ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年7月1日
評価年月日:平成28年3月4日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
スリランカ民主社会主義共和国
(2)案件名
海上安全能力強化計画
(3)目的・事業内容
本計画は,スリランカ沿岸警備庁に対して巡視艇を供与することにより,同国沿岸部における海難救助及び海上犯罪の予防・鎮圧に向けた法執行能力の向上及び船舶からの油等の流出事故の予防等海上安全能力の強化を図り,もって同国の社会の安定化を通じた経済成長の促進に寄与する。
供与限度額は18億3,000万円。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
特になし。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア スリランカは中東地域と我が国を結ぶシーレーン上に位置し,南アジア地域へのゲートウェイ及び中東・アフリカへの中継地点として要衝の位置にある。インド洋シーレーン上で発生する自然災害,海難事故及び船舶からの油等の流出事故,海上犯罪等は,航行する船舶の安全に悪影響をもたらし,また,深刻な海洋汚染はスリランカの漁業や観光産業に致命的なダメージをもたらすおそれがある。スリランカ沿岸警備庁は2012~2016年の5か年を対象とした行動計画において,海上パトロール、捜索救助,沿岸統治,人命救助,海洋環境保全(油流出の事故対応等)などを強化が必要な分野に掲げて能力向上に取り組んでいる。しかしながら,同庁が所有する小型巡視艇20隻ではその活動範囲は沿岸部に限定されている状況であり,同庁職員の人材育成及び巡視艇等の整備を通じた海上保安能力の強化が急務となっている。
- イ かかる状況から,スリランカ政府は我が国に対して,同国の海上安全能力の強化に資する巡視艇供与に対する支援を要請したものである。
- ウ 本計画は,スリランカ沿岸警備庁に対し巡視艇を供与することにより,同国沿岸部における海難救助及び海上犯罪の予防・鎮圧に向けた法執行能力の向上及び船舶からの油等の流出事故の予防等の海上安全能力の強化を図り,もって同国の社会の安定化を通じた経済成長の促進に寄与するものであり,実施の必要性は高い。
(2)効率性
無償資金協力の調達ガイドラインによれば,本計画による巡視艇の建造は日本もしくはスリランカで行われることになるが,スリランカの造船所は,本計画で想定する船艇材料を用いた建造経験を有していない。したがって、本計画においては,巡視艇を本邦造船所において建造し,スリランカへは貨物船に搭載して輸送する。
(3)有効性
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
- ア 哨戒業務の実施可能範囲が,海岸から24海里(2014年実績値)から海岸から50海里(事業完成後の2020年)へと増加する。
- イ 油水回収能力が,0(2014年実績値)から約15m3/h/隻(2020年)へと増加する。
- ウ スリランカ沿岸域において,迅速かつ的確な海難救助の能力が向上し,密輸,密漁及び密航等の海上犯罪の予防効果が高まる。
- エ スリランカ沿岸域において,船舶からの油等流出事故の予防及び海洋環境・資源の保護にかかる対応能力が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)スリランカ政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能))
- (3)対ジブチ無償資金協力「タジュラ湾海上輸送力増強計画」の事後評価書(JICAを通じて入手可能。)