ODA(政府開発援助)

令和2年12月9日

評価年月日:令和2年10月15日

評価責任者:国別開発協力第三課長 黒宮 貴義

1 案件名

1-1 供与国名

 アフガニスタン・イスラム共和国(以下、「アフガニスタン」という。)

1-2 案件名

 カブール国際空港航空交通管制サービス施設及び管制塔整備計画(国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)連携)

1-3 目的・事業内容

 本計画は、アフガニスタンの航空交通管制の強化を図るべく、カブール国際空港の航空交通管制サービスセンター及び管制塔の整備を行うもの。
 供与限度額は19.95億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 今後、アフガニスタン、特に本計画の対象地域の治安状況が著しく悪化しないこと。また、新型コロナウイルスの拡大状況を注視する必要がある。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)アフガニスタンは、治安、経済、社会面において多くの課題を抱えており、同国(一人あたり国民所得550ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
  • (2)同国最大の空港であるカブール国際空港の離発着数・通過フライト数は近年著しく増加しており、2019年は年間離発着数7.9万回(前年比14%増)、通過料徴収対象の航空機の年間空域通過回数は2019年には6.3万回(2015年比13%増)に達している。
  • (3)しかしながら、同空港の管制インフラは国際民間航空機関(ICAO)が定める安全基準を十分に満たしておらず、航空の安全が懸念されている。アフガニスタン航空局は同空港の管制能力強化を進める方針を策定し、同国政府予算により契約済・納入予定のレーダー機材を2023年までに設置予定であるが、1980年代に整備された既存の管制塔にはそのスペースがないこと、加えて管制塔の高さも国際基準を満たしていないことから、新たな航空管制の整備が十分にできない状況にある。
  • (4)また、同国は東南アジアと欧州を結ぶ航空機が利用する高度交通路上に位置しており、現地出発・目的地到着時間の関係から、夜間の数時間に東南アジアから欧州へ向かう旅客機が集中的に上空を通過するが、同国の空域通過に係る航空交通管制は非レーダー管制のため、航空機の間隔をレーダー管制の場合よりも多くとる必要があり、ベンガル湾上空通過交通のボトルネックになっている。このため、費用が嵩むにも関わらず同国上空を迂回するルートを選択する状況も発生しており、同国の外貨収入源である通過料徴収の機会が失われている。
  • (5)このような状況を踏まえ、同国政府から、カブール国際空港の航空交通管制サービスセンター及び管制塔の整備に係る支援について、我が国に要請があった。本計画は、カブール国際空港の航空交通管制サービスセンター及び管制塔の整備を行うことにより、安全な離発着、上空通過の実現を図り、もって同国の円滑な人の移動・物流による経済活動活性化に寄与するものであり、実施の必要性は高い。
  • (6)また、我が国は対アフガニスタン国別開発協力方針において、「持続的・自立的発展のための支援」を重点分野に掲げており、本計画は我が国の開発協力方針にも合致するものである。さらに、我が国は、過去に開催されたアフガニスタンの支援に関する閣僚級会合において、我が国を含む国際社会全体として同国の自立に向けた支援を行うことを確認しており、インフラ整備はその支援の柱の一つとなっていることから、同国との二国間関係強化において、極めて高い外交的な意義を有するものである。

2-2 効率性

  • (1)アフガニスタンは、外務省危険情報でレベル4に指定されている国であり、治安状況が極めて悪いことから、日本人が渡航して業務を実施することが困難な状況にある。一方で、UNOPSは治安リスクが高い同国で学校、病院、道路・橋梁、空港等のインフラ整備を実施しているほか、同国政府職員のインフラ行政に係る能力強化も実施しており、効果的な支援を行うために必要な知見・ネットワークを有している。
  • (2)また、UNOPSとはこれまで「バーミヤン空港改修計画」、「カブール市東西幹線道路等整備計画」等を通じた連携実績も有しており、本計画についてもUNOPSと連携して実施することが効率的である。

2-3 有効性

  • (1)航空交通管制サービスセンター及び管制塔の整備を行うことにより、アフガニスタン政府が調達中のレーダー機材をカブール国際空港に設置することが可能となり、同国の上空通過機数が年10万回に増加(約6割増)するとともに、同空港における離着陸回数も約7%増加することが期待される。
  • (2)航路安全性が強化され、アフガニスタン上空通過機数の増加による通過料の増収により、同国の外貨獲得に繋がる。また、同空港への航空便離発着及び同国空域の通過の安全が強化され、人の移動及び物流の安全性が高まることが期待される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)アフガニスタン政府からの要請書
  • (2)UNOPSの事業計画書
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