ODA(政府開発援助)

令和5年8月16日

評価年月日:令和5年7月14日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一

1 案件名

1-1 供与国名

 マダガスカル共和国(以下、「マダガスカル」という。)

1-2 案件名

 地域中核病院医療機材整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、マダガスカルの主要地方都市(4都市)の7つの中核病院に対して、医療機材を整備することにより、診断・治療体制の強化及びアクセス改善を図り、もって同国地方部での医療サービスの改善に寄与するもの。
 供与限度額は、11.43億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限かあるいはほとんどないと考えられる。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)マダガスカル(一人当たり国民総所得(GNI)500ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
  • (2)マダガスカルは、広大で降雨に恵まれた国土を有し、鉱物・石油資源や水産資源にも恵まれており、一層の開発が期待されている。また、地政学的にアジアとアフリカとの間の主要な海洋航路上にあり、戦略的要衝に位置する。同国は、レアメタルを含む鉱物資源が豊富であり、特にニッケルについては、日系企業が大規模な精錬事業を行っており、同国は我が国にとってニッケルの最大の輸入相手国となっている。
  • (3)マダガスカルでは、感染症による死者数に加え、非感染性疾患(Non-Communicable Diseases:NCDs)による死者数も増加しており、近年脳卒中が最多の死亡要因(2019年66.6(対人口10万人)、WHO)になる等、NCDsも含めた診断・治療体制を構築する必要が生じている。感染症やNCDsへの対応は、早期発見の上、治療へ繋げることが不可欠であるが、特に地方部における医療サービスはその体制とアクセスの両面で課題が多い。地方中核医療機関として位置づけられている大学病院(22か所)及び県病院(16か所)では、専門医を含む医療人材が一定程度配置されているものの、医療資機材の不足や老朽化により疾病を特定し、治療方針を決定するための精密検査を行うことが十分にできていない。そのため、地方部の患者は首都圏の病院を受診するため長時間かけて陸路移動しなければならず、移送費等金銭的な理由や所要時間等アクセスの問題により、適切な検査や治療を十分受けられない状況が生じており、NCDsも含めた各種疾患の早期発見・治療を行うための体制強化とアクセス向上が喫緊の課題となっている。
  • (4)こうした背景下、マダガスカル政府は、2030年までのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下、「UHC」という。)達成を目指し、保健セクターの重点課題として医療サービスの改善に取り組んでいる。また、マダガスカル保健省は保健セクター中期開発計画(2020-2024)において地方医療改革を優先事項と位置づけ、医療サービスの強化の一環として地方の中核的な大学病院や県病院の体制強化に取り組んでいる。
  • (5)我が国の対マダガスカル国別開発協力方針(2021年5月)では、大目標として「経済開発と社会開発のバランスの取れた持続的発展支援」を定め、小目標として「UHCの推進」を掲げており、医療サービスの改善を目的とした保健医療施設等の基盤インフラ・設備改善を支援するとしている。さらに、第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)において我が国は保健医療施設の整備、150万人のための保健医療サービスの拡充を表明しており、SDGsゴール3(人々の健康)にも寄与するところ、本計画を実施する必要性は高い。
  • (6)また、我が国とマダガスカルは、良好な二国間関係を背景に国際社会においても協力関係にあり、地政学的にアジアとアフリカの主要海洋航路上という戦略的要衝に位置する同国は、我が国が提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現する上で重要な役割を担っている。こうした点からもマダガスカルの開発ニーズ及び我が国の支援方針に合致し、同国の地方医療体制の脆弱性の解消に資する本計画を実施することは、同国の安定と更なる二国間関係強化の観点から重要である。

2-2 効率性

 マダガスカル政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。また、国別研修「医療機材管理・保守」(2021~2023年度)を通じ、対象病院の保守管理技術者に対して医療機材の維持・管理について能力強化を行い、整備機材の効果的な活用を図る。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2019年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2028年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。

  • (1)CT検査の年間実施件数が、1,205件から2,938件に増加する。
  • (2)X線検査の年間実施件数が、14,836件から16,818件に増加する。
  • (3)超音波検査の年間実施件数が、5,903件から8,861件に増加する。
  • (4)産科外来の年間受診者数が、689人から758人に増加する。
  • (5)帝王切開の年間実施件数が、2,097件から2,307件に増加する。
  • (6)地域中核病院に対して検査・治療用の機材が整備され、NCDsを含めた各種疾患の早期発見・治療体制が改善し、周産期医療を含む医療サービスへのアクセスが向上する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)マダガスカル政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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