ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和4年4月5日
評価年月日:令和4年3月14日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
アッサム州保健システム強化計画
(3)目的・事業内容
インド北東部アッサム州において、中核的医療拠点となる二次・三次医療施設を中心とした公的医療機関等の整備、医療人材の能力強化及び医療サービスに係るマネジメントの改善を包括的に進めることにより、対象地域の住民への医療サービスの質を改善し、もって同州におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に資することにより、持続的で包摂的な成長への支援に寄与するものである。
- ア
- 主要事業内容
- (ア)医療施設等の整備(既存の二・三次医療施設における新病棟建設・医療機材整備等)
- (イ)コンサルティング・サービス(機材調達及び施工の監理、環境社会配慮、医療人材の能力強化や医療サービスのマネジメント改善に係る計画策定・研修プログラム等の実施等)
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 456.05億円 1.00% 30(10)年 アンタイド - (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA)
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター、影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため、カテゴリBに該当する。本計画に係るEIA報告書は、新設施設のうち1か所で作成が必要となる可能性があるが、作成の要否は詳細設計段階で州の汚染委員会が決定する。 - イ
- 用地取得及び住民移転
特になし。 - ウ
- 外部要因リスク
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が生じうる可能性があることから、その対策として、実施機関が案件形成時及び案件実施時に取り組むべき全36項目の対策リストに合意済みである。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インド政府は、経済発展と均衡のとれた社会発展を達成するため、社会サービス改善に向けた政策を進めているものの、保健医療分野においては、医療インフラの不足、人材の不足及び医療サービスにおけるマネジメントの不足など、多岐にわたる課題が存在しており、脆弱な医療体制の改善が急務となっている。
アッサム州は、面積及び人口ともに北東部で最大の州であるが、主な社会指標は国内平均を下回っている。特に、医療状況についてはSDGsゴール3(全ての人に健康と福祉を)の達成状況でインド全州中最下位に位置付けられ、新生児死亡率(千出生当たり33人)と妊産婦死亡率(10万人当たり215人)がともに国内平均(それぞれ24人、113人)より高いほか、医師数(千人当たり0.56人)も全国平均(同0.86人)を大きく下回るなど、最も保健医療体制が脆弱な地域の一つである。このような状況の改善に向けて、州政府は一次医療施設の整備や医療人材育成等を進めてきたものの、医療インフラの不足、医師の育成体制や配置、そしてこれらを有効活用するマネジメント体制が十分に整っておらず、体制面の脆弱性が依然として深刻な状況である。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力及び運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえ、2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、(a)連結性の強化、(b)産業競争力の強化及び(c)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。「保健・衛生分野」は(c)の「持続的で包摂的な成長への支援」の中に位置づけられており、本計画は同方針に合致するものである。
また、インドとは「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の下で関係強化を着実に進めており、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化にもつながり、外交上の意義が高い。
(2)効率性
タイ王国向け「地方保健施設整備事業」等の先行事業の経験等から、多数の医療機関への機材整備等の支援を行う案件では医療機関の能力が一様ではないことから整備機材の有効活用のための病院管理能力強化が有効であるとの教訓を得ている。本計画では整備した医療機材が有効活用されるようユーザーの能力を十分把握した上で、適切な運用・維持管理方法等に係る必要な能力強化を本体コンポーネントの中で実施することを予定している。また、維持管理予算割り当てに見合った機材を選定している。
(3)有効性
本計画の実施により、事業完成2年後(2029年)には、2021年比で以下のような成果が期待される。
- ア
- 定量的効果
- (ア)対象二次・三次医療施設における外来患者数が、約250万人/年から約270万人/年へ増加する。
- (イ)対象三次医療施設における血管造影法の実施件数が、0件/年から13,500件/年へ増加する。
- (ウ)対象二次医療施設における分娩数が、15,070件/年から、16,171件/年へ増加する。
- イ
- 定性的効果
本計画の実施により、病院間のリファラル体制強化、質の高い保健医療人材の育成、保健医療サービスに対する患者の満足度向上、地域住民の健康増進、健康増進を通じた経済活動への参加による貧困削減に寄与することが期待される。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
インド政府からの要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
本計画に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、
借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。