ODA(政府開発援助)

令和5年11月2日

評価年月日:令和5年7月5日
評価責任者:国別開発協力第一課長 石丸 淳

1 案件名

1-1 供与国名

 カンボジア王国(以下、「カンボジア」という。)

1-2 案件名

 全国電子基準点網整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、カンボジア全土において、測量の迅速化や高精度な測位が可能となる電子基準点網の整備及びデータセンターの機材整備を行うことにより、土地登記や土地取引の行政サービス強化を図り、もって同国の都市生活環境の整備を通じた生活の質向上に寄与するもの。
 供与限度額は、13.38億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)カンボジア(一人当たり国民総所得(GNI)1,550ドル(2021年))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
  • (2)メコン地域の中心部に位置するカンボジアは、地域の連結性と域内の格差是正の鍵を握る国として重要であり、我が国は、カンボジア内戦後の和平・復興・開発への貢献や活発な要人往来、国際社会における協力等を通じ、同国との関係を強化してきた。1991年のパリ和平合意以降は、我が国初の本格的なPKOを派遣するなど、同国の復興・開発に積極的に関与しており、本年には両国関係が「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされるなど良好な二国間関係を築いてきている。
  • (3)一方で、カンボジアでは、2001年の土地法改正により私有地に対する権利保護への政府責任が定められ、同国全土を対象に土地の境界測量の実施、土地登記簿への所有権登記、土地登記システムの運用を開始した。土地登記は所有権の明確化や土地開発の基礎をなすものであるが、同国では現在でも一か所ごとに測量機材を使用し位置を求める方式が主流となっているなど、測量技術の近代化が進んでおらず登記の遅れが生じている。そのため、所有権をめぐる問題や、不動産取引の停滞及び新規の開発事業の遅延を引き起こしており、政府による土地取引税の徴収機会の損失にもつながっている。また、近年の堅調な経済成長に伴い、更なるインフラ整備が求められている中、開発用地の測量・地形図作成・土木工事等の効率的な実施が課題となっている。
  • (4)カンボジアが直面するこうした課題に対し、衛星測位を利用し常時正確な位置情報を利用できる電子基準点を基に測量を行うことにより、測量作業を効率化する手法が有効である。加えて、電子基準点の設置により高精度な測位が可能となり、農機の自動制御等、様々な分野での新たな高精度測位サービスによるDXビジネスの創出も期待できる。こうした背景を踏まえ、カンボジア政府からの要請に応じ2021年から我が国の技術協力「土地管理及びインフラ開発のための電子基準点整備プロジェクト」により先行して電子基準点(5点)の導入等を実施してきており、その効果を同国全土に波及させるためには更に全国をカバーする電子基準点の整備が不可欠となっている。2022年3月の日カンボジア首脳会談後に発出された共同声明において、両首脳は、デジタル分野での協力強化の重要性を確認しており、デジタル分野における支援を積極的に実施することは、二国間関係の強化や同国の民主的発展を後押しするための基盤造りにつながり、外交的意義が大きい。
  • (5)また、我が国の「インフラシステム海外展開戦略2025」(2020年12月経協インフラ戦略会議決定)では、我が国の測位システム方式普及に向けた電子基準点の設置や運用支援、高精度測位サービスを推進するとしているほか、「第3期地理空間情報活用推進基本計画」(2017年3月閣議決定)では、重点施策の一つとして「電子基準点網及び準天頂衛星システム「みちびき」を活用した高精度測位サービスの海外展開」を掲げており、本計画はこれらの計画の実現に資する。
  • (6)加えて、我が国の対カンボジア国別開発協力方針(2017年7月)では、「生活の質向上」を重点分野の1つに位置づけており、都市生活環境整備に資する分野での支援に取り組むとしており、本計画はその方針に合致するほか、SDGsゴール9(強靱なインフラの構築、包摂的で持続可能な工業化の推進とイノベーションの推進)及びゴール11(包摂的、安全、強靱で、持続可能な都市と人間住居の構築)にも貢献することから実施する必要性は高い。

2-2 効率性

 我が国は、技術協力「土地管理及びインフラ開発のための電子基準点整備プロジェクト」(2021~2023年)により先行して電子基準点5点を設置し、データ管理及び配信についての技術移転やそのマニュアルの整備を行っており、また、運営維持管理に係る計画策定や体制構築に関し助言を行っており、それらの知見が本計画にも活かされるなど効率性は高い。

2-3 有効性

  • (1)定量的効果
     本計画の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成3年度の2028年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。
    • ア 電子基準点の数が、5点から99点に増加する。
    • イ 電子基準点により測量するエリア(半径40キロメートル)が、5,024平方キロメートル(国土の2.8%)から177,869平方キロメートル(国土の98.3%)に増加する。
    • ウ 電子基準点のユーザー数が、338件から1,200件に増加する。
  • (2)定性的効果
     測量作業の迅速化及び効率化や土地取引に係る行政サービスの改善、これに基づくインフラ整備の促進や、高精度の位置情報を利用した活動の促進(農機の自動運転、ドローン配送等)が見込まれる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)カンボジア政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)カンボジア国別評価報告書(2017年度・第三者評価)
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