ODA(政府開発援助)

令和4年3月2日

評価年月日 平成31年2月4日
評価責任者:国別開発協力第二課長 門脇 仁一

1 案件名

1-1 供与国名

 キルギス共和国(以下「キルギス」という。)

1-2 案件名

 ビシュケクーオシュ道路地吹雪対策計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、キルギスの南北を結ぶビシュケクーオシュ道路上の地吹雪による通行止めが頻発する一部区間において、地吹雪対策(防雪柵及び視線誘導柱の設置)を実施することにより、道路の安全性の向上及び輸送能力の強化等を図り、もって運輸インフラの維持管理と地域間格差の是正に寄与するもの。

 供与限度額は10.33億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は、JICA環境社会配慮ガイドラインにおいて、環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
  • (2)キルギス政府による既存防雪柵の撤去が、施工入札公示までに完了する必要がある。また、本計画の対象地域の治安状況が著しく悪化しないこと。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)キルギス(一人あたり国民所得1,130ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
  • (2)内陸国である同国は、旅客及び貨物輸送の約95%を道路交通に依存しているが、同国の幹線道路は、同国内のみでなく、中央アジア各国を結ぶ域内交通手段としても重要な役割(ハブ機能)を担っている。特に、ビシュケクーオシュ道路は、首都ビシュケクと第二の都市オシュを結ぶキルギス国内唯一の南北幹線道路であり、中央アジア全体の物流の円滑化、経済の発展を図るために必要な国際回廊としても位置づけられていることから、国内的・国際的にも重要性が高い。
  • (3)一方で、当該道路は急峻な山岳地帯を通過するため、冬期は積雪により雪崩や風雪等の自然災害が多発している。山頂付近から吹き降ろす風が非常に強く、路上への吹き溜まりと視程障害が派生しやすく、地吹雪に起因する通行障害が頻発しており、国内物資輸送や周辺国との交易に支障をきたし、経済活性化の阻害要因となっている。
  • (4)同国政府は国家戦略である「2018~2040年間国家発展戦略」において、道路の修復・メンテナンスを通じて自由かつ安全な国際交通回廊の整備を促進することを重要な課題として挙げている。また、同戦略の5か年計画としての「2018~2022年間発展プログラム『統一・信頼・創造』」において、運輸・道路セクターの優先課題として、主要都市と周辺都市を繋ぐ主要幹線道路の質の改善を掲げている。
  • (5)本計画は、ビシュケクーオシュ道路上の125~129キロメートル区間及び216~222キロメートル区間において地吹雪対策を実施することにより、道路の安全性の向上及び輸送能力の強化を図るものである。具体的には、防雪柵を設置することにより、地吹雪発生時の道路上の除雪作業を減少させ、また視線誘導柱の設置により安全性を高め、事故の発生を減少させることで、当該道路の維持管理に係る負担の軽減にも寄与することが期待される。また、地吹雪発生による交通の遮断が減少し、物流の円滑化が図られることにより、北部から南部への石油製品等の輸送や、北部に比べ温暖な南部で生産される農作物の南部から北部への輸送が促進され、都市部と地方の地域間の格差是正が期待される。
  • (6)本計画は、同国の開発課題・開発政策に合致するとともに、我が国の対キルギス国別援助方針(2012年)における重点分野「運輸インフラ維持管理と地域間格差の是正」にも合致する。また、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット9(インフラ・産業化・イノベーション)の達成に貢献する
  • (7)2015年10月の安倍総理大臣の同国訪問時に発出した共同声明において、同国の運輸インフラ整備の重要性が確認されているほか、2017年5月に開催された「中央アジア+日本」対話・第6回外相会合においても、運輸物流分野の協力推進が主要テーマの一つに挙げられた。本計画は、こうしたハイレベル対話の成果を具体化するものである。

2-2 効率性

 JICA技術協力プロジェクト「道路防災対応能力向上プロジェクト」(2016年~2019年)のパイロットプロジェクトにおいて、本計画対象地域での気象観測や、防雪柵の設置を実施しており、同技術協力で得られたデータを活用し、本計画での防雪柵の設計や設置位置の決定を行っている。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2018年実績値と事業完成3年後の2024年目標値を比べて、以下のような成果が期待される。

  • (1)ビシュケクーオシュ道路125~129キロメートル区間の地吹雪発生時の除雪時間が、51.5(時間×機材台数/回)から33.5(時間×機材台数/回)に減少する。
  • (2)ビシュケクーオシュ道路216~222キロメートル区間の地吹雪発生時の除雪時間が、74.0(時間×機材台数/回)から37.8(時間×機材台数/回)に減少する。
  • (3)ビシュケクーオシュ道路125~129キロメートル区間の地吹雪発生時の車両通行が困難な時間が、7.25(時間/回)から4.72(時間/回)に減少する。
  • (4)ビシュケクーオシュ道路216~222キロメートル区間の地吹雪発生時の車両通行が困難な時間が、12.33(時間/回)から、6.30(時間/回)に減少する。
  • (5)冬期における車両走行の安全性が向上し、冬期における車両の利用が促進される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)キルギス政府からの要請書
  • (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)2011年度中央アジア3か国に対する市場経済化支援の評価
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