ODA(政府開発援助)

令和2年8月27日

評価年月日:令和2年8月7日
評価責任者:国別開発協力第二課長 江碕 智三郎

1 案件概要

(1)供与国名

 バングラデシュ人民共和国(以下、「バングラデシュ」という。)

(2)案件名

 都市開発及び都市行政強化計画

(3)目的・事業内容

 対象4都市(ガジプール市、コミラ市、ナラヤンガンジ市及びコックスバザール市)において、インフラ整備と都市開発に係る行財政能力強化を一体的に行うことにより、都市機能の改善を通じた対象都市の経済発展及び住民の生活向上を図り、もって中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 土木工事、機材調達(既存道路の改修、小規模橋梁の整備等)、排水施設(排水溝整備等)、廃棄物管理(廃棄物管理機材、衛生埋立処分場整備等)、給水関連施設(地方都市給水管整備・拡張及び浄水施設整備等)、その他小規模都市インフラ(街路灯、公園、公民館等)
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
282.17億円 0.65% 30(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる道路・橋梁、上水道、廃棄物処理・処分・衛生セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され、かつ、同ガイドライン上に掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。
 バングラデシュの環境保全規則に基づき、EIAの作成・提出が求められる事業に関しては、同国政府によるEIAの承認及び環境許認可証明書の取得が義務付けられている。
汚染対策
 本計画では、サブ・プロジェクトが決定した後に、環境評価レビューフレームワーク(Environment Assessment and Review Framework)に基づき環境管理計画に則って緩和策が策定される予定。同フレームワークでは、工事中は大気質、水質、土壌汚染、廃棄物等について、散水、定期的な工事機材の点検、工事により排出される汚染物質や廃水の適切な処理等の対策が提案されている。
自然環境面
 本計画の対象地域は、国立公園等の影響を受けやすい地域又は重要な自然生息地及びその周辺に該当せず、自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
社会環境面
 一部のサブ・プロジェクトでは用地取得・住民移転が発生することが想定される。当該サブ・プロジェクトに関しては、再定住政策フレームワーク(Resettlement Policy Framework)に基づいて作成される住民移転計画に沿って、取得が進められる予定。
その他・モニタリング
 本計画では、工事中は大気質、水質、土壌汚染、廃棄物等に関するモニタリングは、実施機関の責任・監督の下、施工業者が行い、供用時は、実施機関である地方行政技術局と同局本部内に設置されるプロジェクト実施ユニット(Project Implementation Unit)が行う。また、用地取得は、地方行政技術局と事業実施ユニットがモニタリングを行う。
外部要因リスク
 特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 バングラデシュでは、近年、急激に都市化が進んでおり、2016年時点で国民の約35%(約5,700万人)が都市に居住、都市部の人口増加率は年間3.1%と全国平均(年1.1%)を大きく上回っている。首都ダッカや第二の都市であるチッタゴン等の大都市に限らず、地方都市の中心部も大幅に人口増加が進み、交通渋滞や環境の悪化等の問題が顕在化している(世界銀行、2018年)。同国の地方自治体のうち、「都市自治体」に分類される全国12の中核都市及び中核都市に次ぐ規模の地方都市では、産業の集積地として国の経済発展を牽引する役割を担う一方、急速な人口増加に道路、給水、排水、廃棄物処理等のインフラ整備が追い付いておらず、その整備が喫緊の課題となっている。しかし、都市自治体のインフラ整備においては、中央政府機関(都市開発公社、水道供給公社等)と都市自治体の連携が十分ではなく、事業実施段階の予算承認や用地取得の遅延、完成後の運営・維持管理体制の欠如等の課題が指摘されている。また、法令で定められた都市自治体が担うべき機能に対し、必要な資金と人員数、技術的なキャパシティが不足しており、インフラ整備や行政サービス提供に係る体制が十分に構築されていない状況となっている。これらの課題解決に向けて、同国政府は、「第7次5か年計画」(2016/17~2020/21年度)において、都市機能の強化に向けた戦略として、包括的な開発計画の策定、中央から地方への権限移譲、都市自治体の能力強化による良質なサービスの提供等を掲げている。また、同計画では、統合排水インフラの整備、効果的な廃棄物管理システムの整備、財政制度や予算策定プロセスの改善等の必要性が指摘されている。
我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは、近年の経済成長を背景に都市の人口が急増し、水不足、水質汚濁、廃棄物問題等の都市環境問題が深刻化している状況を踏まえ、我が国は2018年2月に策定した「国別開発協力方針」において、今後の対バングラデシュODAの重点目標として、(a)中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化(質の高い運輸・交通インフラの整備による人とモノの効率的移動の促進、発電所・送配電網整備等による電力・エネルギーの安定供給等)、(b)社会脆弱性の克服(貧困削減、初等教育、母子保健、安全な飲料水の供給などSDGsの達成に貢献、防災・気候変動対策等)を掲げている。
 本計画は、対象4都市において、インフラ整備と都市開発に係る行財政能力強化を一体的に行うことにより、都市機能の改善を通じて対象都市の経済発展を図るという観点から上記(a)に合致するとともに、住民の生活向上にも寄与することから、上記(b)にも資するものである。
 また、2014年の日・バングラデシュ首脳会談では、両首脳間で経済インフラの開発、投資環境の改善、連結性の向上を柱とする「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の推進に合意しており、本計画は、今後同国経済を牽引し得る各都市のインフラ整備を通じて、同構想の経済インフラ整備と投資環境の改善に寄与するものであり、高い外交的重要性を有する。

(2)効率性

 対インドネシア円借款「地方インフラ整備事業(II)」の事後評価結果等から、小規模分散型の案件では、体系的なマネジメントシステムの構築とその適切な運用が重要であり、特にフィールドレベルから中央への階層的な責任分担関係の明確化や、縦横の関係機関の調整が重要であるとの教訓を得ている。
 本計画では、上記教訓を踏まえ、対象都市の開発等の上位計画から個別事業のフィージビリティスタディ、予算承認・執行、事業実施管理の各段階における中央政府及び対象都市自治体の役割と責任を明確にし、調整機能強化のための支援を行うことを審査にて合意済みである。また、地方行政技術局本部内においてプロジェクト実施ユニットを設立し、各セクターの横断的事項に係る協議や事業全体の進捗管理及びモニタリングを行う。

(3)有効性

 本計画によって、対象都市の経済発展及び住民の生活環境向上を通じ、中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与することが期待される。なお、行財政能力改善及び道路関連施設等に係る基準値及び目標値については、サブ・プロジェクトが確定した際に設定する予定。 

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府からの要請書、バングラデシュ国別評価報告書(第三者評価・2009年度)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る