ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和2年4月9日
評価年月日:令和2年3月23日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋
1 案件概要
(1)供与国名
カンボジア王国(以下「カンボジア」という。)
(2)案件名
国道五号線改修事業(スレアマアム-バッタンバン間及びシソポン-ポイペト間)(第二期)
(3)目的・事業内容
本計画は,首都プノンペンとタイ国境を結ぶ国道5号線のスレアマアム-バッタンバン間及びシソポン-ポイペト間において,既存道路の改修及び拡幅並びにバイパスの整備等を行うもの。
- ア
- 主要事業内容
- (ア)土木工事(既存道路の改修及び拡幅,バイパス道路建設,橋梁の新設等)
- (イ)コンサルティング・サービス(入札補助,施工監理等)
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 177.02億円 0.01% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下,「JICAガイドライン」という。)に掲げる道路セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに該当する。なお,本計画に係るEIA報告書は,2014年10月に取得済み。 - イ
- 用地取得及び住民移転
本計画では,約55.7ヘクタールの用地取得と772世帯の住民移転を伴うが,同国国内手続及び住民移転計画に沿って進められている。なお,住民移転に関する住民協議では,被影響住民から事業の実施に対する特段の反対意見は確認されていない。 - ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
カンボジアにおいては,鉄道整備が遅れており,道路輸送が国内輸送の中心的役割を果たしている。また,同国はタイ及びベトナムに挟まれ,2010年にASEAN首脳会合において承認された「ASEAN連結性マスタープラン」で連結性強化の取組が進められている南部経済回廊の中央に位置し,地域的な物流の中継基地となることが期待されている。同国の運輸インフラは1991年の内戦終了時から我が国や世界銀行,アジア開発銀行等,国際社会の支援を得て修復が進められており,道路・橋梁インフラの基幹部分については修復・整備が一巡しつつあるが,内戦後の応急修復箇所の劣化や幅員不足等の箇所もあり,今後の経済発展に伴う国内・国際物流の増加に対応するためには既存道路の改修が課題となっている。
中でも国道5号線は,同国の基幹道路であるとともに,アジア・ハイウェイ1号線及び南部経済回廊の一部であり,メコン地域の産業大動脈として機能することが期待されている。本計画の対象区域は,応急的な修復が行われてきているものの,道路の品質は低く,交通量も増加傾向にあるため,輸送能力の増強及び輸送効率の改善が喫緊の課題となっている。
このような状況の中,同国政府は,「国家戦略開発計画2019-2023年」において引き続き優先課題として運輸インフラの修復と整備に取り組むことを掲げており,計画期間内に1桁道路の700km以上を簡易舗装から4車線のアスファルト舗装に改修,整備,拡張することを目標としている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国は,対カンボジア国別開発協力方針(2017年7月)において,「産業振興支援」を重点分野の一つとして位置付けており,地域の連結性強化と産業振興の観点から,ハード及びソフト両面における物流網(道路,港湾,税関など)の強化に取り組むとしている。また,JICA国別分析ペーパー(2014年3月)においても,ベトナム及びタイとの輸送力強化のためのインフラ整備が重点課題であると分析しており,本計画は我が国の開発協力方針に合致するものである。さらに,本計画は,インフラ開発を通じたメコン域内の連結性強化に資するものであり,SDGsゴール9(強靱なインフラ)にも貢献すると考えられることから,本計画の実施を支援する必要性は高い。
(2)効率性
「道路分野における環境社会配慮に関する実施能力向上プロジェクト」により,実施機関の維持管理能力の向上に係る協力を実施しており,実施体制面,技術面についての特段の懸念はない。
(3)有効性
本計画の実施により,事業完成2年後(2024年)には,2019年比で以下のような成果が期待される。
- ア
- 定量的効果
- (ア)スレアマアム-バッタンバン間の所要時間が,185分から145分に短縮される。
- (イ)シソポン-ポイペト間の所要時間が,63分から50分に短縮される。
- イ
- 定性的効果
タイとカンボジア間の物流改善による投資環境整備促進等に寄与する。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,カンボジア国別評価報告書(第三者評価/2017年度)
JICAガイドライン,その他JICAから提出された資料。
本計画に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。