ODA(政府開発援助)

令和4年10月28日

評価年月日:令和4年9月15日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一

1 案件名

1-1 供与国名

 マダガスカル共和国(以下「マダガスカル」という。)

1-2 案件名

 稲種子生産ほ場及び施設整備計画

1-3 目的・事業内容

 アロチャ・マングル県及びアナラマンガ県における国立農村開発応用研究所(FOFIFA)本部及び研究所等において、コメの認証種子及び認証種子の生産に必要な原種種子の生産・管理を担う機関の施設及び機材を整備・改修することにより、生産性の高い認証種子の増産を図り、もってマダガスカルにおけるコメの自給達成及び生産量の増大を通じた農業・農村開発に寄与するもの。
 供与限度額は22.57億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる農業セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への好ましくない影響は重大でないと判断されるため、カテゴリBに該当する。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)マダガスカル(一人当たり国民総所得(GNI)480ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国では国民の8割が農業に従事し、うち約9割が生産に携わるコメは農家世帯収入の42%、全耕地面積の55%を占める基幹作物であり、同国ではコメ自給の早期達成及び生産量の増大を目標としている。特に2020年3月以降は、新型コロナウイルス感染症拡大によるコメ生産・流通の停滞、これによる貧困及び脆弱層の拡大が懸念されており、同国政府はコメの安定的生産を通じた食料安全保障の強化を最優先課題の一つとしている。
  • (3)同国政府はコメの生産を更に増やし輸出を拡大することとしているが、品質と競争力の高い種子の全国普及に向けた認証種子の不足がその足かせとなっている。中央高地に位置するアロチャ・マングル県は、国内有数の認証種子生産県であり、全国の認証種子の約34%を生産しているが、認証種子生産に必要な原種種子生産を担うFOFIFAの試験場及び原種生産圃場は、灌漑施設の老朽化、圃場の用排水路の不良及び農業機械の不足により、生産能力が期待される半分以下に留まっており、認証種子の生産を担う種子増殖公社(CMS)のアロチャ・マングル県農場でも種子生産性の向上が課題となっている。加えて、アナラマンガ県に位置する種子管理局(SOC)は、全国の認証種子検査及び認証を所管しているが、検査機材の不足や施設の老朽化により効率的な種子の認証ができていない。
  • (4)我が国は、対マダガスカル国別開発協力方針(2021年5月)において、「農業・農村開発」を重点分野の一つとして定め、そのうち「食料安全保障の強化」を開発課題として掲げており、本計画は同方針に合致するとともに、SDGsゴール2「食料安全保障」にも貢献するものである。
  • (5)また、同国はアフリカにおけるコメ生産量の増大を目指す国際イニシアチブである「アフリカ稲作振興のための共同体フェーズ2(CARD2)」の地域拠点国であり、我が国は、本年8月に開催した第8回アフリカ開発会議(TICAD8)において、自由で開かれた国際経済システムの強化を掲げ、食料危機対応・持続可能な農業生産支援を行うこととし、CARDを通じ2030年までにコメ生産量倍増を目指す旨表明しており、本計画はこうした我が国の重要政策を具体化するものである。

2-2 効率性

  • (1)協力対象となる対象地について、種子増殖公社ほ場の全エリアを改修対象としていたが、現地調査等で検討を行った結果、優先度の高いエリアのみを改修対象として絞り込むこととして仕様変更し、支援の効率化を図っている。
  • (2)また、同国へは2008年以降、農業・農村開発アドバイザーを派遣し、技術協力「中央高地コメ生産性向上プロジェクト(PAPRiz)(2009-2015)」及び同フェーズ2(2015-2020)を実施してきた。本事業は、これら技術協力で開発した改良稲作技術の核をなす認証種子の増産を図るものである。さらに、現在実施中の「コメセクター生産性向上及び産業化推進支援プロジェクト(PAPRIZ)」(2021年12月~2026年11月)では、種子管理局の認証種子検査員への研修を実施しており、能力強化が期待される。
  • (3)加えて、現在実施中の無償資金協力「アロチャ湖南西地域灌漑施設改修計画」では、種子増殖公社ほ場を含む地域への安定的な灌漑用水の供給が図られることから、本計画との相乗効果が期待される。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2022年の実績値を基準値とし、事業完成3年後の2027年の目標値と比較すると、主に以下のような効果が期待される。

  • (1)FOFIFA分室での原種種子生産量が、5.0トン/年から7.8トン/年へ増加する。
  • (2)CMS認証種子生産量(調製後)が、約200トン/年から648トン/年へ増加する。
  • (3)SOCによる認証種子検査件数が、約710件/年から1,050件/年へ増加する。
  • (4)認証種子の品質向上、認証種子の品質に対する信頼性の向上、稲作農家の認証種子へのアクセスの向上、コメの生産量増大に寄与する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)マダガスカル政府からの要請書
  • (2)TICADプロセスを踏まえた最近10年間の日本の対アフリカ支援評価報告書(2017年度・第三者評価)
  • (3)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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