ODA(政府開発援助)

令和2年8月27日

評価年月日:令和2年8月7日
評価責任者:国別開発協力第二課長 江碕 智三郎

1 案件概要

(1)供与国名

 バングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」という。)

(2)案件名

 ダッカ都市交通整備計画(IV)

(3)目的・事業内容

 ダッカにおいて、軌道系大量輸送システムである都市高速鉄道(MRT6号線)を建設することにより、ダッカ都市圏の輸送需要に対応するとともに、交通混雑の緩和を図り、もってダッカ都市圏の大気汚染の抑制及び同国全体の経済発展を通じて、中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 鉄道構造物建設、車両基地建設、車両調達、電気・信号システム敷設
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
721.94億円 0.65% 30(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる鉄道セクターに当たるため、カテゴリAに該当する。
 本計画に係る環境影響評価報告書は、ダッカ都市交通公社により作成され、2011年7月にバングラデシュ環境森林省環境局により承認済み。なお、環境許認可証明書は2020年7月に更新されている。
汚染対策
 建設中に発生が予見される粉じんの予防として定期的な散水を行う。また、建設中の騒音・振動の緩和策として、建設機材に対する消音機の装備、遮音壁の設置を行う。さらに、供用時の駅・車両基地からの廃水は、廃水処理設備によって適切に処理が行われる。
自然環境面
 本計画対象地域は、国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当せず、自然環境への望ましくない影響は最小限と想定されている。
社会環境面
 本計画では、施設建設の大半が既設道路幅を利用し、用地取得は57.5ヘクタール、被影響住民は1,499名(うち61名が車両基地周辺、1,438名が鉄道沿線)が想定されているが、非自発的住民移転は生じない。また、国内法及びJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画(RAP)に基づき、当該土地所有者に対して補償が行われている。なお、本計画に係る住民協議では、事業概要、計画路線、自然環境及び社会環境に影響を及ぼすと想定される項目への対応策、RAP案の概要、補償内容の説明がなされたが、特段の反対意見は確認されていない。
その他・モニタリング
 本計画では、工事中は実施機関による監督の下でコントラクターが、供用時は実施機関が、それぞれ大気質、騒音・振動、水質、用地取得・住民移転等の進捗状況についてモニタリングを行う。また、施工監理コンサルタントが雇用する外部モニタリング機関により、社会配慮面のモニタリングが行われる。
外部要因リスク
 特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 首都ダッカは、1990年から2015年にかけて人口が662万人から1,760万人まで増加しており(国連人口部、2018年)、人口増に伴う急激な交通需要の増大により慢性的な交通渋滞、大気汚染等を引き起こしている。これにより年間3,868百万米ドルの経済損失(バングラデシュ水資源開発庁他、2013年)が発生するなど、経済社会発展の大きなボトルネックとなっているとともに、深刻な交通渋滞に伴い長時間にわたり排出される排気ガスによる住民への健康被害も懸念されている。
 こうした中、同国政府は、これらの課題解決に向けて、「第7次5か年計画」(2016/17~2020/21年度)において、ダッカ都市圏における交通渋滞の緩和の重要性を掲げ、都市交通マスタープラン「ダッカ都市交通戦略計画」(2016年8月改訂)において、公共交通網として大量高速輸送システム(以下、「MRT」という。)5路線及びバス高速輸送システム2路線の整備を計画している。このうち、本計画で建設するMRT6号線は、首都ダッカを南北に走行する路線として、MRT1号線と同5号線に接続することで、公共交通ネットワーク化を通じた交通の円滑化を図るものであり、交通需要、事業性、環境社会配慮等の観点から、「ダッカ都市交通戦略計画」の中での優先開発事業として位置づけられている。
我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは、人口の約4割弱が依然として貧困状態にあり、電力、運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ、我が国は2018年2月に策定した「国別開発協力方針」において、今後の対バングラデシュODAの重点目標として、(a)中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化(質の高い運輸・交通インフラの整備による人とモノの効率的移動の促進、発電所・送配電網整備等による電力・エネルギーの安定供給等)、(b)社会脆弱性の克服(貧困削減、初等教育、母子保健、安全な飲料水の供給などSDGsの達成に貢献、防災・気候変動対策等)を掲げている。
 本計画は、運輸交通網の整備という観点から上記(a)に合致するとともに、公共輸送の促進を図り、温室効果ガス排出削減に寄与することから、上記(b)に含まれる防災・気候変動対策にも資するものである。
 また、2014年の日・バングラデシュ首脳会談において両首脳は、経済インフラの開発、投資環境の改善、連結性の向上を柱とする「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の推進に合意しており、本計画は同構想の下、経済インフラ開発及び連結性の向上に貢献する案件であるとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現にも寄与する案件として外交的重要性が高い。

(2)効率性

 対フィリピン円借款「メトロマニラ大都市圏交通混雑緩和計画」の事後評価等から、都市鉄道事業は、初期投資額が大きく、料金収入だけでの事業実施が困難であり、政府からの資本投入や補助金の助成が不可欠で、事業実施機関の財務健全性を担保するために、事業形成段階で詳細な財政計画や政府支援の行動計画の立案が必要であるとの教訓を得ている。また、対インド円借款「デリー高速輸送システム建設I~IV」等、過去のインドにおける都市鉄道案件の事後評価等からは、収益性確保の前提が十分に確保されているかどうかを確認し、不十分な場合はそれを促す必要があると指摘されている。
 本計画においても、初期投資額が大きく、財務健全性の確保が必要であることから、上記教訓を踏まえ、適切な料金設定を行うとともに、円借款の一部は転貸ではなく借入国政府出資としている。また、組織開発支援コンサルティング・サービスにおいて、ダッカ都市交通公社の財務計画を策定済みである。さらに、運賃収入に加え、非鉄道収入を確保するために、公共交通志向型開発による開発収入、駅構内の売店設置によるテナント収入、広告収入等の事業計画の策定と実施を支援する予定。

(3)有効性

 事業完成2年後の2024年には、現在、バスで約2時間以上かかっているウットラ北・モティジール間(約20キロメートル)の所要時間が、約36分に短縮される見込みである。本計画は、ダッカ都市圏の輸送需要に対応するとともに、交通混雑の緩和を図り、もってダッカ都市圏の環境改善を図るものである。本計画を通じて、バングラデシュ全体の経済発展が促進され、中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府からの要請書、バングラデシュ国別評価報告書(第三者評価・2009年度)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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