ODA(政府開発援助)

令和5年3月9日

評価年月日:令和5年2月22日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

ムンバイ湾横断道路建設計画(第三期)

(3)目的・事業内容

 マハラシュトラ州ムンバイ都市圏において、半島側のムンバイ中心部からムンバイ湾を挟んだ東郊のナビムンバイ地域を接続する全長約18kmの海上道路及び全長約4kmの陸上アプローチ道路を建設することにより、都市開発が計画されているナビムンバイ地域等への連結性向上を図り、もってムンバイ都市圏の経済発展に寄与するもの。なお、今次借款は輪切り三期目として事業完了までの資金需要に対応するもの。

主要事業内容
  • (ア)海上道路(約18km、片側3車線、上部工(PC箱桁及び一部鋼床版箱桁約4kmを含む)等
  • (イ)陸上アプローチ道路(約4km)等
  • (ウ)交通安全施設及び高度道路交通システム(ITS)等
  • (エ)コンサルティング・サービス(入札補助、施工監理等)
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
307.55億円 TORF+90bp 30(10)年 一般アンタイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる道路・橋梁セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため、カテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は、インド国内法上作成が義務付けられていないものの、実施機関であるムンバイ都市圏開発庁により、2015年11月に承認済みである。また、沿岸規制区域(Coastal Regulation Zone: CRZ)クリアランスは2016年1月に環境森林省より取得済みである。
用地取得及び住民移転
 本計画は、231世帯1,088人の非自発的住民移転及び66世帯の店舗等の移転を伴うため、同国国内法及びマハラシュトラ州政府の住民移転政策に準拠し、JICAガイドラインを満たすよう実施機関によって作成・承認された住民移転計画に沿って移転が進められている。また、108ヘクタールの用地取得を伴うが、約106ヘクタールはマハラシュトラ州都市産業開発公社(CIDCO)の所有地が実施機関に移管されており、残り1.8ヘクタールの用地取得がCIDCOによって進められている。土地に対しては、土地所有者との間の合意のもと、再取得価格に相当する金額で補償が行われる。住民協議では、移転地の場所や距離に関する意見が住民から提出されたが、実施機関から移転地の提供につき説明を行ったことにより、住民から基本的な合意が得られており、本計画に対する特段の反対意見は表明されていない。
外部要因リスク
 新型コロナウイルス感染症拡大の影響が生じうる可能性があることから、その対策として、実施機関が案件形成時及び案件実施時に取り組むべき全36項目の対策リストに合意済みである。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは近年急速な都市化が進む一方で、公共交通インフラ整備が十分に進んでいないことから、大都市圏では交通渋滞が深刻化し、経済開発への障害となっている。インド行政委員会が策定した国家活動三年計画(2017年4月~2020年3月)において、同国の経済成長の実現に必要なものとして運輸交通を第一に挙げ、道路等の運輸インフラ整備を進めるとしている。
 ムンバイ都市圏は、2011年時点で約1,840万人の人口を有する同国最大規模の都市圏であり、その中心であるムンバイ市は世界トップクラスの人口過密都市である。また、同市においては、近年急速な都市化に伴い、自動車登録台数が139万台(2006年)から282万台(2016年)に急増している。マハラシュトラ州政府は、同市が半島の先端に位置し、更なる開発余地が少ないことも踏まえ、同市に立地する産業を、ムンバイ湾を挟んで同市の対岸に位置するナビムンバイ地域へ移転誘致を行うとともに、ジャワハルラル・ネルー港の拡張、経済特区開発、ナビムンバイ新空港等の都市開発を進めてきた。しかし、同市とナビムンバイ間の交通手段は、ムンバイ湾を周回する道路と鉄道各1本のみであり、これら地域間の連結性の低さが課題となっている。
 このため、ムンバイ都市圏における運輸交通計画の将来像を示す「ムンバイ都市圏総合運輸交通計画(2008年)」において、同市とナビムンバイ地域を結ぶ海上道路建設が早期に実施すべき事業であるとされ、ムンバイ都市圏の経済成長の促進に不可欠な事業として位置付けられていることから、同国の開発政策とも高い整合性を有している。
我が国の基本政策との関係
 インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力及び運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえ、2016年3月に策定された我が国の対インド国別援助方針においては、今後の対インドODAの重点目標として、連結性の強化、産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。このうち道路分野は「連結性強化」に位置付けられており、本計画は同方針に合致するものである。
 また、本計画は、SDGsのゴール8(雇用・経済成長)、ゴール9(強靱なインフラ整備)、ゴール11(持続可能な都市づくり)及びゴール13(気候変動対策)にも資するものである。
 さらに、2022年3月の岸田総理大臣のインド訪問時には「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を更に前進させることで一致するなど、両国の関係強化が着実に進んでいる中、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進めるアジア最大の民主主義国であるインドの取組を支援することは、こうした日印二国間関係の更なる強化につながり、外交政策上の意義も高い。

(2)効率性

 雨季・乾季を考慮した施工時期の妥当性を実施機関及びコンサルタントが確認することで、妥当な工期で建設でき、自然災害による事業実施への影響を最小限に抑えることができることから、降水量が大幅に増大するムンバイの雨季を考慮した施工スケジュールを設定し、そのスケジュールに沿って事業を進める予定である。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成2年後(2025年)には、2015年比で以下のような成果が期待される。

定量的効果
  • (ア)対象区間(Sewri-Chirle)における旅客数が、新たに年間約4,600万人に増加する。
  • (イ)対象区間(Sewri-Chirle)におけるピーク時での所要時間が、最寄りの迂回路経由による約61分から約16分に短縮される。
定性的効果
本計画の実施により、ムンバイ都市圏の交通渋滞の改善、移動の定時性確保による利便性の向上、ムンバイ都市圏及びナビムンバイ地域の経済発展に寄与する。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価) JICAガイドライン別ウィンドウで開く、その他国際協力機構から提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。  

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