ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年6月7日
評価年月日:平成29年6月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件概要
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
ビエンホア市下水排水処理施設計画(第1ステージ)
(3)目的・事業内容
本計画は,ベトナム南部ドンナイ省ビエンホア市に下水処理場を含む下水道・排水システムを整備することにより,同市の下水道普及率の向上及びホーチミン市等の水道水源となるドンナイ川,ビエンホア市内の中小河川,水路の水質改善を図る。
- ア 主要事業内容
- 下水処理場の建設、ポンプ場の建設(2基)
- 遮集幹線,幹線管渠の設置
- 運河改修
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件 247億円 年0.3% 40(10)年 一般アンタイド (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア 本計画の「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」に掲げる影響を受けやすい地域に該当するため,カテゴリ分類Aに該当する。
- イ 本計画では,約8.8ヘクタールの用地取得,71世帯の住民移転を伴うため,ベトナム国内法,JICAガイドラインに基づいて作成された住民移転ポリシーフレームワーク及び住民移転計画に沿って住民移転が進められる予定。
- ウ 外部要因リスクは特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア 開発ニーズ
- (ア)ベトナムの都市部,では急激な経済成長と都市化の進行に伴い,生活排水が増大しているが,汚水が適切に処理されておらず,ベトナム政府は,2025年までに全国の都市部の汚水処理率を50%とする目標を掲げている。現在,南部のドンナイ省ビエンホア市で発生する下水は,ベトナムの最大都市であるホーチミン市等の上水道源となるドンナイ川へ未処理のまま放流されているが,同市では,年約3%の人口増加が続き,それに伴い処理が必要な汚水の量も増加し続け,水環境及び公衆衛生への影響が更に深刻さを増すことが懸念されており,その対策は喫緊の課題となっている。
- (イ)現在ビエンホア市ではドンナイ省初となる小規模下水処理場(汚水処理場:3,000立方メートル/日)を建設中であり,またドンナイ省人民委員会は,「ビエンホア市都市域及び工業地域における下水道・環境マスタープラン(目標合計処理能力185,000立方メートル)を策定しており,本計画は,このマスタープランにおいて優先整備区域として掲げられている地域に下水処理場及び下水道・排水システムを整備することにより,ドンナイ省及びドンナイ省に隣接するホーチミン市等の水道水源であるドンナイ川の水質改善にも寄与することから,本計画の実施ニーズは大きい。
- イ 我が国の基本政策との関係
- (ア)我が国は,これまでにも都市水環境セクターでの支援実績があり,また本計画は対ベトナム国別援助方針「脆弱性への対応」に合致しており,更に持続可能な開発目標(SDGs)のゴール6の達成に貢献すると考えられることから,同分野における我が国の継続的な支援への期待は高い。
- (イ)2014年3月に安倍総理及びサン国家主席によって表明された日・越「戦略的パートナーシップ」において,日本は,生活水準の改善,社会問題の解決等の優先分野で支援を行うことで,ベトナムの社会経済開発に協力していくことが再確認されていることから,本計画は両国関係の更なる強化及び日本の外交政策の推進の観点から重要である。
(2)効率性
JICAはこれまでにビエンホア市の周辺都市において「ホーチミン市水環境改善事業」,「第2期ホーチミン市水環境改善計画」,「南部ビンズオン省水環境改善計画」,「ビンズオン省水環境改善計画(フェーズ2)等の下水道整備とその維持管理体制の構築・能力強化に係る支援を実施している。本計画は,ドンナイ川を上水道源とするホーチミン市,ビンズオン省の水質改善にも寄与することから,水質改善において既往計画との相乗効果が期待される。
(3)有効性
本計画の実施により,以下の成果が期待できる。
- ア 定量的効果(2016年:基準値から2025年:事業完成2年後)
- (ア)汚水処理人口(人) 0から92,732
- (イ)汚水処理量(立方メートル/日) 0から26,910
- (ウ)降雨強度80.0ミリメートル/時以下の浸水面積(ヘクタール) 29から0
- (エ)降雨強度57.0ミリメートル/時以下の浸水面積(ヘクタール) 72から0
- イ 定性的効果
ドンナイ省ビエンホア市の下水道普及率の向上,ホーチミン市等の水道水源となるドンナイ川,ビエンホア市内の中小河川・水路の水質が改善し,同地域の公衆衛生環境の改善が進められる。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
- (1)ベトナム国別評価報告書,国際協力機構(JICA)環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構(JICA)から提出された資料。
- (2)案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構(JICA)のプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
- (3)なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構(JICA)が行う予定。