ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年8月20日
評価年月日:令和元年6月11日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康
1 案件名
1-1 供与国名
ウガンダ共和国(以下「ウガンダ」という。)
1-2 案件名
カンパラ市交通管制改善計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,首都カンパラ市において,交通管制センター建設,関連機材(交通管制卓,信号制御装置,サーバー等)の整備及び交差点の信号設置・改良工事を行うことにより,同市の円滑で安定的な交通の確保を図り,もって大カンパラ都市圏の持続的な発展とウガンダの経済成長を実現するための環境整備に寄与する。
供与限度額は25.48億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
- (2)事業実施の条件として,先方政府による支障物件の移設が施工入札公示までに完了することが必要である。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ウガンダ(一人当たり国民総所得600ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
- (2)同国では,鉄道網が機能していないため,貨物及び旅客運搬の92%以上が道路を通じて行われており,経済開発上,道路が非常に重要な位置を占めている。同国の人口(4,149万人(2016年,世界銀行))の約1割が集中する大カンパラ都市圏では,交通渋滞が深刻な問題となっており,これに伴う経済損失が経済開発への大きな障害となっている。また,同都市圏の主要幹線道路における日交通量の伸び率は,1997年から2010年にかけて平均して約12%となっているほか,同都市圏の交通量(713,855台/日)のうち約80%(569,000台/日)がカンパラ市内に集中し,市内の主要交差点では容量を超える車両の流入が続いている。さらに,同市内の交差点は数か所設置された信号機と警察による交通整理に頼らざるを得ず,増大する交通量に対応できていない。
これらの状況により,郊外から市中心部に流入する通勤・通学交通による朝夕の渋滞は深刻なものとなっており,同市中心部の交通改善が喫緊の課題となっている。 - (3)このような状況の下,同国政府は,第二次国家開発計画(Second National Development Plan: NDPII,2015/16年~19/20年)において,大カンパラ都市圏の交通改善を掲げており,カンパラ市都市交通計画(Greater Kampala Metropolitan Area Transport Master Plan,2008~2023)においても,主要幹線道路の拡張及び高規格化,交差点改良(信号機設備を含む)等からなる道路網の改善をコンポーネントの一つに位置付けている。そのため,同国政府は我が国に対して,現在実施中の技術協力「カンパラ市交通流管理能力向上プロジェクト」と連携し,交通管制センターの整備を通じた日本の高い技術の活用及び日本製機器の供与に係る支援を要請した。
- (4)本計画は,同国の開発課題及び開発政策並びに我が国の国別開発協力方針(重点分野「経済成長を実現するための環境整備」)に合致し,カンパラ市中心部の交通改善を通じて大カンパラ都市圏の持続的な発展と生活水準の向上に資するものであり,SDGsゴール9(産業と技術革新の基盤をつくる)及びゴール11(住み続けられるまちづくり)にも貢献すると考えられる。また,本邦技術である面的制御(MODERATO)方式による交通管制の導入が予定されており,日本技術輸出の観点からも,無償資金協力により,本計画の実施を支援する必要性は高い。
2-2 効率性
- (1)本計画で導入する中央システム機器について,必要性と施工効率を勘案し,ウガンダ政府とも調整の上,適正な規模への絞り込みを行った。
- (2)現地調達が困難な交通管制関連機器等は本邦調達だが,一般的な資機材は現地調達とすることでコスト縮減を図る。
- (3)2015年から技術協力「カンパラ交通流管理能力プロジェクト」及び本計画のソフトコンポーネントを通じ,交通管制及び信号機の維持管理に係る技術指導を行い,組織的な維持管理体制の構築を支援し,効率的かつ持続可能な技術移転を図る。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果:2025年(事業完成3年後)に,渋滞が顕著な区間の平均走行速度が基準年(2017年)実績値より約4キロメートル毎時,1日あたりの平均利用者数が約15万人,それぞれ増加する見込み。
- (2)定性的効果:市内交通・物流の円滑化,及び信号設置による交通安全性の向上が可能となる。また,大カンパラ都市圏の持続的な発展と生活水準の向上につながる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ウガンダ政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)