ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年12月8日
評価年月日:令和4年11月1日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一
1 案件名
1-1 供与国名
ルワンダ共和国(以下、「ルワンダ」という。)
1-2 案件名
キガリ市中央北部における給水サービス改善計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、キガリ市中央北部地域において、送配水施設を改善することにより、漏水量及び給水制限の削減による安定的な水供給を図り、もってルワンダの社会サービスの向上(安全な水・衛生サービスの持続的な提供)に寄与するもの。
供与限度額は、30.05億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ルワンダ(一人当たり国民総所得(GNI)850ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
- (2)首都キガリ市の水道普及率は約34%(ルワンダ国家統計EICV-V 2016/2017)となっており、1つの水栓を複数世帯が使用する場合もあり、実際に水道を利用している人口は統計値よりも多いと推定されるが、浄水場の処理能力や送配水能力の不足、漏水による給水量の不足、不適切な給水圧等により各家庭に十分な水量が供給されず、給水制限も頻発しているのが現状である。同国の都市人口は年3.2%(2021年)で増加しており(World Development Indicator、世界銀行)、同市においても人口増加に伴う水需要の急増が想定されている。これに対応するため、既に実施されている民間企業による水源開発に加え、中長期的には更なる水源開発が不可欠だが、短期的には給水量不足の主要因である漏水量の削減が喫緊の課題となっている。
- (3)また、同市の無収水率は38.8%(2019年)と高く、その約8割は漏水が原因であると考えられている。漏水の原因としては、施工の質の低さや管路の老朽化に加え、同市は標高差のある丘陵地帯に位置しており水圧管理が難しいため、管路網に高い水圧がかかって漏水が多くなることが挙げられる。さらに、既存の配水システムは送水と配水の分離や配水区域のブロック化がされていない等、配水管網の構造が複雑であり、水圧や流量を適切に管理できない状況にある。この高い無収水率に起因する財務的損失は、同市の水道を運営する水衛生公社の経営を圧迫し、給水サービスの質の低下の要因となっているため、早急な対策が求められている。
- (4)こうした中、同国政府は、国家開発戦略であるVision 2050(2020年)において、安全に管理された飲み水へのアクセス率を2035年に55%、2050年に99%にすることを目指している。また、その国家目標の達成に向け「キガリ市上水道改善整備マスタープランプロジェクト」(2019~2021年)において、キガリ市の2050年までの上水道整備マスタープランと15年間の投資計画を策定し、その中で本計画は最優先事業の一つとして位置付けられている。
- (5)我が国は、TICAD8において、水・衛生分野での取組として、30都市で上下水道整備・管理能力強化を支援することを表明しており、この計画は同表明を具体化するものである。また、我が国の対ルワンダ国別開発協力方針(2017年7月)では、重点分野「社会サービスの向上(安全な水・衛生サービスの持続的な提供)」において、安全な水供給を最重要開発課題と位置付け、包括的な支援が必要としており、本計画は同方針に合致するとともにSDGsゴール3(健康な生活の確保、万人の福祉の促進)及びゴール6(万人の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理の確保)にも貢献することから、実施する必要性は高い。
- (6)さらに、1994年のジェノサイド発生後、国際社会からの充実した支援の下で国内情勢の安定化を実現してきた同国は、近年7%前後の経済成長率を維持しており、内戦からの復興及び経済成長のモデル国として、不安定な状況が続く大湖地域における極めて重要な存在となっている。カガメ大統領は、近年、アフリカ連合(AU)改革を主導し、2022年8月に開催した第8回アフリカ開発会議(TICAD8)においても議論の中心となった民間投資の誘致に積極的であるなど、アフリカによるオーナーシップを尊重しつつアフリカ大陸全体の成長のために協力する我が国にとって重要なパートナーであり、同国との友好関係を一層強化することは外交的意義が高い。また、同国は、これまで国際社会での我が国の立場に賛同する親日国である。我が国が重視する安保理改革やTICADプロセスにも積極的であり、同国と良好な関係を維持・強化することは我が国の対アフリカ外交にとって極めて重要である。我が国は、同国ドナーコミュニティにおいて水・衛生分野の「アクティブ・パートナー」であり、同分野での貢献が期待されていることから、同国政府からの要望に応え本計画を実施することは二国間関係の強化に資する。
2-2 効率性
- (1)ルワンダ政府の要請を踏まえつつ、現地調査に基づき整備対象及び工法の検討等を実施し、必要かつ適切な事業規模とした。
- (2)具体的には、当初、9か所の配水池建設を想定していたが、それを配水池(1か所)と高架水槽(1か所)、減圧弁(2か所)、減圧水槽(4か所)に見直し、配水管(口径200ミリメートル以上)の調達先(タイからケニアへ)及び配水管の接合方法を変更することにより事業費を削減した。
2-3 有効性
本計画の実施により、2021年実績値と事業完成5年後の2030年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。
- (1)適正水圧により安定した給水を享受できる人口が、0人から約175,000人に増加する。
- (2)対象地域の漏水量が、3,900立方メートル/日から2,900立方メートル/日に減少する。
- (3)対象地域の無収水率が、約38%から24%未満に減少する。
- (4)対象地域における住民の生活環境及び公衆衛生環境が向上する。また、水衛生公社の給水サービスへの信頼性が向上し、水衛生公社の財務状況が改善する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ルワンダ政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)ルワンダ国別評価報告書(2020年度・第三者評価)