ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年4月5日
評価年月日:令和4年3月14日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
ベンガルール上下水道整備計画(フェーズ3)(第二期)
(3)目的・事業内容
インド南部カルナタカ州ベンガルール都市圏において、コーヴェリ川を水源とする上水道施設及び下水道施設を整備することにより、急増する水需要に対応する安定的な上下水道サービスの提供を図り、もって同地域の衛生的な居住環境の整備及び産業の活性化を通じて、持続的で包摂的な成長への支援に寄与するものである。
今次は、本計画の第二期として事業完了(2027年6月予定)までの資金需要に対応するもの。
- ア
- 主要事業内容
- (ア)上水道施設:導水管の敷設、浄水場及び送水ポンプ場の建設、送水管及び市内送水幹線の敷設、配水池への連絡管の敷設、110村地域配水池の建設、110村地域高架水槽及び送水ポンプの建設、110村地域配水池から高架水槽への連絡管の敷設、110村地域配水網の敷設、SCADA(中央監視)システムの設置
- (イ)下水道施設:110村地域の下水処理場及び中継ポンプ場の建設、幹線管渠の敷設、110村地域の下水道末端管渠の敷設。
- (ウ)コンサルティング・サービス(設計レビュー、概略設計、詳細設計、施工監理等)
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 370.68億円 1.20% 30(10)年 アンタイド - (注)下水道部分は金利1.00%、コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA)
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター、影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当せず、カテゴリBに該当する。本計画に係るEIA報告書は、インド国内法上作成が義務付けられていないものの、JICAガイドラインに基づき、モニタリングを行っている。また、下水処理場に対する排水基準に関して州の公害管理局から承認を取得する見込みである。 - イ
- 用地取得及び住民移転
特になし。 - ウ
- 外部要因リスク
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が生じうる可能性があることから、その対策として、実施機関が案件形成時及び案件実施時に取り組むべき全36項目の対策リストに合意済みである。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インドでは、人口増加や経済発展等に伴う水需要量の増加に対し、水源開発及び上下水道整備が追いついていない。また、維持管理財源の不足による施設の劣化が進んでいる地域もある。下水道の整備に関しても人口の増加に追いついておらず、下水道システムに接続されたトイレを所有する都市部の世帯は約39%に留まっており、衛生的な汚水処理施設の整備が必要となっている。
本計画の対象地域であるベンガルール都市圏は、インド南部カルナタカ州の州都であるベンガルール市、その周辺自治体及び近年開発が進む110村と呼ばれる地域からなり、2011年の国勢調査によるとその人口は約850万人である。ベンガルール都市圏全体の2016年時点における地下水を除いた水需要が1,550百万リットル/日(MLD)に上るのに対し、カルナタカ州バンガロール上下水道局(BWSSB)による供給量は1,310MLDに留まっており、今後も見込まれる急速な人口増加及びが経済発展に対応する上水道の整備が急務となっている。また、下水道については同都市圏のカバー率が約60%である一方、110村地域においてはBWSSBが運営する下水道が存在しておらず、衛生・水環境の改善が喫緊の課題となっている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力及び運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえ、2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、(a)連結性の強化、(b)産業競争力の強化及び(c)持続的で包摂的な成長への支援を掲げ、(c)「持続的で包摂的な成長への支援」の中で「環境問題・気候変動への対応」の一環として上下水道支援を位置づけており、本計画は同方針に合致するものである。
また、インドとは「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の下で関係強化を着実に進めており、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化にもつながり、外交上の意義が高い。
(2)効率性
BWSSBにより料金改定を含めた財務改善が計画されており、その改善状況は事業実施中もJICAが継続してモニタリングしている。また、本計画の組織強化に係るコンサルティング・サービスにおいて、BWSSB職員への設計や監理における技術移転、無収水対策等に取り組むこととなっている。
(3)有効性
本計画の実施により、事業完成2年後(2027年)には、2016年比で以下のような成果が期待される。
- ア
- 定量的効果
- (ア)ベンガルール都市圏の給水量が、1,310,000立方メートル/日から1,750,000立方メートル/日へ増加する。
- (イ)110村の給水量が、0立方メートル/日から295,000立方メートル/日へ増加する。
- (ウ)110村の下水処理量が、0立方メートル/日から195,000 立方メートル/日へ増加する。
- イ
- 定性的効果
本計画の実施により、安定した上水の供給、下水普及による住民の健康状態と生活環境の改善、実施機関の運営維持管理能力の向上、女性の社会参画の促進、貧困対策等に寄与することが期待される。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
インド政府からの要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
本計画に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、
借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。