ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年11月15日
評価年月日:令和4年11月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 石丸 淳
1 案件名
1-1 供与国名
カンボジア王国(以下、「カンボジア」という。)
1-2 案件名
プンプレック上水道拡張計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、水需給がひっ迫するプノンペンにおいて、プンプレック浄水場の上水道施設を拡張することにより、給水量の増加を図り、もってプノンペンの住民の生活環境の改善を通じた、カンボジアの生活の質の向上に寄与するもの。
供与限度額は、33.61億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。また、同国は不発弾・地雷のリスクがある地域のため、先方負担事項として埋設確認調査が実施され、事業実施に影響が及ばないことを確認済み。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)カンボジア(一人当たり国民総所得(GNI)1,550ドル(2021年))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
- (2)メコン地域の中心部に位置する同国は、地域の連結性と域内の格差是正の鍵を握る国として重要であり、我が国は、同国内戦後の和平・復興・開発への貢献や活発な要人往来、国際社会における協力等を通じ、同国との関係を強化してきた。1991年のパリ和平合意以降は、我が国初の本格的なPKOを派遣するなど、同国の復興・開発に積極的に関与しており、2013年12月には、両国関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げされるなど良好な二国間関係を築いてきている。
- (3)我が国は、同国の内戦終了直後の1993年から首都プノンペンの上水道支援を開始し、地方自治体と連携した協力によって、2006年には給水率90%、24時間給水の実現等を達成し、「プノンペンの奇跡」と呼ばれるなど、同国の給水事情の改善に大きく貢献してきた。現在もプノンペンでの成果を地方都市に横展開するため、技術協力と資金協力を組み合わせ、上水道施設の運用技術向上、施設拡張、経営改善などに継続的に取り組んでおり、同国の水分野における我が国による支援への期待は大きい。
- (4)一方で、プノンペン水道公社(PPWSA)の給水区域内では、人口及び商業施設の急増により、2022年の日平均給水需要は現在の給水能力59.2万m3を上回る64.2万m3となっており、2030年には157.8万m3となる見込みである。加えて、過去に整備した施設の老朽化やポンプ制御システムの性能低下などが確認されており、給水能力の向上のみならず、安定的な供給と効率的な運営・維持管理が喫緊の課題となっている。
- (5)これらの課題に対し、PPWSAは上水道整備基本計画(2017年)に沿って、ドナー資金を活用して新規の浄水場の整備を進めている。また、同国政府は、包括的な国家開発の枠組みである「第四次四辺形戦略」(2018~2023年)において主要都市の上水道ネットワーク整備に高い優先度を付し、国内外の民間資本による水道施設整備を推奨しており、本計画は同国の開発ニーズに合致するものである。
- (6)我が国の対カンボジア国別開発協力方針(2017年7月)では、重点分野「生活の質向上」において上水道の整備を支援するとしており、本計画は我が国の協力方針に合致するとともに、SDGsゴール6(万人の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理の確保)にも貢献することから実施する必要性は高い。
- (7)また、本計画は、2022年4月に第4回アジア・太平洋水サミットで岸田総理大臣が発表した、日本政府による「熊本水イニシアティブ」に寄与するほか、事業・運営権対応型を活用することにより、本邦企業等の適切かつ効率的な運営・維持管理技術の導入が期待できるなど、我が国の「インフラシステム輸出戦略」にも合致することから外交的意義も大きい。加えて、同国からの支援の期待も大きい本計画を実施することは、更なる二国間関係の強化の観点からも重要である。
2-2 効率性
カンボジア政府の要請を踏まえつつ、既存施設の改修をコンポーネントから削除するなど、支援対象の絞り込みを実施したほか、取水方式を土木工事や仮設工事を伴わない方式に変更したりするなど、事業費の妥当性を検討した。
2-3 有効性
プンプレック上水道の給水量が、150,000m3/日(2020年実績値)から195,000m3/日(2030年目標値)に増加する。そのほか定性的効果として、プノンペン中心部における給水栓からの水量・水圧不足の改善や、浄水場の運営・維持管理に関する技術移転によるPPWSA職員の運営・維持管理能力の向上、公衆衛生の向上が期待できる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)カンボジア政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)カンボジア国別評価報告書(2017年度・第三者評価)