ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成27年11月16日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件概要
(1)供与国名
フィリピン共和国
(2)案件名
南北通勤鉄道計画(マロロス-ツツバン)
(3)目的・事業内容
マニラ首都圏の南北軸の近郊と首都圏を結ぶ「南北鉄道計画」のうち,北方のブラカン州マロロス市から首都圏マニラ市ツツバンまでの区間の整備を実施することにより,マニラ首都圏の交通ネットワークの強化とその深刻な交通渋滞の緩和を図り,投資促進を通じた持続的経済成長及び脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- 土木工事
- 鉄道システム
- 車両調達
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件 2419.91億円 年0.1% 40(10)年 日本タイド (注)STEP(本邦技術活用条件)を適用。但し,コンサルタント部分は0.01%
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア 環境影響評価(EIA):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」に掲げる鉄道セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当し,カテゴリAに分類される。
- イ 用地取得及び住民移転:本計画では300世帯(1,185人)の住民移転及び16.1haの用地取得を伴い,同国国内手続き及び住民移転計画に沿って手続きが進められる。
- ウ 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア 開発ニーズ
フィリピンマニラ首都圏は,国全体の人口の13%(1,185万人。マニラ首都圏の近接する州を加えたメガマニラ圏としては人口は2,739万人:2010年),GDPの36%が集中する国内最大の経済活動集積拠点であり,都市としての規模が拡大している。マニラ首都圏中心から北方のマロロス市までの区間は,十分な公共交通手段が確保されないまま居住エリアが拡大しており,同エリアの住民はバスや自動車等により高速道路等を利用して首都圏へ通勤するが,首都圏中心部への道路の混雑により,これら自動車交通の速度は終日時速30km未満にとどまっており,通勤に大きな支障が出ている。渋滞の深刻化は,円滑な貨物物流や人々の移動のボトルネックとなり,同国経済の国際競争力を低下させる要因の一つとなっている。また,渋滞の悪化は排気ガスの増加を通じて大気汚染の一因にもなっている。 - イ 我が国の基本政策との関係
対フィリピン国別援助方針における以下3つの重点分野のうち,「南北通勤鉄道計画(マロロス-ツツバン)」は下記(i)及び(ii)に該当する。- (i)投資促進を通じた持続的経済成長
- (ii)脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定
- (iii)ミンダナオにおける平和と開発
(2)効率性
本計画では,適切な運賃水準の設定に係るモニタリングや,運営・維持管理業者の選定過程及びその維持管理・保守能力の強化への支援等を通じて,効率的な事業経営体制の確保を図る。
利用率向上及びそれによる収益拡大・事業性確保のために,他の交通機関と併せた体系的・効率的な都市交通の構築のための施策が必要である。本計画においても,フィリピン側は,次世代型路面電車システム(LRT)2号線の現在の終点であるレクト駅からツツバン駅への西伸事業,各駅におけるフィーダー交通との乗換施設の整備を計画している。これら計画が実施された際には,本計画とこれら他の交通モードとの一体的な都市交通網の整備が行われるよう配慮する。
(3)有効性
本計画は,マニラ首都圏の交通ネットワークの強化とその深刻な交通渋滞の改善の緩和,大気汚染の改善,マニラ首都圏の経済圏の拡大,これらを通じたフィリピンの投資環境の改善を図り,投資促進を通じた持続的経済成長に寄与するもの。また,本邦技術活用により,我が国と同国の二国間関係の緊密化等に貢献することが期待される。運用・効果指標として,マロロス-ツツバン間の乗客輸送は基準値は0(2015年:実績値)から4,913,000人・km(2023年:事業完成二年後目標値),所要時間は基準値85分(2015年:実績値,道路交通による移動)から35分20秒(2023年:事業完成二年後目標値)となる見込み。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,フィリピン国別評価報告書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(国別約束情報(年度別交換公文(E/N)データ)),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。