ODA(政府開発援助)

政策評価法に基づく事前評価書

平成27年6月17日

評価年月日:平成27年2月3日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西永 知史

1.案件名

(1)供与国名

モロッコ王国

(2)案件名

貝類養殖技術研究センター建設計画

(3)目的・事業内容

 本事業は,テトゥアン県アムサ湾沿岸において,貝類を対象とした養殖技術研究センターを建設し,養殖技術研究に必要な機材を整備することにより,国立漁業研究所(INRH)の種苗生産を含む養殖技術の研究及び開発能力の向上を図り,もって貝類養殖業の発展に寄与する事業であり,供与限度額は12億円である。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項が実施される必要がある。

  • ア モロッコ政府により,本事業に係る環境影響評価報告書が作成され,着工までに承認されること。
  • イ 施工業者により工事中の排水等対策が適切に取られ,供用後はモロッコ政府によりモニタリングが実施されること。

2.無償資金協力の必要性

(1)必要性

  • ア 沿岸に豊富な水資源を有するモロッコでは,沖合漁業とそれを支える漁業インフラ整備の推進の結果,漁業は急速な発展を遂げていたが,世界的に海洋天然資源の限界が認識されるようになり,同国でも漁獲量を規制してきたことから,1990年代以降,漁獲量は頭打ちとなっていた。同国政府は水産資源の保全・有効活用に取り組み,水産セクターの開発を進めてきたが,天然資源だけに依存した漁業だけでは持続性を確保することが困難であり,養殖漁業の開発も併せて進めていくことが課題となっている。
  • イ モロッコ政府は,2009年に水産セクターの発展と水産資源の安定的確保を目的とした漁業戦略を策定し,その中で,水産養殖業を同セクターの牽引役の1つとして位置づけ,2020年までに貝類も含めた養殖生産量の政策目標を設定した。この目標に向けて,同政府は,養殖振興機構を設立すると共に,海洋環境が養殖に適したアムサ湾などの沿岸域に養殖用地を準備して,水産養殖業への民間企業の参入促進に取り組んできている。しかし,貝類養殖については,同国内での天然種苗の採取が困難なことに加え,人工種苗の生産等の養殖技術が未開発であり,輸入種苗による試行錯誤の中,十分な発展が見られない状況にある。
  • ウ なお,我が国は,水産外交において重要な協力関係にあるモロッコに対する援助方針として,同国の主要産業である水産セクターの振興を通じた持続的な経済成長に貢献することを掲げており,本事業の支援もこれに合致している。

(2)効率性

 高度な実験・分析機器等を完備しているモロッコ国内の他の研究所と連携して,本事業により建設される研究センターでの調査・分析等には,それら施設の機材も活用することとし,同センターに配備する研究機材について効率化を図った。

(3)有効性

  • ア 本件の実施により,次のような成果が期待される。
    • (ア)貝類養殖研究に必要な機材・適切な環境の下,研究対象種の増加,養殖技術の開発・確立,研究者の育成が可能になり,養殖振興に不可欠な「健康な種苗の確保」及び「種苗の安定供給」が図られる。
    • (イ)研究・開発成果(これまで実績の無かった貝類養殖分野において,事業完了後の6年間で,(i)貝類養殖技術に係る論文・研究報告の累計数10件,(ii)貝類養殖に関する受託事業研究の累計数4件,(iii)貝類養殖の研究対象種累計数3種,(iv)中間育成に関する施設利用年間累計日数100日実施)が広く養殖関連機関及び民間養殖業者にも利用され,養殖による貝類の生産量が増大し,モロッコにおける水産資源の安定化が図られる。
    • (ウ)日本製の研究機材に対する認知度が向上し,今後の需要創出に繋がり,日本企業の海外展開が広がる。
  • イ 我が国が過去に同国に対して行ってきた水産分野における協力(無償資金協力「モロッコ国立漁業研究所中央研究所建設計画」,「漁業調査船建造計画」など)や,他ドナーによる同分野への支援との相乗効果で,モロッコ水産業の持続的な成長が実現する。
  • ウ モロッコは,仏語圏アフリカ諸国と緊密な繋がりを有し,南南協力に積極的に取り組んでいることから,本事業での支援は同国に留まらず,効果的にアフリカ諸国に伝播することが期待でき,他のアフリカ諸国の発展にも貢献する。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)モロッコ政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書