ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和3年1月29日
評価年月日:令和2年11月26日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋
1 案件名
1-1 供与国名
ソロモン諸島共和国(以下、「ソロモン」という。)
1-2 案件名
第二次ククム幹線道路改善計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、首都ホニアラの主要道路であるククム幹線道路において道路の改善を行うことにより、渋滞の緩和及び排水能力強化を図り、もって同国の物流改善及び防災を通じた社会インフラの脆弱性の克服に寄与するもの。
供与限度額は31.59億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、道路輸送セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ソロモン(一人あたり国民総所得(GNI)2,050ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類される。
- (2)同国は、国内市場が小さく、国際市場から地理的に遠いなど、太平洋島嶼国に共通する開発上の問題を抱えている。
- (3)同国のガダルカナル島にある首都ホニアラ市では、自動車の増加や舗装の劣化等の複数の要因により円滑な交通が妨げられており、同市街地とホニアラ国際空港を結ぶククム幹線道路では、慢性的な渋滞が発生している。加えて、排水施設が不十分なために雨季には道路が冠水し、渋滞と舗装の劣化が助長され、また、歩行者のための道路横断施設もほとんどないために、交通事故の危険性も高く、これらの問題の解決が強く求められている。
- (4)上記背景から、我が国は2014年に無償資金協力「ククム幹線道路改善計画」(2018年12月完工)(以下、「フェーズ1」という。)にて、特に緊急度及び優先度の高かった区間の道路・橋梁改良などを行ったが、改善が必要な区間約10キロメートルのうち、フェーズ1の対象とならなかった区間である漁業海洋資源省から空港までの6.3キロメートルについては、依然として排水、舗装、交通容量の面で改善が必要であり、道路改良が喫緊の課題となっている。同国は、国家開発戦略(2016-2035)において適切な交通サービス及び道路ネットワークの提供を掲げ、また、それに基づく国家交通計画(2017-2030)の中期交通アクションプラン(2017-2021)において、ククム幹線道路の舗装、排水施設等の改善は最優先事業として位置づけられている。
- (5)我が国は、2018年5月に開催された第8回太平洋・島サミットで採択された首脳宣言で、「強靭かつ持続可能な発展のための基盤の強化」を協力の柱の一つとして位置づけ、強靭で質の高いインフラ整備及び運輸交通の手段の提供を通じた地域の連結性の強化への取組が必要と表明している。また、対ソロモン国別開発協力方針において、社会・経済基盤の強化を通じた持続的経済成長の達成と国民の生活水準の向上を基本方針として、「社会・経済インフラ整備・維持」を重点分野に掲げており、本計画は、同方針に合致する。また、本計画は、強靭で質の高いインフラ整備に資するだけでなく、歩道の整備等の交通安全にも資するものであり、SDGsゴール3.6「すべての人に健康と福祉を(交通安全)」、ゴール9「強靭なインフラの構築」及びゴール11「包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市」にも貢献すると考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
- (6)また、同国は我が国との間で漁業協定を有しており、漁業分野での協力関係が深い上に、国際社会においても我が国の立場に好意的な理解を示すことが多く、良好な協力関係にある。
かかる支援を通じて、同国の経済社会開発基盤が整備されることは、(島嶼国を脅かす)気候変動に対する同国の強靱性強化が図られることになり、ひいては太平洋島嶼国における平和と安定・安全の確保にもつながるものとして、我が国にとっても外交上の意義が大きい。
2-2 効率性
- (1)ソロモン諸島政府の要請を踏まえつつ、現地調査に基づき整備対象及び工法の検討等を実施し、必要かつ適切な事業規模とした。
- (2)2006年以降、アジア開発銀行(ADB)、豪州等が全国の国道・地方道整備や実施組織の強化を支援しているが、本計画及びフェーズ1が対象とするククム幹線道路の区間と重複しないことを確認した。
2-3 有効性
本計画の実施により、2019年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2026年の目標値と比較すると、対象区間(漁業海洋資源省からホニアラ国際空港)において主に以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果
- ア 車両の平均走行速度が、33キロメートル毎時から50キロメートル毎時に改善される。
- イ 降雨に起因する通行止め時間が、24時間/年から0時間/年に削減される。
- ウ 旅客数が2,150万人/年から3,091万人/年、貨物量が658,760トン/年から900,000トン/年にそれぞれ増加する。
- (2)定性的効果
- ア 雨水排水能力強化を通じた防災対策が強化される。
- イ 道路改良に伴う渋滞緩和及び輸送コスト削減による経済活動が活性化される。
- ウ 照明設置、歩道、横断歩道整備等による歩行者及び通行車両の交通安全、利便性が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ソロモン政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)「太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価」」(2015年度・第三者評価)