ODA(政府開発援助)

令和4年5月19日

評価年月日 令和4年3月29日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一

1 案件概要

(1)供与国名

 コートジボワール共和国

(2)案件名

 ターボ・コスー・ブアケ電力網強化計画

(3)目的・事業内容

 コートジボワール中部の経済都市であるターボ、コスー、ブアケの3都市の間で、送電線の増設、変電所の新設・拡張、配電網整備を行うことにより、同国中部、北部及び隣国のマリ、ブルキナファソへの送電容量の増加を図り、もってこれら地域への電力供給の安定化、対象住民の生活環境の改善及び産業活動の活性化の促進に寄与する。

主要事業内容
  • 送電線の増設(ターボ・コスー・ブアケ間:約270キロメートル、2回線)
  • 既存変電所3か所の拡張
  • 変電所2か所の新設及び同変電所からの配電網整備
  • コンサルティング・サービス
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
220.28億円 1.00% 30(10)年 一般アンタイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分の金利は0.01%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定、以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる送変電・配電セクターのうち、大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、JICAガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリーBに該当する。
 本計画の環境社会影響評価(ESIA)報告書は、2020年8月に国家環境庁に承認され、同庁からの環境許認可も発行済み。
汚染対策
 工事中の大気汚染については、散水や工事用車両の速度制限などの対策が取られる予定である。工事中及び供用時の水質・土壌汚染及び廃棄物については、機材からの油の漏洩対策や残土の埋め戻し等の環境管理計画に基づいた処理がなされるため、影響は最小化される見込み。
自然環境面
 事業対象地域は、国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当せず、自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
社会環境面
 既設変電所の拡張については、既存敷地内での実施のため用地取得はない。変電所の新設等については、コートジボワール・エネルギー公社(CIエナジー)により用地取得が完了済みであり、住民移転は発生しない。送電線の増設については、約15ヘクタールの用地取得、6人の非自発的住民移転を伴い、同国国内手続き及びJICAガイドラインに沿って作成された簡易住民移転計画に沿って取得が進められる。なお、住民協議の結果、被影響住民から事業に係る特段の反対意見は出ていない。
モニタリング
 工事中及び供用時、大気質、水質、廃棄物、土壌汚染、騒音・振動等についてはCIエナジー及び施工業者が環境管理計画に基づいたモニタリングを実施し、住民移転・用地取得についてはCIエナジーが事務局を務める運営委員会がモニタリングを実施する。
外部要因リスクなど留意すべき点
 新型コロナウイルス感染症に関し、同国における現在の流行状況からは本事業への影響は限定的と予想されるが、今後の動向は注視していく。また、事業の円滑な実施を図るべく、コンサルタント選定のための調達支援専門家の派遣を行うほか、実施機関と密にコミュニケーションを取り、案件監理を行う。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 コートジボワール政府は、国家開発計画(PND 2021~2025)において、質の高いエネルギーへのアクセス向上等、国民の生活改善に直接寄与する優先事業の実施を積極的に進める方針を示している。中でも、1990年代後半からの政治的危機等の影響による国内の南北格差是正も念頭に置いた地方の開発を促進すべく、発電施設が脆弱な地方部で、電力セクターに重点を置いた開発を進めることを目標としてきた。具体的には、2015年6月に策定された発電・送電用マスタープラン(以下「MP」という。)において、(ア)発電設備容量を2011年の1,409メガワットから、2030年には5,691メガワットに増大させること、(イ)全国の送電線総延長を2014年の4,384キロメートルから約10,160キロメートルに延長させ、変電所については既存の46か所(2014年)に加え、2030年までに新たに46か所の変電所を整備することを掲げている。こうした中、発電設備容量については増加が見られる一方、送変電・配電設備の不足や老朽化による送配電ロス(総損失13.5%(2018年))、停電(1軒当たりの年間平均停電回数18回、停電継続時間14.4分(世界銀行、2020年))等が課題となっており、送変電・配電設備の整備が急務となっている。
 同国の南北を繋ぐターボ・コスー・ブアケ間の225キロボルト送電線は、発電設備が集中する同国南部から、電源のない北部の主要都市等へ電力を送る基幹送電線であるとともに、国家間で電力を融通する枠組みである西アフリカ・パワープールに基づき、同国の北部に隣接するマリ及びブルキナファソへの電力供給を行う国際連携線として位置づけられており、売電収入の獲得や地域の人々の生活改善、産業の活性化のみならず、同国国内の南北間格差の是正や隣国を含む地域全体の安定的な発展において、重要な役割を担っている。
 その一方で、当該区間が電力供給を行う首都ヤムスクロ及びアビジャンに次ぐ第二の経済都市ブアケでは、人口増加や経済成長に伴い、ピーク需要として、2018~2033年の間、毎年年率7%の高い増加率が想定されており(MP、2015年)、現状の送変電・配電設備のままでは、更なる停電の発生等により、住民の生活や産業活動に影響を及ぼすことが課題となっている。また、マリ及びブルキナファソにおいては、現在電力需要の15~25%を同国からの供給に依存していると推計されているものの、今後も更なる電力需要の伸びが予測されており、2030年にはこの割合が30%を超える可能性が指摘されている(西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)発送電開発マスタープラン改訂版2018及びCIエナジーの電力輸出計画より推計)。さらに、当該区間は、現状では1回線のみの送電線で北部への電力供給を行っているが、送電線に事故が生じた場合、迂回ルートを経由することとなり、送電距離の増加による大幅な電圧低下と迂回ルートの容量不足による送電量の制約が生じ、系統全体の不安定化を招くことが懸念されている。これにより大規模停電を引き起こす可能性が高く、当該送電線の容量増加及び信頼性向上が急務となっている。
我が国の基本政策との関係
 我が国は、対コートジボワール国別開発協力方針において、「持続的な経済成長の推進」を重点分野とし、運輸交通(道路・港湾)、上下水道、エネルギー、情報通信等のインフラ整備の支援を行うとしており、安定的な電力供給に資する本計画は同方針に合致している。また、SDGsゴール7「万人のための利用可能で、安定した、持続可能で近代的なエネルギーへのアクセス」にも貢献するものである。さらに、我が国は2019年8月に開催した第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を踏まえた質の高いインフラ投資の推進を表明しており、この協力はそれを具体化するものである。
 以上のことから、本計画の実施は外交上の戦略的意義が認められる。

(2)効率性

 本計画では、事業実施段階での設計・施工管理において、コンサルタントから実施機関に対する技術移転を行うことにより、実施機関の管理体制・能力強化を図る。

(3)有効性

 本計画の実施を通じ、本計画完了から2年後の2029年には、新たに建設されるヤムスクロ2変電所の年間送電電力量が113ギガワット時、ブアケ3変電所の送電電力量が123ギガワット時となることが見込まれる。
 また、本計画の実施により、コートジボワール中部及び北部住民の生活環境改善及び産業活動の活性化に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、JICAガイドライン、その他JICAより提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本計画に関する事後評価は実施機関であるJICAが行う予定。

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