ODA(政府開発援助)

政策評価法に基づく事前評価書

平成27年12月17日

評価年月日:平成27年12月8日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

バングラデシュ人民共和国

(2)案件名

ダッカ-チッタゴン基幹送電線強化計画

(3)目的・事業内容

 ダッカ-チッタゴン間に高圧基幹送電線及び変電施設を建設することにより,同国の電力の安定的供給を図り,もって全国民が受益可能な経済成長の加速化及び気候変動の緩和に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 400kV送電線の敷設(ダッカ-マタバリ超々臨界圧石炭火力発電所間)
    • 400kV/230kV変電所の新設,230kV/132kV変電所の増設
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    437.69億円 0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性や影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大ではないと判断されるためカテゴリBに該当する。本計画に係る初期環境影響評価報告書(IEE)は,2014年9月にバングラデシュ国環境森林省環境局から承認済みである。また,本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は,バングラデシュ送電会社(PGCB)からバングラデシュ国環境森林省環境局へ2015年5月に提出済みであり,同年12月までに承認予定である。
  • イ 汚染対策:工事中,工事業者により,大気質については散水や土砂運搬車両の荷台への覆いによる粉塵等の緩和,車両や重機の適切な管理等の対策が取られ,水質汚濁については,急峻な傾斜地への送電線鉄塔建設の回避及び法面補強により濁水を抑止する。廃棄物については,建築資材の分別や有害廃棄物の適正処理により水質・土壌等の汚染を防止する。
  • ウ 自然環境面:事業対象地域(変電所用地及び送電線ルート)周辺は自然保護区,貴重種の生息域,国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当せず,また,送電線へのサインの設置によるバードストライクの抑止や法面補強による地形地質の悪化の抑止等により,自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
  • エ 社会環境面:メグナハット変電所においては,約100ヘクタールの用地取得を伴うが,政府機関が保有する土地のため,所有権をPGCBに移転する。マドゥナガット変電所においては約10ヘクタールの農地の用地取得を伴うが,右用地取得はバングラデシュ国内手続き及び住民移転計画に沿って進められ,46名の土地所有者へ再取得価格で補償される。農地の小作人は用地取得により生計手段を喪失するため,収入補償及び生計回復支援が提供される。また,送電線鉄塔用地については,バングラデシュ国内法及び実施機関が定める補償方針に従い用地取得の手続きが進められる。なお,本計画の用地取得による住民移転は発生しない。
  • オ その他・モニタリング:本計画は,計画段階にPGCBが用地取得・補償支払いについて,工事中にPGCBが大気汚染,騒音,水質汚濁,生態系等について,並びに,供用後にPGCBが生態系,廃棄物,労働環境等についてモニタリングする。
  • カ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     バングラデシュでは電化率が約62%(2013年),国民一人当たりの年間電力消費量が約321kWh(2013年)と低水準にある。また,近年の高い経済成長に伴い,2012/13年度の電力供給能力は需要の約8割(潜在ピーク時電力需要8,349MWに対し最大供給実績は6,350MW)に留まり,恒常的に計画停電が実施されている一方,今後電力需要は年率約8.5%で伸び続け,2030年には33,708MWまで増加すると見込まれている(2010年想定)。
     現在,総発電設備容量の約7割が国内産天然ガスに依存したガス火力発電によるものであるが,近年の国内ガス需要の増加や国内産ガスの枯渇リスクの顕在化等により,発電燃料の多様化が求められている。これに対し,バングラデシュ政府は「電力系統マスタープラン」(2010年)を策定し,チッタゴン管区に天然ガスや石炭等の輸入燃源の搬入深海港を整備し,これら輸入燃源を利用した発電所を建設していく計画である。今後も同区における発電設備の拡大が予測され,ダッカ首都圏(電力需要の約50%)へ良質な電力を安定的に送電することが,バングラデシュの持続的な経済発展に不可欠である。
     国家開発戦略において最上位に位置付けられる「第6次五か年計画」(2011/12~15/16年度)では,電力セクターは貧困削減につながる経済成長のための重要なインフラであると位置付けられている。「電力系統マスタープラン」(2010年)においては電源開発と共に高圧送電線の整備・拡張を達成する目標が掲げられ,また他地域から電力負荷の高いダッカ地域への電力供給を行う必要性も指摘されている。なお,バングラデシュ気候変動戦略行動計画(Bangladesh Climate Change Strategy And Action Plan, 2009)では低炭素社会の実現のために電力セクターの発電・送配電効率を高めうるインフラ整備を行うとする行動指針が規定され,バングラデシュの開発政策とも高い整合性を有しており,本計画のニーズは大きい。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     バングラデシュの人口の約3割が依然として貧困状態にあり,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ,2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化,(イ)社会脆弱性の克服を掲げている。本計画は,基幹送電線強化による経済インフラ整備という観点から上記(ア)に合致した支援となっている。また,本計画は送電線や高圧変電所の整備により送電ロスの低減が図られるため,温室効果ガス排出削減に寄与し,気候変動の緩和に資する案件であり,(イ)に含まれる防災・気候変動対策に貢献する支援となっている。したがって,本計画は気候変動の緩和に貢献する。

(2)効率性

 過去の類似案件の教訓から,当該国にとって高圧送電のような新技術を導入するときは,森林伐採許可に係る審査手続きや航空法上の許認可の基準等が未整備な場合があり,行政手続面の困難や障害が生じる可能性があるので,これを十分確認した上で現実的な実施計画を立てる必要があるとの教訓が得られている。本計画でも,バングラデシュで初めて400kVの超高圧送電線を整備することから,上記教訓を踏まえ,高圧送電線を導入する際の許認可や行政手続について確認した上で実施計画を策定する。

(3)有効性

 本計画の実施により,バングラデシュの経済発展及び気候変動の緩和に寄与することが期待される。具体的には,2023年(事業完成2年後)には,各変電所の変圧器容量,変圧器平均設備稼働率及び送電線端電力量が増加し,送電線送電ロス率が減少することが見込まれる。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。

 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(国別約束情報(年度別交換公文(E/N)データ)),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。

 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。