ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和2年12月15日
評価年月日:令和2年12月3日
評価責任者:国別開発協力第三課長 黒宮 貴義
1 案件名
1-1 供与国名
モザンビーク共和国(以下「モザンビーク」という。)
1-2 案件名
ニアッサ州における地方給水施設建設計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、ニアッサ州において、給水施設・設備を整備することにより、安全な水へのアクセス改善を通じた、同州住民の生活環境の向上を図り、もって同国の地域経済活性化に寄与する。
供与限度額は20.76億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)モザンビーク(一人あたり国民総所得(GNI)440ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- (2)同国政府は、水・衛生セクターの具体的方針である「国家村落給水・衛生プログラム(PRONASAR:2010年~2015年、現在は改訂版2019年~2030年)」を策定し、全国給水率の達成目標(2015年:70%)を掲げていたが、2015年の実績値は55%と目標値に及ばなかった(2019年、国家給水衛生局)。特に、都市部(78%)と比べ、地方部の給水率が45%と低い水準に留まっていることから、地方部における給水率の改善が喫緊の課題となっている。
- (3)中でも、本計画の対象地域であるニアッサ州は、近年の開発により人口増加が進んでいる一方、人口増加に伴う給水需要の高まりに十分に応えるだけの給水施設の整備が進んでおらず、同州の給水率は43%と全国で2番目に低くなっている(2019年、国家給水衛生局)。同州の給水率の改善が遅れている背景には、債務問題を抱える中央政府から各州への予算配賦が限定的であるため給水施設の建設資金が不足するといった財政面の課題、施設の運営・維持管理能力の不足といった技術面の課題が存在している。
- (4)このうち、技術面の課題に対し、JICAは、技術協力「ニアッサ州持続的村落給水・衛生改善プロジェクト」(2013年3月~2017年2月)を通じて、村落部におけるハンドポンプ付深井戸給水施設の運営・維持管理体制の構築を支援した。今後は、技術協力「ニアッサ州持続的給水システム及び衛生促進プロジェクト」(2021年3月から5年間の予定)を通じて、中小規模都市の管路給水施設における運営・維持管理体制の強化を支援する予定である。
- (5)本計画は、これらの協力によって構築される運営・維持管理体制の活用を想定し、給水施設の建設を進めることにより、より多くの人が安全な水にアクセスできるようにするものであり、PRONASARで定められた給水率改善に貢献するものである。
- (6)本計画は、同国の開発課題・開発政策、及び給水施設の整備を通じた安全な水へのアクセス拡充のための支援を行うという我が国の援助方針に合致し、給水状況の改善を通じた地域住民の生活環境の向上に資するものであり、SDGsゴール2(栄養状態の改善)、3(健康と福祉)及び6(水・衛生へのアクセス)にも貢献するため、本計画を実施する必要性は高い。また、本計画はTICAD7にて表明された「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を踏まえた質の高いインフラ投資の推進に資する案件であり、外交上の意義も高い。
2-2 効率性
我が国は、既に技術協力「ニアッサ州持続的村落給水・衛生改善プロジェクト」を通じて、村落部におけるハンドポンプ付深井戸給水施設の運営・維持管理体制の構築を支援しており、これらの協力によって構築される運営・維持管理体制の活用を想定し、給水施設の建設を進める。
2-3 有効性
本計画の実施により、2019年の実績値を基準値として、事業完成4年後の2027年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。
- (1)定量的効果
- ア 対象地域における給水量が、456立方メートル/日から2,289立方メートル/日に増加する。
- イ 対象地域における給水人口が、21,600人から86,314人に増加する。
- ウ 対象地域における給水率が、43%から46.5%に増加する。
- (2)定性的効果
水因性疾患が減少する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)モザンビーク政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)