ODA(政府開発援助)

令和5年6月22日

評価年月日 令和5年6月15日
評価責任者 国別開発協力第一課長 石丸 淳

1 案件概要

(1)供与国名

 カンボジア王国(以下、「カンボジア」という。)

(2)案件名

 地方道路連結性向上計画

(3)目的・事業内容

 本計画は、首都プノンペンとタイ国境を結ぶ国道五号線の沿線地域において、橋や道路排水施設を含む地方道路の改良及び拡幅により、当該地域における道路ネットワークの連結性強化、人々の社会経済活動へのアクセスの改善、気候変動への対応を図り、もって当該地域の安定的な社会経済開発に寄与するもの。

主要事業内容
  • 土木工事(既存道路の舗装改良及び拡幅・路肩の整備改良(約38路線、全長約530キロメートルを想定)、橋梁の架け替え、排水施設の整備、交通安全施設の整備)
  • コンサルティング・サービス
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
236.92億円 TORF+0.4% 30(10)年 アンタイド
  • (注)TORF(Tokyo Term Risk Free Rate)はLIBORの公表停止に伴い採用された、変動金利を表す際に用いられる金利指標。変動金利の下限金利は0.1%。コンサルティング・サービス部分は金利0.1%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA):本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月公布、以下「JICAガイドライン」という。)上、JICAの融資承諾前にサブプロジェクトが特定できず、かつそのようなサブプロジェクトが環境への影響を持つことが想定されるため、カテゴリFIに該当する。なお、サブプロジェクトはカテゴリAに該当する案件を選定しないことを選定基準としている。
外部要因リスク:特になし

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 国道五号線は、カンボジアの基幹道路かつ南部経済回廊の一部であり、我が国の円借款により改良を実施してきているが、その沿線地域においては地方道路が十分に舗装されておらず、道路舗装率が約9%と低水準にとどまっている。そのため、乾期には土埃による視界不良、雨季には豪雨や洪水による道路の寸断等が発生し、住民の生活に悪影響を及ぼしている。2009年から2019年の間に対象地域で発生した洪水では、1,500キロメートル以上の道路が損壊し、冠水による集落の孤立などの影響を受けた住民は延べ120万人を超えた。
 カンボジア政府は「第四次四辺形戦略」(2018年~2023年)の中で、「包括的かつ持続可能な開発」を重要課題として掲げ、地方道路の整備を含む地方開発を重視している。本計画で対象とする4州は、同国における一大穀倉地帯であり、農作物は農家が地域の集荷場まで運搬の上、そこから大型トラックにより国道五号線を通ってプノンペン等に輸送されている。本計画により国道五号線へのアクセスが改善することで、地域住民の生活環境の向上や経済活動の推進に資するほか、都市・地方間の格差是正にもつながる。我が国がこうした先方政府が引き続き重要視する分野において支援を行うことは、両国の更なる関係強化に資するなど外交的意義が大きい。
我が国の基本政策との関係
 我が国は、対カンボジア国別開発協力方針(2017年7月)において「産業振興支援」を重点分野に位置付け、地域の連結性強化と産業振興の観点から、ハード及びソフトの両面における物流網の強化に取り組むとしており、本計画は同方針に合致するほか、同国における道路ネットワークの改良により、物理的連結性を向上させるものであり、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現にも資する。また、本計画は、地方道路の改良を通じて同国内の連結性向上及び沿線住民の生活環境の改善に資するものであり、SDGsゴール1(貧困の撲滅)、ゴール3のターゲット3.6(道路交通事故による死傷者の半減)、ゴール9(強靱なインフラ・工業化)及びゴール11(包摂的、安全、強靱で持続可能な都市と人間住居の構築)に貢献すると考えられる。
 さらに、本計画で対象とする地域は、カンボジアにおける一大穀倉地帯であり、特に米は、国内消費用だけでなく、同国の農産物輸出品目第一位となっていることから、本計画を通じて国道五号線へのアクセスが改善され、物流網が強化されることにより他国の食料安全保障にも資する。加えて、本計画は洪水被害に脆弱な地域の道路整備であり、洪水時も通行可能となるような嵩上げ及び横断管(カルバート)の改良や新設で洪水による通行止めを軽減するなどの対策を取るなど、気候変動適応にも資する。
 このように本計画は、国際社会における食料安全保障や気候変動対策に関する問題意識の高まりを踏まえた支援であり、我が国の基本政策と合致するものである。

(2)効率性

 我が国はこれまで、円借款「国道五号線改修計画(バッタンバン-シソポン間)(第一期)(第二期)」等を実施し、国道五号線の整備を支援してきた。本計画は、国道五号線の沿線地域を対象に地方道路の改良を行うものであり、上記事業との連結性の向上を図るものである。また、道路舗装・拡幅により、車両速度が上がることで事故の増加が懸念されるため、円借款附帯プロジェクト「幹線道路における道路交通安全改善プロジェクト」と併せ、交通安全教育・啓発活動を推進することにより、交通環境改善を図ることとしている。
 本計画の実施については、こうした事業との相乗効果が期待されることから、これらを通じて本計画の効率的な実施を図る。

(3)有効性

 本計画の実施により、国道五号線との連結性向上、対象路線の周辺地域における住民の生活環境の改善、対象路線の周辺地域における安定的な経済社会開発が期待される。なお、年間の日平均交通量等に係る基準値及び目標値については、全てのサブプロジェクト特定時にサンプルベースで設定する予定。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、カンボジア国別評価報告書(2017年度・第三者評価)JICAガイドライン別ウィンドウで開く、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後に公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本案件に関する事後評価は実施機関であるJICAが行う予定。

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