ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和3年5月17日
評価年月日:令和3年4月19日
評価責任者:国別開発協力第三課長 黒宮 貴義
1 案件名
1-1 供与国名
ギニア共和国(以下、「ギニア」という。)
1-2 案件名
国立公衆衛生研究所建設計画
1-3 目的・事業内容
国立公衆衛生研究所(以下、「INSP」という。)における病原体検査・研究及び研修実施に係る施設の新設並びに機材の拡充を行うことにより、INSPの検査体制の強化を図り、もって同国における感染症の早期検知及び拡大防止に寄与するもの。
供与限度額は22.27億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ギニア(一人当たり国民総所得(GNI)950ドル(2019年、世銀))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- (2)同国では、2014年にエボラ出血熱のアウトブレイクが発生し、累計感染者数が3,814名(死者2,544名、うち医療従事者212名)に上るなど、公衆衛生上大きな問題となり、同国における保健システムの脆弱性が浮き彫りとなった。こうした中、同国政府は、2015年に「ギニア共和国国家保健開発計画(2015-2024)」及び「保健システム復興計画(2015-2017)」を策定し、強靱な保健システムの構築を目標に掲げた。特に、感染症疾患及び流行可能性のある疾患の有病率の低下は重要課題として挙げられている。
- (3)また、2020年3月から同国においても感染が拡大している新型コロナウイルス感染症は、2021年3月末時点で累計感染者数が19,501件に上り、同国保健セクターにおいて、感染症対策強化に資する協力が求められている。
- (4)同国の感染症対策実施体制は、公衆衛生上の政策策定及び感染症流行時の対策室機能や情報管理を担う保健省国家疫学感染症対策局及び国立保健安全庁と、公衆衛生検査室としての役割を担うINSP及び州病院以下の医療施設の検査室ネットワークからなる。INSPは、同国の公衆衛生検査室ネットワークにおけるトップレファラルラボとして、ア 流行疾患動向監視サーベイランス業務(検査や確定診断)、イ 全国の検査の質の評価・監督、ウ 検査技師の継続研修、エ 感染症対策における研究を担っている。しかしながら、INSPにおいては、検体の同定や研究、研修の実施に必要な機材が不足しており、また、既存施設の敷地面積が狭小であることから、検査・研究、研修について、十分な質及び量を確保することができていない。
- (5)本計画は、INSPにおける病原体検査・研究及び研修実施に係る施設の新設並びに機材の拡充を通じて、同国における感染症の早期検知及び拡大防止に寄与するものであり、実施の必要性は高い。
- (6)我が国は、対ギニア国別開発協力方針において、「基礎的社会サービスの向上」を重点分野の一つとし、ポスト・エボラ支援の一環として、保健医療施設の整備等を通じて、脆弱な保健システムの強化に向けた支援を実施することとしており、本計画は同方針に合致するものである。また、SDGsゴール3「すべての人に健康と福祉を」にも貢献するものであり、外交的意義は高い。
2-2 効率性
ギニア政府の要請を踏まえつつ、現地調査において実施機関との協議から得られた情報及びコスト・施工効率を考慮した上で供与機材の絞り込みを実施し、適切かつ効果的な事業規模とした。
2-3 有効性
- 本計画の実施により、2018年の実績値を基準値として、供用開始3年後の2026年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果
- ア INSPにおいて検査可能な項目が、18項目から27項目に増加する。
- イ INSPにおける高速液化クロマトグラフィ(HPCL)及びガスクロマトグラフィ質量分析(GCMS)を用いた1年あたりの新規検査数が、0件から1,950件に増加する。
- ウ INSPにおいて研修可能人数が、1年あたり357人から480人に増加する。
- (2)定性的効果
- ア 研修に係る施設及び機材の整備により、PCR等の各種検査手法の研修及び実習が可能となり、INSP及びギニア国内の他施設での検査活動が活発化する。
- イ 検査機器の整備により検査件数が増加し、自己収入が増えることにより、INSPの運営管理能力が強化される。
- ウ 高病原性の新興感染症に対する検査対応能力が強化される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ギニア政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)