ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年9月18日
評価年月日:令和元年6月11日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康
1 案件名
1-1 供与国名
コートジボワール共和国(以下「コートジボワール」という。)
1-2 案件名
大アビジャン圏母子保健サービス改善のためのココディ大学病院整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,ココディ大学病院の産科,新生児科等の拡張及び機材(超音波診断装置,X線撮影装置,分娩台等)整備を行うことにより,同病院の母子保健サービスの改善を図り,もって大アビジャン圏の母子保健サービスの改善を通じたコートジボワールの安全で安定した社会の回復に寄与する。
供与限度額は41.63億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり,環境への望ましくない影響は最小限と判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)コートジボワール(一人あたり国民総所得(GNI)1,540ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低中所得国に分類される。
- (2)同国は,西アフリカのフランス語圏8か国が加盟する西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)経済の約4割を占める西アフリカ地域の大国である。また,UEMOA加盟国を含め15か国が加盟する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)経済圏の安定・発展・地域統合の鍵を握っている。こうした重要性に加え,同国は依然として2011年4月の内戦終結からの復興期にあることから,我が国としては,同国の社会安定,貧困削減,格差是正のための取組を支援する必要がある。また,同国は国際社会において我が国の基本的立場を支持する友好国でもある。
- (3)特に,同国では10年以上にわたる内戦及び政治的危機の影響により,保健医療サービスを含む基礎的社会サービスの提供体制が著しく悪化しており,これらを改善するためには,妊産婦・新生児の継続ケアが必要であり,コミュニティから高次の医療施設までの適切な役割分担と有機的な連携を実現する広義のリファラル・システムの強化が課題となっている。
- (4)同国政府は,「国家保健開発計画(2016-2020)」において母子保健の改善を戦略軸の一つに掲げ,一次から三次の各レベルの医療施設のマネジメント強化,医療施設の建設・改修・機材整備,妊産婦への統合的サービスの提供等を目指している。本計画は,三次医療施設であるココディ大学病院の母子保健棟を整備することにより,同国政府及び他ドナー等が実施中の一次・二次医療施設の整備支援と併せて,大アビジャン圏における母子保健サービスへのアクセス改善を図り,もって母子保健サービスの改善に貢献することから,同国政府の開発方針及び我が国の対コートジボワール共和国国別開発協力方針(重点分野「安全で安定した社会の維持」)に合致するものである。また,SDGsゴール3(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し,福祉を促進する)に貢献すると考えられることから,本計画の実施を支援する必要性は高い。
- (5)我が国は,2013年5月に「国際保健外交戦略」,2015年9月にはユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた協力強化を表明しており,本計画はこれらの外交政策とも合致する。
- (6)2015年10月,安倍総理大臣とヴァルス仏首相(当時)との会談後に発出された「アフリカにおける持続可能な開発,保健及び安全のための日仏計画」では,アビジャンをアフリカの持続可能な都市に関する日仏協力のパイロット都市として選定し,我が国は三次医療施設,フランスは二次医療施設を中心に協力を進めていくこととなった。
- (7)TICAD VIの機会に,我が国は「公衆衛生危機への対応能力及び予防・備えの強化」及び「アフリカにおけるUHC推進」を表明しており,本計画は同コミットメントの達成に貢献するものである。
2-2 効率性
必要な医療サービス,病床数の確保等を優先事項とし,既存施設を利用できる外来診療は本計画に含まなかったこと,また,母子保健に係る全ての救急患者を対象とするのではなく,重症妊産婦・新生児のみを対象とし,その他の症例は隣接する既存の救急外来等で診療するなど,支援対象を絞り込んだことにより,総事業費を節減した。
2-3 有効性
本計画の実施により,2017年実績値に比べて計画完成3年後の2024年までに以下のような効果が期待される。
- (1)新生児科の死亡退院割合が5.3%減少し,小児外科の手術件数が354件/年,帝王切開数が1,182件/年増加する。
- (2)患者の症状・重症度に応じた医療サービスがスムーズに提供できるようになり,患者満足度が向上する。
- (3)ココディ大学病院内の母子保健に関する三次医療機能が集約されることにより,関連診療科の連携が強化される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)コートジボワール政府からの要請書
- (2)「大アビジャン圏母子保健サービス改善のためのココディ大学病院整備計画」協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)