ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年10月15日
評価年月日:令和元年6月12日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
1-1 供与国名
ラオス人民民主共和国(以下「ラオス」という。)
1-2 案件名
ルアンパバーン市上水道拡張計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,ルアンパバーン市において浄水場の機能改善(取水,浄水,排水施設の設置),送配水管の更新・拡張,及び排水処理施設機材供与等を行うことにより,水供給サービスの改善を図り,もって世界遺産地区を有するルアンパバーン市の持続可能な都市環境整備に寄与する。
供与限度額は,19.22億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり,環境への望ましくない影響は最小限と判断される。
- (2)新規配水池建設予定地(政府所有地)の利用権の移転手続きが本計画開始前までに完了していること。
- (3)世界遺産地区内の送配水管工事について,工事開始前までにルアンパバーン県世界遺産室から工事に係る許可が取得されること。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ラオス(一人あたり国民所得2,270ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国(LDC)に分類されている。
- (2)同国は,インドシナ半島の中央に位置するメコン地域の要衝である。1991年以降,我が国は,対ラオス支援のトップドナーとして,同国との間で良好な関係を築いている。近年では,2015年に両国間の関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げとなり,2016年には「ラオスの持続的な発展に向けた日本・ラオス開発協力共同計画」が表明されるなど,両国関係はますます深化している。
- (3)同国では,「第8次国家社会経済開発五カ年計画」(2016年)により2020年までに全国の都市給水率を90%にすること,及び首相令「水道セクターに関する管理と開発」(1999年)により2020年までに都市部人口の80%に対して24時間の安全で安定的な給水を実現することが目標に掲げられている。また,「水道事業計画作成ガイドライン」(2017年)では,市町村部において2020年に人口の80%が,2030年には95%が清潔な水を24時間使用可能になることを目標に掲げている。
- (4)中心部に世界遺産地区を抱えるルアンパバーン市では,2017年時点の給水率は91%であり,都市給水率の目標は達成している。しかし,配水管網は古いものでは建設後50年を経過し漏水率が高く,また,中心部の給水を担うナムカン浄水場では,処理プロセスの前半にある凝集沈殿処理の施設能力が後半の急速濾過処理の施設能力の半分であり,原水濁度の高い雨期には十分な浄水処理ができていない。
- (5)さらに,同市を訪れる観光客は,2015年の年間約60万人から年々増加している。これに伴い,市内の世界遺産地区の水需要も1日当たり約27,000立方メートルから2025年には33,100立方メートル(日平均配水量)に増加する見込みとなっており,給水率の増加のみならず,安全な水を安定的・持続的に供給するため,送配水管の更新や浄水場機能の改善が喫緊の課題となっている。
- (6)本計画は,多くの観光客が訪れる世界遺産地区の水道システム改善と防火機能向上に貢献するものであり,日本の開発協力に対する認知向上にも大いに貢献するところ,外交上の実施意義も極めて高く,同国の開発課題・開発政策及び我が国の対ラオス国別開発協力方針(重点分野「経済・社会インフラ整備」)に合致するものである。また, SDGsのゴール6(水・衛生)にも寄与するところ,本計画の実施を支援する必要性は高い。
2-2 効率性
技術協力プロジェクト「水道事業運営管理能力向上プロジェクト(MaWaSU2)」(2018年~2023年)では,施設の運転維持管理などルアンパバーン県水道公社の人材育成を支援中であり,本計画との相乗効果が見込まれる。また,技術協力「ルアンパバーン世界遺産の持続可能な管理保全能力向上プロジェクト」(2017年~2022年)とも連携し,同案件で収集した情報の活用を図る。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果:2025年(事業完成3年後)に,給水人口が,基準年(2017年)実績値である58,800人から70,800人に増加,ナムカン浄水場の浄水濁度が,12NTUから5NTU未満に減少,低水圧地域の給水圧が,10メートル以下から10メートル以上に増加する。
- (2)定性的効果:配水管網の更新と拡張を行うことにより,低水圧地区,漏水多発区間が解消される。また,ナムカン浄水場の一部不足した施設の整備により,過負荷運転が解消され,安定した水質・水量が供給される。さらに,世界遺産地区を中心とした新規消火栓の設置・計画的配置により,同地区の防火機能が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ラオス政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)ラオス国別評価(第三者評価2013年度)
- (4)メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(第三者評価2014年度)