ODA(政府開発援助)

令和元年8月22日

評価年月日 平成31年4月16日
評価責任者:国別開発協力第二課長 門脇仁一

1 案件名

1-1 供与国名

タジキスタン共和国(以下「タジキスタン」という。)

1-2 案件名

ドゥシャンベ-ボフタル道路におけるキジルカラ-ボフタル間道路改修計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,国際幹線道路の一部であるキジルカラ-ボフタル間道路の改修を実施することにより,安全かつ円滑な交通の確保と物流改善を図り,もってタジキスタンの経済発展に寄与するもの。
 供与限度額は32.32億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は,JICA環境社会配慮ガイドラインにおいて,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
  • (2)タジキスタンの政情,治安が悪化しないこと。想定外の自然災害や物価高騰が発生しないこと。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)タジキスタン(一人あたり国民所得990ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低所得国に分類されている。
  • (2)タジキスタンでは,国内の貨物輸送の約92%,旅客輸送の約98%を道路交通に依存しており(出典:世界銀行),道路交通網が国内輸送の中核を担ている。また,国内の物流だけでなく周辺国との交易についても道路交通網が利用されており,幹線道路は同国経済の主要な機軸となっている。特に首都ドゥシャンベと第二の都市ボフタルを結ぶ道路は,アフガニスタン・イスラム共和国(以下,「アフガニスタン」という。)国境に繋がっている主要幹線道路であることから,アジアハイウェイ7号線の一部を構成するだけでなく,アジア開発銀行(ADB)の主導する中央アジア地域経済協力(CAREC)で定められた,中央アジアからアラビア海まで南北に繋ぐ国際回廊(CAREC6)の一部として,国際的にも重要な道路の一つとなっている。
  • (3)一方,国内の道路交通網の多くは旧ソ連時代に建設されたが,1991年の独立後の内戦及び経年による損傷・老朽化が進行し,手入れの行き届かない危険箇所等に起因する渋滞・通行止めなどが頻発し,経済活性化の阻害要因となっている。特に,ドゥシャンベ-ボフタル道路も,既存の2車線道路の舗装状態は劣悪であり,早期の改修が喫緊の課題である。
  • (4)同国政府の長期戦略「2030年までの国家開発戦略」(NDS:National Development Strategy to 2030)においては,持続的な経済成長の観点から,国際幹線道路の整備及び運輸交通分野の制度改善が必要とされている。
  • (5)本計画は,ドゥシャンベ-ボフタル道路(全長約82.0キロメートル)のうち一部区間を改修するものであり,今後10年間の交通量の伸び率が4%を超えると想定される同路線の改修及び4車線拡幅は同国の経済活性化に向けて必要不可欠であり,上述の長期戦略を具現化するものとして位置づけられている。
  • (6)タジキスタンは,アジアと欧州,ロシア連邦と中東を結ぶ地域に位置しており,アフガニスタンと国境を接し,テロの防波堤としての役割を担う同国の安定は,地域において活発化しているイスラム過激派勢力の抑制にもつながり,地域全体の安定に資することとなる。
  • (7)本計画は,同国における最も重要な国際幹線道路の一つを改修することにより,安全かつ円滑な交通の確保を図り,物流改善による地域経済の活性化・安定化に貢献し,もって同国の経済の発展に寄与するものであり,同国の開発政策及び我が国の国別開発協力方針(重点分野「経済インフラ整備」)と合致する。
  • (8)2015年10月の安倍総理大臣の同国訪問時に発出した共同声明において,同国の質の高いインフラ投資の推進が必要不可欠であることが確認されているほか,2017年5月に開催された「中央アジア+日本」対話・第6回外相会合においても,運輸物流分野の協力推進が主要テーマの一つに挙げられた。本計画は,こうしたハイレベル対話の成果を具体化するものであり,外交的な意義も大きい。

2-2 効率性

  • (1)協力準備調査の段階において十分に必要な情報を収集及び検討し,適正な事業規模のもと,その結果を十分に分析・評価した上で舗装設計を行う等,品質,安全等の観点から必要となる予算を確保した計画としている。

2-3 有効性

 本計画の実施により,2018年実績値と事業完成3年後の2024年目標値を比べて,以下のような成果が期待される。

  • (1)キジルカラーボフタル区間を通過する交通量が15,560(台/日)(2018年実績値)から,21,100(台/日)(2024年)に増加する。
  • (2)キジルカラーボフタル区間を通過する旅客数が約7万(人/年)(2018年実績値)から,約8万5千(人/年)(2024年)に増加する。
  • (3)キジルカラーボフタル区間を通過する貨物量が約7,500(トン/日)(2018年実績値)から,約1万(トン/日)(2024年)に増加する。
  • (4)物流の改善,交通の安全性や利便性向上,輸送コスト削減等により,経済活動が活性化される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)タジキスタン政府からの要請書
  • (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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