ODA(政府開発援助)

平成27年7月7日

評価年月日:平成27年2月10日
評価責任者:国別開発協力第1課長 宮下 匡之

1.案件名

1-1.供与国名

ベトナム社会主義共和国

1-2.案件名

ホイアン市日本橋地域水質改善計画

1-3.目的・事業内容

 本計画は,世界文化遺産「ホイアン市の古い町並み」に登録されているホイアン市において,下水処理施設の新設及び下水路の改修を行い,名所「日本橋」地域の水質改善を図ることにより,同市の生活衛生環境の改善及び観光資源の保全による地域経済の開発促進,ひいては日越関係の更なる強化を目的とするものである。供与限度額は,11億1,000万円であり,下水処理施設(処理能力2,000m3/日,前ろ過散水ろ床法)の整備,日本橋水路(約1.7km)の改修を行う。

1-4.環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がベトナム政府により実施される必要がある

  • (1)詳細設計の承認,建設許可,施設建設のための進入路の借地
  • (2)施設稼働に合わせた下水処理施設下流の管渠整備

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

  • (1)ベトナムでは1986年のドイモイ(刷新)政策導入以降,急速な経済成長を達成する一方で,都市化に伴う大気汚染,水質汚濁,廃棄物増加等の負の側面が顕在化しており,特に河川・運河・湖沼の水質汚濁が著しく,排水施設が整備されていないことも相まって,伝染病の蔓延などの衛生問題も危惧されている。
  • (2)我が国はベトナムにおける開発の現状と課題等を踏まえ,成長に伴う負の側面への対処を進めることとしており,対ベトナム援助方針における重点分野である「脆弱性への対応」では,利水,治水,水環境保全に対する支援を実施すると同時に,観光地においては観光振興と環境保全のバランスのとれた支援を実施することにしている。
  • (3)ベトナム中部に位置するホイアン市は,「ホイアンの古い町並み」として世界文化遺産に登録されたベトナムを代表する観光地であり,16世紀末から17世紀にかけて国際貿易港として繁栄し日本人街があったことでも有名である。特に市中心部を流れる水路に架けられている「日本橋」は,ホイアン市の観光の中心であり,日越友好のシンボルとなっている。
  • (4)しかしながら,「日本橋」直下を流下する水路は,未処理排水の流入により,水質は国の基準を大幅に下回るとともに,景観を損ない臭気も問題となっている。このため,同市の主要産業である観光業全体への影響も懸念されている。
  • (5)本事業は,ホイアン市において下水道システムを整備することにより,同市の公衆衛生の改善及び観光産業の持続的発展を図るとともに,「脆弱性への対応」に寄与するものである。

2-2.効率性

  • (1)水路の暗渠化
     改修を行う水路について部分的な暗渠化を施す。理由としては,農業用水が水路に流入するため,汚水と農業用水を分離し,極力汚水のみを効率的に処理できる構造としたこと等による。なお,水路上流部のホテル街周辺は汚水を広く受け入れるため,開渠とする。
  • (2)他ドナー事業との整合性ある実施による効率性の向上
     フランス開発庁(AFD)において「ホイアン市廃棄物,下水処理及び環境保全事業」により,本計画区域外の廃棄物中間処理施設,下水管渠及び下水処理施設の整備を実施中。AFD事業と本計画によりホイアン市中心部の下水処理が概ね完了する見込みであり,同事業との整合性のある計画の実施により,本計画の目標をより効率的に達成する。

2-3.有効性

  • (1)下水処理施設による汚水処理が現在全くなされていないところ,2020年に1日あたり1,900m3処理されるようになり,11,700人が汚水処理サービスを受けることができるようになる。
  • (2)下水処理の程度を表す指標として用いられる生物科学的酸素要求量(BOD)が,2020年に30mg/リットルに低下する。
  • (3)本計画により,世界遺産に位置し日越友好のシンボルである日本橋水路の水質及び景観の改善が図られることにより,ホイアン市の生活環境衛生の改善及び観光資源の保全による地域経済の開発促進,ひいては日越関係のさらなる強化が期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ベトナム政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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