ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年5月22日
評価年月日:平成27年5月14日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西永 知史
1.案件概要
(1)供与国名
トルコ共和国(The Republic of Turkey)
(2)案件名
地方自治体インフラ改善計画
(3)目的・事業内容
トルコの地方開発を目的とした政府系金融機関であるイルラー銀行(Iller Bank)を通じて,シリア難民を受け入れている地方自治体に対し,インフラ整備に必要な長期資金を供給することで,地方自治体のインフラサービスの改善を図り,もって自治体住民の生活環境の改善に寄与するもの。
- (ア)主要事業内容
- サブ・プロジェクトの実施に必要な資金の供与
- (イ)供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 450億円 変動金利
円LIBOR +0.20%25(7)年 一般アンタイド (注)コンサルティング・サービス部分は0.01%
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (ア)環境社会配慮:サブ・プロジェクト毎にイルラー銀行がトルコ国内法制度及び「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2010年4月公布)」等で定められた必要な対応策を講じることとしている。なお,環境や社会への重大で望ましくない影響のある可能性を持つようなサブ・プロジェクトは想定されていない。
- (イ)外部要因リスク:特になし。
2.資金協力案件の評価
(1)必要性
- (ア)開発ニーズ
トルコでは,近年の堅調な経済成長と急速な都市化により,地方自治体における公共インフラ需要が急増しており,政府は2000年に策定された「長期戦略(2001~2023年)」及び「第10次開発計画(2014~2018年)」に基づき政策を進めている。右計画では,重要分野の一つとして「生活に適した地域,持続可能な環境」を掲げており,健康で安全な飲料水へのアクセス改善及び下水道・廃棄物処理カバー率の向上を主目標としている。
さらに,トルコでは,2011年3月以降のシリア情勢悪化により,シリアから約172万人が難民として流入しており,事態の長期化に伴い,難民の滞在も長期化しているとともに,受入地方自治体も拡大している状況にある。このため,特に難民キャンプのある南東部の地方自治体では,上下水道や廃棄物管理等自治体が所掌している公共サービスの質が低下しており,これらへの対応が必要な状況となっている。 - (イ)我が国の基本政策との関係
我が国は,2012年12月に「対トルコ共和国国別援助方針」を策定し,普遍的価値観を共有する重要なパートナーとして,戦略的協力関係を発展させていくことが重要であると考え,(1)持続的経済発展の支援及び(2)開発パートナーとしての連携強化,を重点分野に掲げている。本計画は,(1)に該当するものである。
(2)効率性
本件は,実施機関であるイルラー銀行が本事業に関わる専門の職員を有し、対象自治体への技術支援を行う体制を整えることで、複数の地方自治体に対して円滑かつ効率的な事業展開を可能とする。
(3)有効性
本計画の実施を通じ,シリア難民の流入により影響を受けている地方自治体のインフラ整備に係る財務負担を軽減し,自治体住民の生活環境の改善に寄与するのみならず,トルコにおける安定し均衡のとれた持続的経済発展が可能となる。
また,本計画は,シリア周辺国支援を進める国際社会の動きに呼応した我が国のプレゼンス向上及び日トルコ二国間関係の強化といった外交的意義が認められるものであり,我が国として戦略的意義が認められる。
3.事前評価に用いた資料,有識者の知見等
要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(国別約束情報(年度別交換公文(E/N)データ)),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。