ODA(政府開発援助)

令和3年2月2日

評価年月日:令和2年12月3日
評価責任者:国別開発協力第三課長 黒宮 貴義

1 案件名

1-1 供与国名

 ベナン共和国(以下「ベナン」という。)

1-2 案件名

 コトヌ市ベドコ交差点立体交差建設計画

1-3 目的・事業内容

 コトヌ市内のベドコ交差点において、立体交差建設、平面交差部改良及び信号制御の改善を行うことにより、同交差点と市内幹線道路の交通混雑の改善を図り、もって当国及び西アフリカにおける物流改善及び成長産業の強化に寄与する。
 供与限度額は36.75億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
  • (2)2件の用地取得、及び電力、水道、通信の埋設物の移設が入札資格審査の公示前までに実施されること。
  • (3)政情・治安が極度に悪化しないこと、また、想定外の自然災害や物価高騰が発生しないこと。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ベナン(一人あたり国民総所得(GNI)1,250ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は、西アフリカのギニア湾岸に位置し、ニジェール等の内陸国やナイジェリア内陸部などへの物流の要衝となっているほか、ギニア湾沿岸のコートジボワールからナイジェリアまでの東西を結ぶアビジャン・ラゴス回廊上の主要通過地となっている。同国政府は、「政府行動計画」(「Programme d' Action du Gouvernement 2016-2021」。以下「PAG」という。)を2016年に閣議決定し、同国の域内における地理的な利点を生かして経済の構造改革を推進するため、「輸送インフラの強化」を重要戦略に掲げ、道路網の整備等のインフラ開発を進めつつ、成長産業を強化・育成していく方針を発表している。
  • (3)同国の中心都市であるコトヌ市は、年間994万トンの貨物取扱量を誇る西アフリカの主要港の一つであるコトヌ自治港を擁しており、同港を中心とした道路網の整備はPAGの重要な柱となっている。コトヌ市はギニア湾とノクエ湖に挟まれた東西に細長い形状をしており、コトヌ自治港から内陸部や内陸国に輸送される貨物は、東西国際回廊(アビジャン・ラゴス回廊)を経由し、同市北部のノクエ湖を西に迂回し北上するルート(西アフリカの南北国際回廊(コトヌ・ニアメ回廊))を通る。事業対象となるベドコ交差点は、東西国際回廊とコトヌ市の中心を東西に結ぶアーバン道路の合流点であるため、同交差点への交通の集中は著しく、市内で最も渋滞が激しい。信号は設置されているものの、交通量が多すぎることに加え、混雑状況に応じて信号表示パターンを変動する運用になっていないこと、信号無視も横行していることから、交差点は終日混雑しており、円滑な物流及び都市交通の妨げ、市民の安全及び同国の経済活動に支障を来している。
  • (4)我が国は、ベナンを含む西アフリカを、アフリカにおける総合広域開発支援に係る重点地域の一つに定め、「西アフリカ成長リング回廊整備戦略的マスタープラン」の策定を支援。同マスタープランでは西アフリカの持続的な経済開発における沿岸国の市場規模拡大及びアビジャン・ラゴス回廊整備による連結性強化の重要性を指摘している。また、2019年8月の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、西アフリカ成長の環を含むアフリカの三重点地域を中心に質の高いインフラ投資の推進を掲げており、本計画は同コミットメントに合致する。さらに、対ベナン国別開発協力方針(2017年10月)では、「インフラ整備」が重点分野の筆頭に位置付けられており、本計画は同方針にも合致する。
  • (5)また、本計画は、交通混雑の激しい国際回廊上の主要交差部の交通混雑の緩和推進を通じて、同国及び西アフリカ地域における物流改善及び成長産業の強化並びに市民の安全確保に資するものであり、SDGsゴール3(ターゲット3.6:2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減)、ゴール9(産業と技術革新の基盤)及びゴール11(住み続けられるまちづくり)に貢献すると考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
  • (6)さらに、同国は国際社会において、常に我が国の基本的立場を支持する友好国であり、過去7回開催されたTICADの全てに国家元首が参加している等、我が国の対アフリカ政策において重要な位置づけにある。2018年のアベノンシ外相の訪日の際に発出された日ベナン共同外相声明や2019年のTICAD7の際の日ベナン首脳会談でも本計画について言及がなされており、本計画の実施は外交的意義が高いと認められる。

2-2 効率性

  • (1)ベナン政府からの要請を踏まえつつも、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とした。
  • (2)過去に実施した同様の案件との比較を行い、事業費の妥当性を検討し、コスト縮減を図った。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2019年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2026年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア ベドコ交差点を通過する旅客数が、533千人/日から599千人/日に増加する。
    • イ コトヌ自治港取扱貨物量のうち、ベナン、ニジュール、マリ及びブルキナファソへの貨物量が、8,774千トン/年から10,214千トン/年に増加する。
    • ウ 夕方ピーク時の走行時間が、14分から3分に短縮される。
    • エ 朝方ピーク時の交差部飽和度が、1.009から0.862に改善する。
  • (2)定性的効果
    • ア 平面交差部を立体交差化することにより大型貨物車両の交通流を確保し、物流の円滑化により輸送コスト低減に寄与する。
    • イ 旅客や物流の安定性、速達性が確保されることにより、コトヌ市内のアクセスが向上し、地域社会・経済活性化に寄与する。
    • ウ 車両、バイク及び歩行者との交錯が減少することにより、交通事故が減少する。
    • エ 当国及び西アフリカにおける物流改善及び成長産業が強化される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ベナン政府からの要請書
  • (2)「コトヌ市ベドコ交差点立体交差建設計画」協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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