ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年12月20日
評価年月日:令和元年10月15日
評価責任者:国別開発協力第三課長 黒宮 貴義
1 案件名
1-1 供与国名
エチオピア連邦民主共和国(以下「エチオピア」という。)
1-2 案件名
アディスアベバ市における道路維持管理機材整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,エチオピアの首都アディスアベバ市において,アディスアベバ市道路公社の道路補修機材を整備することにより,市内道路の適切な維持管理及び道路状況の改善を図り,もって同市の経済活性化及び社会サービスへのアクセス改善を通じた同国のインフラ開発に寄与し,質の高い経済成長の促進を支援する。
供与限度額は13.86億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリはCであり,環境への望ましくない影響は最小限と判断される。
- (2)事業実施の前提条件として,事業実施機関が道路補修機材の維持管理費を確保する必要がある。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)エチオピア(一人あたり国民総所得(GNI)790ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
- (2)同国の首都アディスアベバ市では,道路総延長約3,800キロメートルのうち舗装道路は約1,000キロメートル(約26%)に過ぎず,市内の交通はその舗装道路に集中するため交通渋滞が慢性化しており,結果として舗装の劣化や損傷が深刻化している。このような劣悪な交通事情は,同国経済の成長を阻害するとともに,市民の医療や教育等社会サービスへのアクセス低下を招いており,急速に都市化が進む同市の社会的安定を損なう深刻な課題となっている。
- (3)同国政府は,国家開発計画(成長と移行計画II)に基づき,定期的な道路点検・データ管理,維持管理計画の策定等を推進している。また,同市は2017年から2027年までの長期開発計画(Addis Ababa City Structure Plan)を策定しており,その中で市内道路の新規整備の推進及び維持管理の強化,交通弱者に配慮した道路インフラの推進,包括的な市内道路網の整備等を目標として掲げ,市内の道路整備を進めている。
- (4)このような状況の下,同市の道路建設及び維持管理を所掌するアディスアベバ市道路公社は,市内の既存道路の維持管理を優先課題としており,2020年を目途に道路維持機材管理センターの新設を計画している。しかし,保有機材のうち20%以上は故障により使用不能であり,また,全保有機材のうち約40%は耐用年数を超過している等,現在使用可能な機材も老朽化が進んでいることから,道路の適切な維持管理のための道路維持管理機材の充実が喫緊の課題となっている。
- (5)このような状況の中,同国政府(同公社)から我が国政府に対し,道路維持管理機材整備等に関する支援の要請がなされた。
- (6)本計画は,本年8月に開催されたTICAD7において,我が国の取組として表明した「質の高いインフラ投資」を推進する貢献策として位置付けられ,我が国の対エチオピア国別開発協力方針における重点分野の一つとして定めている「インフラ開発」にも合致するものである。また,本計画は,道路維持管理に必要な建設機材の整備を通じ,同市の道路状況の改善に資するものであり,SDGsゴール9(強靱なインフラ構築)及びゴール11(住み続けられるまちづくり)にも貢献すると考えられる。さらに,同市はアフリカ連合(AU)や国連アフリカ経済委員会(UNECA)の本部が置かれるなどアフリカ外交の中心地の一つでもあり,本計画の実施は,同国の安定した経済成長及び二国間の友好関係強化に寄与するとともに,アフリカ地域外交における我が国のプレゼンスの更なる向上に貢献すると考えられることから外交的意義も高い。
2-2 効率性
我が国は技術協力「アディスアベバ市道路維持管理能力向上プロジェクト」(2015~2019年)を通じ,同市内道路の維持管理に係る同市道路公社の実施体制構築,人材育成及び計画策定能力向上を支援していることから,本計画で整備する機材を十分に活用した質の高い維持管理の実施が期待できる。
2-3 有効性
本計画の実施により,2019年の実績値を基準値として事業完成3年後の2024年の目標値と比較すると,主に以下の成果が期待される。
- (1)道路維持管理の効率的な実施により,同市内の道路整備・補修距離延長が113キロメートル/年から140キロメートル/年に増加する。
- (2)同市道路公社が保有する道路維持管理機材の稼働率が,79%から88%に向上する。
- (3)同市内道路の整備により,交通安全性の向上及び輸送効率の改善に伴う経済活性化に資するとともに,同市民の社会サービス(医療,教育等)へのアクセスが改善される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)エチオピア政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)エチオピア国別評価(2009年度/第三者評価)