ODA(政府開発援助)

政策評価法に基づく事前評価書

平成27年12月17日

評価年月日:平成27年12月8日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

バングラデシュ人民共和国

(2)案件名

母子保健及び保健システム改善計画

(3)目的・事業内容

 母子保健に係る人材育成及び機材整備並びに看護師の教育設備改善に係る活動を実施するとともに,非感染性疾患の検査体制強化への支援を実施することにより,母子保健サービスの改善及び保健システム強化を図り,もって社会脆弱性の克服に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 母子保健及び保健システムの改善:
      • (ア)保健セクターの包括的プログラム「保健・人口・栄養セクター開発プログラム(HPNSDP)」に資する一次医療施設,及び看護大学教育・生活施設整備
      • (イ)母子保健に資する機材,二次医療施設増床に対応する機材及び看護教育における演習用機材の調達
      • (ウ)コミュニティサポートグループ及び家族福祉訪問員への研修実施(バングラデシュ政府により実施)
    • 非感染性疾患に対応する検査体制の強化:全7管区7医科大学病院での画像診断棟建設,画像診断機材等調達,調達機材等に関する研修実施(本計画で雇用されるコンサルタントにより実施)。
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    175.20億円 0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上,JICAの融資承諾前にサブ・プロジェクトが特定できず,かつそのようなサブ・プロジェクトが環境への影響をもつことが想定されるため,カテゴリFIに該当する。
  • イ その他・モニタリング:本計画では,実施機関が,円借款で雇用されるコンサルタントの支援を受けつつ,バングラデシュ国内法制度及び「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に基づき,各サブ・プロジェクトについてカテゴリ分類を行い,該当するカテゴリに必要な対応策がとられることとなっている。なお,サブ・プロジェクトにカテゴリA案件は含まれない。
  • ウ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     バングラデシュの保健セクターでは,これまでの母子保健分野での取組により,ミレニアム開発目標(MDGs)の指標である乳児死亡率(1990年:92→2011年:43(出生千当たり)),5歳未満児死亡率(1990年:146→2011年:53(出生千あたり)),妊産婦死亡率(1990年:574→2010年:194(出生十万当たり))について一定の改善が見られる。しかし,熟練介助者による出産介助率は34.4%(2013年),妊婦健診の受診率(4回以上)は25%(2013年)と,他の南アジア諸国と比べて依然として低い割合となっている。これらの指標達成には,保健・栄養・人口に関するサービス提供と意識向上等による利用の促進について一層の改善努力が求められ,サービス提供の改善のためには地域レベルから高次医療機関までの一貫した保健システムの強化が必要とされている。また,近年では心血管疾患,糖尿病,癌などの非感染性疾患と外傷が国内の全死亡の68%を占めており,国立循環器病センターを訪れる外来患者の数の急増に見られるように(2002年:86,944人→2012年:174,366人),医療サービスの受診ニーズも高まっている。主な原因には,食習慣や生活様式の変化,急激な都市化,交通事故や喫煙の増加などが挙げられる。公的病院での早期診断,早期治療など医療サービスの提供は十分ではなく,特に貧困層や社会的弱者は,適時のアクセスが限定的となっており,私立病院での高額な治療費や検査料は家計の圧迫要因となっている。
     国家開発戦略の最上位に位置付けられる「第6次五か年計画」(2011/12~2015/16年度)の中で,保健は当国の開発政策の基本である人材開発の重要な分野とされており,リプロダクティブヘルスが持続的に向上することを目標として,MDGsの達成を成果目標として設定している。保健セクターの包括的プログラムである「保健・人口・栄養セクター開発プログラム(HPNSDP)」(2011/7~2016/6)においては,妊産婦・乳幼児死亡率の低下,感染症及び非感染性疾患の抑制,栄養不足の改善及び人口抑制などを優先課題と定め,保健サービスの改善と保健システムの強化を主軸として全国での保健医療水準の底上げに取り組んでいる。また,非感染性疾患への実践的かつ科学的根拠に基づいた介入の指針である「非感染性疾患の監視及び予防に係る戦略計画」(2011~2015年)では,非感染性疾患による死亡率を年間2%削減することを目標としている。
     このため,本件計画を実施することは,バングラデシュにおける当該開発政策とも高い整合性を有しており,本計画のニーズは大きい。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     バングラデシュの人口の約3割が依然として貧困状態にあり,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ,2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化,(イ)社会脆弱性の克服を掲げている。本計画は,母子保健サービスの改善及び保健システム強化による人間開発という観点から上記(イ)に合致した支援となっている。

(2)効率性

 過去の類似案件の教訓から,多数の医療機関への機材整備等の支援を行う案件では機材整備先医療機関の能力が一様ではないため,整備機材の有効活用のための病院マネージメント能力強化が有効である,との教訓を得ている。本計画においては,多数の医療機関を対象とした機材整備等の支援を行うため,支援が有効活用されるよう,機材整備先医療機関のユーザーの能力を適切に把握した上で,精度の高い診断への適用や,正しい運用・維持管理方法など必要な能力強化支援を行う予定。

(3)有効性

 本計画の実施により,画像診断棟で提供される医療サービスに関する患者満足度の向上,画像診断棟で勤務する医療従事者の質の向上,科学的根拠に基づく診療の実施の促進及び臨床研究及び教育の質の向上に寄与することが期待される。具体的には,2016年には,研修を実施したコミュニティ支援グループ数が2014年の7,731から48,000に,熟練助産師による出産介助率が2014年の34.4%から50%に,また,妊婦健診受診率(4回以上)が2014年の25%から50%に,それぞれ増加することが見込まれる。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。

 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(国別約束情報(年度別交換公文(E/N)データ)),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。

 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。