ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年7月1日
評価年月日:令和元年6月12日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子
1 案件名
1-1 供与国名
ミャンマー連邦共和国(以下「ミャンマー」という。)
1-2 案件名
日本ミャンマー・アウンサン職業訓練学校整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,ヤンゴン市のアウンサン技術高校跡地に,ミャンマーにおける質の高い技能労働者育成のモデルとなる職業訓練・技術教育(TVET)施設を整備し,もって同国の産業界と労働市場のニーズを踏まえた経済・社会を支える人材の能力向上に寄与する。供与限度額は27.26億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
本計画の国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリー分類はCであり,環境への望ましくない影響は最小限と判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ミャンマー(一人あたり国民総所得1,190ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国に分類される。
- (2)ミャンマーでは,2011年の民政移管後,民主化,経済改革,国民和平を柱とした改革が進められ,経済成長率は2018年時点で6.8%前後の高い水準を維持している。また,GDPに占める産業別の構成は,ここ10年で徐々に第一次産業から第二次・三次産業へ比重が移行し,2017年には第三次産業が40.1%,第二次産業が36.2%を占めている。一方で,産業界が必要とする技能労働者の数は大幅に不足しており,調査によればミャンマー企業の6割が技能労働者数不足を最大の経営課題として挙げている(OECD and UNESCAP, 2014)。自動車登録台数の増加,製造業の成長,各産業における設備投資の増加,都市部における建設需要の高まりから,分野としては,自動車,機械,電子・電気,建築分野における技能労働者の育成が必要とされている。
- (3)2016年7月に新政権が発表した12の「経済政策」において,大学教育や職業訓練を通じた人材育成と雇用創出が重点政策として挙げられている。技能労働者の育成に必要な職業・技術教育訓練(TVET)は,2017年2月に策定されたミャンマーの「国家教育戦略計画(2016~2021)」において,重要なコンポーネントとして位置づけられ,アクセスの拡充,質の向上,マネジメントの強化を通じた技能労働者の育成と雇用機会の拡充が謳われている。しかし,現状は,教育・訓練の質が低い,民間企業のニーズを踏まえた教育・訓練内容となっていない,TVET機関の社会的評価が低く,一部のTVET機関では学生数が定員を下回っている等の課題を抱えている。
- (4)本計画は,ミャンマーにおける熟練労働者の輩出に資するものであり,我が国の対ミャンマー経済協力方針(2012年4月)の重点分野の1つである「経済・社会を支える人材の能力向上のための支援」に合致する。
- (5)また,2016年11月に発表された「日ミャンマー協力プログラム」において,「国民が広く享受する教育の充実と産業政策に呼応した雇用創出」が重要分野の一つに位置付けられており,その中で,地場産業と外資系企業及び労働者双方に裨益する職業訓練制度の改善と必要なインフラ整備に向けた協力が明示されており,本事業はこれら方針を具現化するものである。
2-2 効率性
我が国は,技術協力「TVETの質的向上プロジェクト」(2018~2023)を本計画に先行して実施し,同学校の開校時には,質の高い技術教育が遅滞なく提供される予定である。加えて,ミャンマーの労働・入国管理・人口省に対しても,技術協力「国家技能標準開発支援プロジェクト」(2018~2021)を実施し,技能標準の整備の支援を実施中であり,これら技術協力プロジェクトと本計画は相互補完するもの。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下の成果が期待される。
- (1)2025年(事業完成3年後)に,新設された職業訓練施設で新規コースである自動車整備コース及び電気関連コースに,それぞれ200人まで学生を受け入れることが可能となることで,ミャンマーにおける雇用創出に貢献する。
- (2)新たに施設及び機材が整備されることにより,教育・訓練環境が改善され,質の高い人材育成が可能となる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ミャンマー政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)