ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年12月17日
評価年月日:令和元年6月10日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康
1 案件名
1-1 供与国名
モザンビーク共和国(以下「モザンビーク」という。)
1-2 案件名
ザンベジア州中学校建設計画
1-3 目的・事業内容
ザンベジア州において,モデル校となる中学校4校(付帯施設を含む)の新設及び教育機材(机,椅子,理科実験器具等)の整備を行うことにより,中学校における学習環境の改善を図り,もって対象地域における中等教育へのアクセス及び質の向上に寄与する。
供与限度額は22.83億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画の環境社会配慮カテゴリー分類はCであり,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
- (2)事業実施の前提条件として,対象サイトの整地,電気引込工事,水源及びアクセス道路の確保等,先方負担事項が遅滞なく実施される必要がある。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)モザンビーク政府は,経済開発及び貧困削減を実現するために人間開発を重視しており,その中でも教育分野は,同国政府が定めた「政府5か年計画(Government’s Five-Year Plan 2015~2019)」において重点分野に位置づけられるなど,同国としても特に重視している分野であり,今後の同国の発展を支える人間開発のためには,教育アクセス及び質の向上を充実させることが重要となっている。
- (2)同計画においては,中学校(第8~10学年)の総就学率を2019年までに50%に引き上げることを目標に掲げている。当国の中学校総就学率は17%(2005年)から40%(2017年)と改善傾向にある一方,生徒数の増加に伴い中学校の教室数は不足し,多くの中学校が昼間2~3部制で運営されている。さらに,既存の校舎には体育館や科学実験室などの設備も十分に整っておらず,中等教育へのアクセス及び質の改善の両面が引き続き大きな課題となっている。
- (3)その中でも同国中北部に位置するザンベジア州は,国内でも人口規模が大きい(10州中2位)うえに,最貧困州(貧困率10州中1位)である。教育面においては,同州の中学校総就学率は25%と全国平均40%(2017年)を大きく下回り,更には1教室当たりの生徒数が64名(2016年)と,全国平均(59名)より高く,十分な施設を備えた中学校がほとんど存在していないなど,教育アクセス及び質の両面において大きな問題を抱えている地域である。
- (4)このような状況の中,モザンビークの教育行政を所掌する教育人間開発省は,ザンベジア州における中等教育へのアクセス及び質の改善を図るため,同州への中学校及び関連施設の新設を日本政府に対して要請してきた。
- (5)我が国の対モザンビーク国別援助方針においては,重点分野として基礎教育へのアクセス改善のための支援を含む「人間開発」を掲げており,本計画はこれに合致する。また,本計画の対象地域であるザンベジア州は,我が国がTICAD VI(2016年8月)で表明した総合広域開発の三重点地域の一つであるナカラ回廊に位置している。更には,日・モザンビーク首脳会談(2017年3月)の際に発出された共同声明において,両首脳は青少年の人材育成を最重要課題と認識しており,本計画はこれらに資するものであることから外交的意義は大きい。
なお,本計画は,モデル校の建設を通じて教育アクセス及び質の改善に資するものであり,SDGsゴール4(教育)に貢献すると考えられることから,本計画の実施を支援する必要性は高い。
2-2 効率性
中学校カリキュラムの実施に必要な機能をコンパクトな形で備えた標準モデルとなることを目指し,教育家具及び教育機材は必要最低限の整備とした。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下の成果が期待される。
- (1)中学校4校を新設することにより,46教室が新規に開設され,年間4,416人の生徒が授業を受けることができる。
- (2)充実した教育が可能となる学校を新設することにより,生徒の学習意欲及び教育の質の改善に寄与する。
- (3)男女別棟トイレや更衣室の設置などジェンダーに配慮した整備により,女子生徒の通学意欲の向上及び就学率改善に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)モザンビーク政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)