ODA(政府開発援助)

令和2年4月14日

評価年月日:令和2年3月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 江碕 智三郎

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

マディヤ・プラデシュ州地方給水計画

(3)目的・事業内容

 マディヤ・プラデシュ州北西部3県において,上水道設備を整備することにより,持続的かつ安全な上水道サービスの実現を図り,もって地域住民の衛生状態と生活環境の改善に資することを通じて,持続的で包摂的な成長への支援に寄与するものである。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)上水道設備の建設
    • (イ)コミュニティ組織強化及び啓発活動
    • (ウ)コンサルティング・サービス(入札補助,施工監理等)
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    554.74億円 1.15% 30(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下,「JICAガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすい特性や影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大ではないと判断されるため,カテゴリBに該当する。
用地取得及び住民移転
 本計画対象地は,Gandhi Sagar Wildlife Sanctuaryの近傍に位置しており,配水池や配水管などの一部施設や配水先の村は,同Sanctuary周辺のEco-sensitive Zone(ESZ)に位置しているため,同ESZ内での事業実施に関しては,同国国内手続きに沿って進められる。ESZ内の住民協議は実施済みであり,事業実施に対する反対は確認されていない。
外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは,人口増加や経済発展に伴う上水需要の増加に対し,水源開発及び上水道整備が追いついておらず,国内でパイプ給水を受けることのできる世帯の割合は,都市部の約70.6%(2011年)に対し,地方部では約30.8%(同)に留まり,特に,地方部での上水道整備は遅れており,喫緊の課題となっている。
 かかる状況に対し,同国政府は,インド水資源省が2012年に策定した国家水政策(National Water Policy)にて「インド全人口に対する飲料水へのアクセス確立」を目標に掲げ,全国で上水道施設の整備を進めている。また,農村開発省飲料水衛生局は2009年に国家地方飲料水プログラム(National Rural Drinking Water Program)を立ち上げ,地方部の全住民への安全かつ十分な飲料水の供給を目指して水源開発及び上水道施設の整備を進めている。さらに,2019年5月に発足した第二次モディ政権は,2024年までに全世帯に対し,パイプ給水を行うことを目標に挙げているほか,国内の水資源や水供給を一元的に管理するため,複数の省が担っていた水資源に関する部局をまとめる形で水省(Ministry of Jal Shakti)を新設した。
 マディヤ・プラデシュ州の地方部におけるパイプ給水の割合は9.9%(2011年)と,地方部全体の30.8%と比較しても非常に低く,接続率10%未満の6州のうちの一つとなっているほか,地下水の過剰取水による地下水位の低下や地下水由来の水因性疾患であるフッ素症のほか,赤痢やコレラ等の水系感染症の発症が2015年には88万件報告されるなど,安全で安定的な上水道サービスの確保は重要な課題となっている。
我が国の基本政策との関係
 インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された我が国の「対インド国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げており,本計画は同方針に合致するものである。
 また,直近では,2018年10月のモディ首相訪日時に両国首脳が「日印の共通のビジョンに基づき,自由で開かれたインド太平洋に向けて協働していくという揺るぎない決意」を改めて述べるなど,両国の関係強化が着実に進んでいる中,円借款を始めとするODAを通じて,経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは,こうした二国間関係の更なる強化にもつながる。

(2)効率性

 本計画においては,導水管から浄水場,送水管から各村内の配水管網に至るまで,施設の設計・建設から供用後10年間の運営維持管理を同じコントラクターが一貫して実施し,実施機関が監理を行う。また,給水が実施される配水対象地域の各村に設立される住民組織である給水組合が,NGOの指導の下,接続料徴収や水道料金の回収管理を行う体制となっている。

(3)有効性

 本計画の実施により,事業完成2年後(2030年)には以下のような成果が期待される。

  • ア 定量的効果
    • (ア)新規に建設される上水道設備における1日当たりの平均給水量:96,634立方メートル(東地区),92,296立方メートル(西地区)
    • (イ)上水道設備の新規建設に伴う給水組合組成数:726(東地区),801(西地区)
    • (ウ)上水道設備の新規建設に伴う各家庭の蛇口における残留塩素濃度の水質適合率:100%
  • イ 定性的効果
    • 安全かつ安定的な水道サービスによる,住民の健康状態と生活環境の改善,実施機関の運営・維持管理能力の向上に寄与する。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インド国別評価報告書(第三者評価/2017年度)JICAガイドライン別ウィンドウで開く,その他JICAから提出された資料。
 本計画に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。

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