ODA(政府開発援助)

令和元年8月7日

評価年月日:平成31年6月11日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井関 至康

1 案件名

1-1 供与国名

ヨルダン・ハシェミット王国(以下,「ヨルダン」という。)

1-2 案件名

アカバ税関治安対策強化計画

1-3 目的・事業内容

 ヨルダン南部のアカバ税関において,X線検査装置の治安対策機材を整備することにより,同税関の検査能力の強化とともに,麻薬,銃器及び爆発物等の流入防止を図り,もって同国内及び地域周辺の治安安定化に寄与する。
 供与限度額は17.03億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

以下の事項が確保される必要がある。

  • (1)本計画における先方負担事項として,ヨルダン側において,機材の運営維持管理に要する人員・予算が確保されること。
  • (2)本計画で機材を設置する施設のうち,ヨルダン財務省税関局が建設予定のワディ・ユタム検査場の用地工事が遅滞なく実施されること。
  • (3)対象地域の治安が悪化しないこと。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ヨルダン(一人あたり国民総所得3,980ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低中所得国に分類されている。
  • (2)同国は,中東地域の要衝に位置し,イスラエルとも平和条約を締結するなど中東地域の安定に積極的に貢献しているため,同国の不安定化は,イスラエル・パレスチナ関係や湾岸諸国,ひいては同地域全体に影響しかねない。
  • (3)近年,同国が隣接するシリア・アラブ共和国(以下,「シリア」という。)及びイラク共和国(以下,「イラク」という。)との国境は,情勢悪化に伴い一時期閉鎖されていた。その影響により,欧州,トルコ共和国方面から湾岸諸国及び同国内への物流は,地中海からスエズ運河を抜け,同国唯一の港であるアカバ湾に陸揚げする海上ルートにシフトし,アカバ税関を通過する輸入向けのトラック数は,2011年時点の年間約66万台から,2015年時点では年間約74万台に増加している。その後,イラク国境が2017年,シリア国境が2018年に再開したものの,両国境における物流量は限定的となっている。
  • (4)X線検査装置は,アカバ税関施設のうちコンテナターミナル(X-1検査場)には導入されているものの能力が限定されており,検査体制は不十分である。また,アカバ港の一部(GCT(General Cargo Terminal)検査場)及び経済特区の入口(ワディ・ユタム)には設置されておらず,X線検査装置を通過しない貨物は書類審査のみに留まらざるを得ない状況にある。現状の検査体制では,危険物の流入を防ぐには不十分であり,同税関の検査機能強化は喫緊の課題となっている。
  • (5)同国政府は,「国境治安対策向上プログラム」を策定し,国境における治安対策を強化してきている。アカバ税関は現在の物流ルートの中で優先度が高く,本計画は,同国政府の進める治安対策に資するものである。また,本計画は,我が国の対ヨルダン国別開発協力方針(重点分野「地域の安定化」)にも合致するものである。さらに,原油供給の約90%を中東地域に依存する我が国にとって,同地域の安定は死活的に重要であるところ,同国との二国間関係の強化を図るとともに,同国自身が安定を保ち,引き続き,地域の安定化に建設的な役割を担うことが可能となるよう,支援を行っていく意義は極めて大きい。
  • (6)2018年11月に行われた日・ヨルダン首脳会談の機会に,安倍総理大臣からアブドッラー国王に対し,我が国は同国の安定と発展を引き続き支援していく旨述べている。また,我が国は,本年2月のヨルダン支援会合の機会に,同国に対して今後5年間で約1億ドルの無償資金協力を実施することを表明しており,本計画は同表明の達成に貢献するものであり,外交的意義も大きい。

2-2 効率性

 ヨルダン政府との協議を通じ,各実施機関が保有する機材について調査を行い,優先度を見極め,最終的に固定式X線検査装置4台,可搬式X線検査装置1台に絞り込み,適正な規模かつ効率的な事業となるよう,コスト縮減を図った。

2-3 有効性

 本計画の実施により,2017年実績値に比べて計画完成3年後の2024年までに以下のような効果が期待される。

  • (1)X線検査装置供与先であるX-1検査場の検査割合が96%から100%,また,同じく機材供与先であるGCT検査場及びワディ・ユタム検査場の検査割合が0%から100%になると見込まれる。
  • (2)高出力・物質識別能力を備えたX線検査装置の導入により,麻薬,武器などのハイリスク貨物に対する摘発精度が向上し,麻薬,銃器爆発物等の流入防止に貢献する。
  • (3)複数のX線検査装置を設置することにより,検査装置の故障・メンテナンス期間中においても常時検査が実施可能となり,検査プロセスの円滑化が促進されるほか,不正輸入貨物の取締りが強化される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ヨルダン政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書
  • (3)JICAの事業事前評価書
  • (4)相対的に所得水準の高い国に対する無償資金協力の評価(第三者評価 2014年度)
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