている施設もあり、そのうち市街地中心部を給水エリアとする重要な浄水場である旧ジャル・カヌアナ浄水場の浄水処理量は、設計能力の43%程度の6,800立方メートル/日となっている。さらに、給水区域のブロック化や配水管理が適切に行われていないために水圧が低く、下水が配水管に混入して水質が悪化しており、また、1日の給水時間も6時間程度である等、水道サービスの質が低下している。こうした状況にかんがみ、同市住民の安全な水へのアクセスを早期に改善することが求められている。
  • (4)本計画は、旧ジャル・カヌアナ浄水場の更新・拡張、送配水施設の整備等を行うことにより、水圧、給水時間、水質等の水道サービスの改善に貢献するものであり、同国国家政策において優先度の高い重要事業として位置付けられる。また、水・衛生分野の支援は、我が国の対パキスタン国別開発協力方針における重点分野の1つである「人間の安全保障の確保と社会基盤の整備」に沿ったものである。さらに、SDGsのゴール6「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」にも貢献するものである。新型コロナウイルス感染拡大防止のために手洗いが重要であることから、感染症対策の観点からも重要性が高い。
  • (5)同国は、世界第5位の人口を有し、アジアと中東の接点に位置するという地政学的重要性を有するとともに、テロ撲滅に向けた国際社会の取組において重要な役割を担っている。このため、同国の安定的な発展は、アフガニスタンを始めとする周辺地域、ひいては国際社会全体の平和と安定に資する点から我が国にとっても極めて重要である。
  • (6)以上の観点から、ファイサラバード市における水道サービスの改善を通じて住民の生活環境を改善し、同国の人間の安全保障の確保と社会基盤の改善に資する本計画の実施は、開発協力としての必要性及び外交的意義が高い。

2-2 効率性

 本計画と合わせて今後技術協力「ファイサラバード水道事業経営改善プロジェクト」(2022年1月~2026年1月を予定)の中で、ファイサラバード上下水道公社職員を対象に、配水管網ブロック化による給水サービス改善方法を指導する予定である。本計画では、給水エリアの一部の配水管網を整備する計画であるが、技術協力で同公社職員の能力を向上させることで、本計画で整備する給水エリアの配水管網のブロック化に加え、更なる配水ブロック化エリアの拡大が可能となり、同公社の給水サービス改善の加速も期待できる。さらに、同市での水道サービス改善の経験をグッドプラクティスとして他都市にも普及するために、パンジャブ州内の5つの上下水道公社を対象とした研修を提供しているAl-Jazariアカデミーを支援する「パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト フェーズ2」(2021年1月~2024年1月実施予定)において、同市の経験及び教訓を研修内容へ反映させる。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2020年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2027年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 旧ジャル・カヌアナ浄水場の1日の平均浄水量が、6,800立方メートル/日から14,800立方メートル/日に増加する。
    • イ 水圧が、1.7メートル(平均値)から25メートル以上(高架水槽出口での水圧)に増加する。
  • (2)定性的効果
     給水サービスの改善により、市民の公衆衛生及び生活環境の改善や感染症対策の促進に寄与する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)パキスタン政府からの要請書
  • (2)パキスタン国別評価報告書(2014年度・第三者評価)
  • (3)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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