ODA(政府開発援助)

令和元年12月24日

評価年月日:令和元年10月25日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋

1 案件名

1-1 供与国名

バヌアツ共和国(以下,「バヌアツ」という。)

1-2 案件名

テオウマ橋災害復興計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,エファテ島において,サイクロン被害に遭ったテオウマ橋の橋長延伸を含む架け替え,同橋付近のテオウマ川河川改修及びアプローチ道路改修を行うことにより,自然災害に強い道路交通を確保し,もってバヌアツの自然災害に対する脆弱性の克服に寄与する。
 供与限度額は17.15億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり,橋梁セクターのうち大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
  • (2)インフラ公共事業省(MIPU)の監理のもと施工業者が工事中の大気汚染,騒音・振動,水質汚濁及び廃棄物の緩和策等をモニタリングし,供与時はMIPUが大気汚染,騒音・振動,保管された残土についてモニタリングする必要がある。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)バヌアツ(一人あたり国民総所得(GNI)2,970ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は国内市場が小さく,国際市場から地理的に遠いなど,太平洋島嶼国に共通する開発上の困難を抱えている。また,国連大学の世界リスク報告(2017年度版)における同国のランキングは,世界171か国中,災害リスク指標が1位であり,自然災害の発生頻度が高く,かつ対応能力が十分でないとされ,度々社会インフラ等が被害を受けている。
  • (3)2015年3月に発生したサイクロン・パムは,16名の死者とインフラ施設に多大な被害を与え,特に,陸上輸送の重要な役割を担っている道路は数日間にわたってその機能を失った。その後,応急復旧はされたものの,完全な復旧には至っておらず,今後軽微な自然災害でも道路交通が遮断される懸念があるため,一日も早い完全復旧が急務となっている。
  • (4)同国政府はサイクロン・パムからの復興を最優先事項とし,災害から1年後に発表した同国首相による声明の中で,本計画を復興事業と位置づけている。
  • (5)本計画は,我が国の対バヌアツ国別援助方針の重点分野である「脆弱性の克服」及び「環境・気候変動」に合致している。また,我が国は2018年5月に開催された第8回太平洋・島サミットにおいて,主な協力・支援策として「質の高いインフラ整備支援」を表明しており,本計画はこれを具現化するものであり,SDGsゴール9(インフラ)及びゴール13(気候変動)にも貢献すると考えられることから,本計画の実施を支援する必要性は高い。
  • (6)また,同国は国際社会において我が国の立場を支持するなど,我が国と重要な協力関係にあることから,本計画を通じ,同国の経済社会開発を支援することは外交的意義も高く,自然災害への対応力強化の観点から,「自由で開かれたインド太平洋」における平和と安定の確保にも資するものである。

2-2 効率性

  • (1)2015年3月のサイクロン・パムにより右岸側アプローチ道路の盛土損傷等の被害を受け,テオウマ橋は6日間通行停止となり,現在は応急復旧されたものの,今後洪水が発生した場合には同橋に深刻な影響を及ぼす危険がある。その対策として,河川改修による河道の安定化,橋梁の延伸及び嵩上げによる流水断面積の確保,併せてアプローチ道路の嵩上げ改修を実施する。
  • (2)路盤材,石材,土質材料,コンクリート等は現地調達とし,アスファルト舗装用骨材は第三国調達とするが,鋼桁,異形鉄筋,支承,アスファルト乳剤等の資材は日本調達とする。
  • (3)サイクロン・パム被災後のエファテ島の外周環状幹線道路の再建をアジア開発銀行等の支援により実施中である。同支援の対象はテオウマ橋を除く20か所の被災道路・橋梁であり,本計画によってテオウマ橋が完全復旧することにより,環状道路全体の復旧が達成される。

2-3 有効性

 本計画の実施により,2018年の実績値を基準値として事業完成3年後の2025年の目標値と比較すると,主に以下のような成果が期待される。

  • (1)テオウマ橋の交通量が2,980台/日から3,600台/日に,旅客数が755,000人/年から905,000人/年に,貨物量が60,000トン/年から72,000トン/年にそれぞれ増加する。
  • (2)大雨後の道路冠水による物流・通勤等の遮断がなくなることにより,経済活動の維持及び各種サービスへのアクセスが確保される。
  • (3)応急復旧から完全復旧となることで落橋の恐れがなくなり,橋梁の強靱性が確保される。
  • (4)上流右岸部の民有地への河川の浸食を止められる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)バヌアツ政府からの要請書
  • (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)「太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価」(平成27年度第三者評価)
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