ODA(政府開発援助)

令和2年12月23日

評価年月日:令和2年2月13日
評価責任者:国別開発協力第三課長 黒宮 貴義

1 案件名

1-1 供与国名

 チュニジア共和国(以下「チュニジア」という。)

1-2 案件名

 漁業資源管理指導船建造計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、チュニジア海域において漁業資源管理指導船を2隻供与することにより、水産セクターにおいて地球規模で課題となっている違法・無報告・無規制(IUU)漁業への指導の強化を図り、もって水産物の健全な再生産及び水産業の持続的な発展並びにチュニジアの持続可能な産業育成に寄与するもの。
 供与限度額は12.09億円である。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限と判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)チュニジア(一人あたり国民総所得3,500ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、中所得国に分類される。
  • (2)同国において、水産業は食料供給源、外貨獲得、雇用創出源としてSDGsゴール8(持続的・包括的な経済成長)の達成にも資する重要な役割を果たしている。また、同国の「水産セクター開発計画(2016年~2020年)」では、SDGsゴール14(海洋資源の保全)の内容と同様、水産業の持続的な発展のための水産資源の合理的利用が優先目標として掲げられ、違法操業の撲滅に取り組むとしている。
  • (3)同国の違法操業対策を含む漁業管理行政は、農業・水資源・漁業省漁業養殖総局(DGPA)の所管業務であるが、取締りを行うための漁業資源管理指導船を保有していないため、DGPAの監視活動は、陸上における漁獲物のモニタリングや流通段階での検査、船舶位置監視システムと小型パトロール艇2隻による限定的な沿岸監視に留まっている。したがって、洋上における違法操業の監視活動は、現状、国家警備隊(内務省)を中心に実施されているものの、同組織の主任務ではないことから、効果は限定的となっている。また、同国は、自国が加盟する地域漁業管理機関(RFMOs)から洋上での監視活動への参画が求められているが、上記の事情により十分に対応できておらず、洋上での取締り能力強化が喫緊の課題となっている。
  • (4)このような状況を踏まえ、同国政府は、DGPAを実施機関としてIUU漁業対策を実施するため、1隻を同国最大の漁港であるスファックス港に配備して同国南部を中心に運用し、もう1隻を北部の中心的な漁港であるケリビア港に配備して同国北部を中心に運用するとの計画を立て、漁業資源管理指導船の整備を我が国に対して要請してきたものである。
  • (5)IUU漁業対策支援については、海上法執行能力強化の観点から平和と安定の確保に貢献し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」ビジョンとも整合性があるほか、TICAD7横浜行動計画2019でもIUU漁業対策の貢献が言及されており、また、TICAD7で示された日本の取組のうちブルーエコノミー支援において、海洋安保や持続可能な水産資源利用強化に向けた人材育成、船舶機材供与が示されているなど、本計画の早期実施は我が国の最重要政策に合致するとともに、TICAD7のフォローアップの観点からも重要である。
  • (6)同国は、我が国にとってクロマグロの主要な輸入相手国の一つであり、種々の水産関係国際会議において我が国の立場を支持していることから、本計画の実施を支援することは、水産分野における二国間関係の強化や国際社会における日本のプレゼンス強化にも寄与する。また、チュニジア海域の海洋生態系は地中海全域の水産資源管理の基盤となるため、同国を拠点として支援を行うことで周辺地域にも効果が及ぶことから、地球規模での課題となっているIUU漁業対策の一環である本計画の実施を支援する必要性は高い。

2-2 効率性

 チュニジア政府は、我が国に対し、同国の国内法において位置情報処理装置(VMS)の設置が義務付けられている全長15メートル以上の全漁船約900隻へのVMSの設置についても要請してきたが、同国政府が自費にてVMSの設置を開始していたことから、同国政府とも調整の上、VMSの設置は本計画の対象外とすることで整理し、総事業費を節減した。

2-3 有効性

 本計画の実施により、以下のような成果が期待される。

  • (1)現状実施できていない漁業資源管理指導船による洋上での漁業監視活動が実施可能となる(洋上での漁業監視活動への年間従事日数150日/隻、洋上での漁業監視の航海距離30,000海里/隻(2025年:事業完成3年後))。
  • (2)違法操業による水産資源への漁獲圧力が低減する。
  • (3)RFMOsが求める洋上での監視活動実施義務が履行される。
  • (4)水産資源の持続的な利用につながる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)チュニジア政府からの要請書
  • (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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