ODA(政府開発援助)

令和4年9月9日

評価年月日:令和4年7月26日
評価責任者:国別開発協力第一課長 竹端 昌宏

1 案件名

1-1 供与国名

 パラオ共和国(以下「パラオ」という。)

1-2 案件名

 送電網整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、コロール島、バベルダオブ島及びマラカル島において、送電系統を整備することにより、両島における電力供給の安定性の向上及び再生可能エネルギー導入の促進を図り、もってパラオの住民生活環境の改善及び温室効果ガス排出削減を通じた、気候変動・環境問題・防災への対応に寄与するもの。
供与限度額は21.40億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)におけるカテゴリはBであり、送変電・配電セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、環境影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しない。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)パラオは、人口約1.8万人(2020年、世銀)、一人当たりの国民総所得(GNI)は14,390米ドル(2020年、世銀)であり、観光を中心とする産業の集積地であるコロール島及び首都マルキョクの所在するバベルダオブ島に全人口の約96%が居住し、電力需要はコロール島及びバベルダオブ島南部で両島全体の需要の85%を占める。両島の年間電力需要は84.8GWh、ピーク需要は約12.4MWであり(2017年)、マラカル島のマラカル発電所及びバベルダオブ島のアイメリーク発電所の両ディ―ゼル発電所から34.5kV送電線を介して電力が供給されている。当該送電線は1回線のため、いずれかの区間において事故が発生すると、全区間で停電が継続する。こうした中、同国政府は2015年に「国家長期エネルギー政策」を改訂し、2017年に「パラオエネルギーロードマップ」を策定した。同政策及びロードマップにおいて国内総発電量に占める再生可能エネルギーの比率を2025年までに45%まで上げることを目標とし、同目標をパリ協定下の「国が決定する貢献(NDC)」として表明している。
  • (2)同国は、政府歳入の約2割が米国の財政支援となるなど、経済的脆弱性が高いことから、我が国政府に対して支援を要請した。
  • (3)我が国は、同国を始めとした太平洋島嶼国との関係強化を図るため、3年に1度太平洋・島サミットを開催しており、2021年7月に開催された第9回太平洋・島サミットで「気候変動・防災」及び「持続可能で強靭な経済発展のための基盤強化」を重点分野として表明している。我が国は対パラオ国別開発協力方針において、「持続可能な海洋と、環境に配慮した自立的かつ持続的経済成長の達成」を基本方針として、「(1)持続可能な海洋の実現」、「(2)社会基盤・産業育成基盤の強化、民間投資の支援及び人材育成」と「(3)気候変動・環境問題・防災への対応」を重点分野として定めており、本計画は、重点分野(2)の中の開発課題「都市部における電力等の安定供給を目指した設備改善」に合致するものである。
  • (4)同国は、戦前我が国が国際連盟の下で委任統治を行うなど、我が国と歴史的に深い繋がりがあり、国際機関選挙等の国際社会において我が国の立場を支持するなど、対日関係は良好である。また、同国との間で民間漁業協定を有しており、漁業分野での繋がりも深い。本計画は、同国の開発課題・開発政策及び我が国の協力方針にも合致し、社会基盤・産業育成基盤の強化に資するものであり、SDGsゴール7「万人のための安価・安定・持続可能な近代的エネルギーへのアクセス確保」及びゴール13「気候変動への対処」にも貢献すると考えられる。さらに、同国は、統計上その一人当たり所得水準は高いが、人口・経済規模が小さく、観光産業に大きく依存し、国際的な経済変動に脆弱(「経済的脆弱性」)であるため、無償資金協力として本計画の実施を支援する必要性及び妥当性は高い。

2-2 効率性

 本計画では、34.5/13.8kV変電所の更新、拡張及び34.5kV送電線建設(架空線及び地中埋設ケーブル)を同時に実施することから、関連工事に当たっては適切な班編成により、効率化を図る。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2027年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。

  • (1)変圧器容量(MVA)が約1.2倍(51.05から61.05)に増加し、事業対象地域の停電時間(分/年・軒)が約27%(1,621から1,169)、事業対象地域の停電頻度(回/年・軒)が約23%(30.82から23.67)それぞれ縮小する。
  • (2)送電ロス低減によるCO2排出量の削減効果(t-CO2/年(注))が発現するようになる(実績値0から1,921t-CO2/年)。
     (注)温室効果ガスの発生量(重量t)を表す単位
  • (3)IPP事業Phase-1の太陽光発電によるCO2排出量の削減効果(t-CO2/年)が発現するようになる(実績値0から9,709t-CO2/年)。
  • (4)電力供給の安定性の向上により住民の生活環境が改善する。また、IPP事業により建設される太陽光発電設備の全出力を送電する環境が整備される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)パラオ政府からの要請書
  • (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)太平洋島嶼国の ODA 案件に関わる日本の取組の評価報告書(2015年度・第三者評価)
ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る