ODA(政府開発援助)

令和4年2月24日

評価年月日:令和3年11月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 竹端 昌宏

1 案件名

1-1 供与国名

 バヌアツ共和国(以下、「バヌアツ」と言う。)

1-2 案件名

  サント島における水力発電施設建設計画

1-3 目的・事業内容

 本事業は、サント島サラカタ川において、新規流込み式小水力発電施設等を建設することにより、増大する電力需要に対してクリーン且つ安定的な電力供給を実現するとともに輸入化石燃料への依存軽減を図り、もって産業活動・市民生活レベルの向上及び気候変動対策(緩和)に寄与する。

 供与限度額は39.51億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本事業は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)におけるカテゴリーはBであり、水力発電セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しない。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)バヌアツ政府は社会・環境・経済の3つの柱をバランス良く発展させることを目的に、「国家持続可能な開発計画2016~2030」を策定した。また、電力分野の「改訂国家エネルギーロードマップ2016~2030」において、国民へ安全で高品質、且つ安価でクリーンなエネルギーを広く提供することで、同国の成長と発展に寄与することを全体ビジョンとして掲げている。一方、同国では他の大洋州島嶼国と同様、化石燃料を全量輸入していることから、社会・環境・経済の発展のためには、輸送コストや価格変動の影響を抑え、化石燃料依存度の低減を図るとともに、国内のクリーンなエネルギー資源の活用を促進することが喫緊の課題となっている。さらに、同ロードマップでは具体的な行動計画として最優先課題を設定しており、サント島においては東海岸のグリッド延伸計画とサラカタ川水力発電所の増設計画の2件が設定されている。
  • (2)サント島は同国最大面積の島であり、第2の都市ルーガンビルの電力ピーク需要は2,060キロワット(2018年)、過去10年の増加率は約3.3%/年である。同島では、1,200キロワットある水力発電をベース電源として運用しているが、乾季及び日中の電力ピーク対応等のため、年間電力量の約30%をディーゼル発電に頼っている。同島では、2030年には2018年のピーク需要に対し約37%増となることが見込まれており、ロードマップ実現に向けてクリーンな国産エネルギーである水力発電を早急に開発することが必要となっている。また、都市部では、給電のための変電容量が逼迫しつつあるため、電力の安定供給のために、発電設備と併せて変電設備の増強が不可欠であるとして、同国ロードマップにおいても最優先課題の事業として位置付けられている。なお、我が国は無償資金協力「サント島サラカタ川水力発電所建設計画」(1993年)及び「サラカタ川水力発電所改善計画」(2006年)にて合計1,200キロワットの水力発電施設の整備を支援してきており、これらは現在もサント島の主要電源として稼働している。
  • (3)2021年7月に開催された第9回太平洋・島サミット(PALM9)では、今後3年における我が国の太平洋島嶼国支援の重点5分野のひとつとして「気候変動・防災」を掲げており、その中で気候変動緩和策として再生可能エネルギーの導入促進に係る支援の重要性が述べられている。また、対バヌアツ国別開発協力方針(2019年4月)における重点分野「脆弱性の克服」の中で、生活基盤を支える電力施設への支援が掲げられており、本事業はそれぞれの方針に合致する。加えて、本事業は、エネルギー関連のインフラ整備の観点から、「自由で開かれたインド太平洋」における経済的繁栄の追求に資するものであり、また、バヌアツにおける輸入化石燃料依存からの脱却及び再生可能エネルギー比率の向上に資することから、SDGsゴール7(クリーンエネルギー)及びゴール13(気候変動対策)にも貢献するものである。バヌアツはこれまで国際社会において我が国の立場を支持するなど、我が国と重要な協力関係にあり、本件はバヌアツとの二国間関係強化において高い外交意義を有する。
  • (4)バヌアツの所得水準は相対的に高いことから、「所得水準が相対的に高い国に対する無償資金協力の効果的な活用について」に基づき、無償資金協力の供与の適否について精査が必要である。バヌアツは、小島嶼国であり、自然環境の変化に脆弱であり(「環境的脆弱性」)、また、気候変動対策や防災など、先進国と途上国が共に取り組むべき地球規模の課題への対応として、我が国にも応分の貢献が求められている(「地球規模課題への対応」)。このため、本事業は、無償資金協力による実施が適当である。

2-2 効率性

 バヌアツはサイクロン災害が多い国であるため、想定暴風雨に耐えうる建築物及び土木構造物等の設計、洪水対策等を協力準備調査において確認したところ、これらの対策は設計等に反映させており、効率的に形成されていることが確認されている。

2-3 有効性

 本事業の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値を比べて、主に以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
     水力発電の売電電力量がゼロから6,692メガワット時/年に、温室効果ガスの削減量がゼロから602,280トン/年に、ディーゼル発電所の消費燃料削減量がゼロから1,940キロリットル/年にそれぞれ増加する。
  • (2)定性的効果
     電力の安定供給確保により、産業活動・市民生活レベルの向上、ディーゼル発電利用率低下による気候変動対策に寄与する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)バヌアツ政府からの要請書
  • (2)JICA案件計画調書
  • (3)太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価(第三者評価・2015年度)
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