ODA(政府開発援助)

令和4年9月26日

評価年月日:令和4年9月9日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士

1 案件概要

(1)供与国名

 ネパール

(2)案件名

 都市送配電網整備計画

(3)目的・事業内容

 ネパールの主要都市部であるカトマンズ首都圏及びポカラ市を候補に、送配電網整備等を実施することにより、同地域の電力供給の安定化・効率化を図り、もって同国の経済発展及び住民の生活環境向上に寄与するもの。

主要事業内容
  • 変電所及び送配電線(電圧132kV以下)の新設・増設。
  • コンサルティング・サービス(基本設計、入札補助、施工監理、環境社会配慮等)
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
159.01億円 0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)上、JICAの融資承諾前にサブ・プロジェクトが特定できず、かつそのようなサブ・プロジェクトが環境への影響をもつことが想定されるためカテゴリFIに該当する。他方で、本事業では、実施機関が、ネパール国内法制度及びJICAガイドラインに基づき、各サブ・プロジェクトについてカテゴリ分類を行い、該当するカテゴリに必要な対応策がとられることとなっている。なお、サブ・プロジェクトにて、カテゴリA案件は実施しないことを先方実施機関であるネパール電力公社(以下、NEA)と合意済み。
外部要因リスク
 特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 ネパールは近年比較的堅調な成長を続け、2015年の震災による一時的落ち込みから脱した2017年以降、平均約6%以上の実質GDP成長を達成してきた(IMF、2020年)。新型コロナウイルス感染症による経済の減速により、実質GDPは一時的に落ち込んだものの、中長期的には5%台の堅調な経済成長が見込まれている(IMF、2022年)。経済成長の実現に必要となる電力に関しては、隣国インドからの電力輸入等による供給力増強を背景に電力需要は過去10年(2011~2020年)平均4.7%で増加した(NEA、2020年)。NEAによる分析では、ピーク需要は2019年の約1.4GWから2040年には約18GWまで増加すると予想されている。これに関し、同国においては発電状況は改善が図られてきているものの、発電した電力を消費者に供給するための送配電分野については需要拡大や主要都市の送配電設備の老朽化等から送配電容量が不足している上、一部区域を除き未だ1回線の送電ネットワークが多く、事故時等に広範な停電が発生することが懸念されている。そのため、広範囲に安定的な電力を供給するための送配電網の整備が喫緊の課題となっている。例えば、カトマンズ首都圏では、年平均約10.5%で電力需要が増加しており、既設の送配電設備の老朽化や容量不足が主因となり、需要家1軒当たり年平均約57時間、約165回の停電が発生している(NEA、2021年)。また、主要産業である観光業の中心地で人口第二の都市ポカラ市では過去5年(2016~2020年)の間、年平均約11%で電力需要が増加しており、今後5年以内に市内の既設変電所の設備容量を上回ると予測されており、電力供給に深刻な影響が懸念されている。このように、今後の需要見通しを踏まえて都市部での送配電網の改善が喫緊の課題となっている。さらに、同国の第15次5か年計画(2019/20~2023/24年度)においても、電力セクターは経済発展の原動力となる重点セクターと位置付け、国内送配電設備の増強の必要性を掲げている。
我が国の基本政策との関係
 対ネパール国別開発協力方針において「後発開発途上国からの脱却を目指した持続的かつ均衡のとれた経済成長への支援」を基本方針とし、「経済成長及び貧困削減」、「防災及び気候変動対策」、「ガバナンスと民主化の強化」を重点分野としている。本案件はネパールにおける持続可能な経済発展の実現を後押しするための電力分野に対する支援であり、重点分野の1つである「経済成長及び貧困削減」に合致する。
また、2018年11月に行われた日ネパール外相会談において、我が国は、ネパールの中所得国への移行等に向けた取組を支援していく旨表明した。特に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、経済の回復が急務となっている中、同国の主要都市部であるカトマンズ首都圏及びポカラ市を候補として送配電網の整備等を行うことにより、同地域の電力供給の安定化・効率化を図り、もって同国の今後の安定的な中長期的経済発展を実現することは、両国関係の更なる強化に貢献するものである。
 さらに、本計画は、SDGsのゴール7(持続可能な近代的エネルギーへのアクセス確保)、ゴール8(持続的、包摂的で持続可能な経済成長)及びゴール9(強靭なインフラの構築)にも貢献すると考えられる。
 以上のことから、本計画を実施することは外交的意義が高い。

(2)効率性

 NEAに派遣中の「水力発電計画アドバイザー」(技術協力、2021~2024年)と並行して、電源種・発電方式、開発優先順位、開発規模・時期、資金調達方法、民間と公的資金の役割分担や調達方法を含む投資計画等を網羅的にカバーした電力開発計画の策定、関係機関の調整機能の構築を目的とした技術協力「統合的電力システム開発計画プロジェクト」(技術協力、2021~2023年)を実施中であり、両協力を通じ発電分野を中心とした実施機関の技術面の能力強化等が図られるとともに、電力開発計画に基づく電源開発や送電線開発が進められ、本案件で整備される送配電設備と接続され、ネパール国内での安定的な電力供給が達成されることが期待されるなど、当該分野での相乗効果が見込まれる。

(3)有効性

 本計画により、ネパールの主要都市部であるカトマンズ首都圏及びポカラ市を候補に、送配電網整備等を実施することにより、同地域の電力供給の安定化・効率化を図り、もって同国の経済発展及び住民の生活環境向上に寄与することが期待される。
 サブ・プロジェクト確定後に定量的目標は詳細設定する予定であるが、優先順位の高いサブ・プロジェクトを対象にした場合、事業完成2年後(2029年予定)に見込まれる定量的効果は以下のとおり。

カトマンズ  
  • サブ・プロジェクト対象地区の送電端電力量:約1,200GWh
  • 整備対象変電所停電回数:0回/年
ポカラ  
  • サブ・プロジェクト対象地区の送電端電力量 約180GWh
  • 整備対象変電所停電回数:0回/年

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 ネパール政府からの要請書、ネパール国別評価報告書(2012年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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